22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

カテゴリ:サッカー > 観戦

残りはトータルで約1時間。早くも交代カードを切らざるを得ないシチュエーションになりました。そこで複数のポジションをこなせて、なおかつ運動量が豊富な橘田健人をピッチに残したのには大きな意味がありました。

鬼木達監督は登里享平を下げて、緑色のユニフォームを着た丹野研太を送り込みます。橘田は左サイドバックを任されました。

ハーフタイム明けにはこれまた苦渋の決断と思われる交代が行われます。攻撃のキーになる脇坂泰斗に代わって車屋紳太郎が入り、橘田は再び中盤にポジションを戻しました。

しかし、橘田が前に出やすい位置になったことで、61分にはゴールライン付近で森重真人からボールを奪い、マルシーニョのゴールにつなげることができました。

こうして攻め手の見つかりにくい苦しい状況で活路を見出したのです。

29分にチョン・ソンリョンがアダイウトンへのファウルで一発退場となり、この日も厳しいゲームになりました。ただ、その時点ですでに脇坂が鮮やかなミドルを叩き込んで先制していたように、90分を通して常に先手をとれていたため、数的不利にも耐えられました。

とはいえ、10人になってからハーフタイムまではいつもの戦い方を捨てざるを得なくなったために修正が難しく、東京に押し込まれてしまいます。相手には裏抜けを試みる選手も多く、マルシーニョが最終ラインに吸収されそうな位置まで下がる事態に陥りました。それでも防戦一方ながら前半はゼロに抑えられました。

後半、メンバーを代えて守備重視にシフトし、戦い方が整理されたものの、立ち上がりと勝ち越し後にアダイウトンにゴールを許してしまいます。2失点目はダイナミックに揺さぶられた末のものでした。

アウェイチームが得点を奪う作業は困難を極めましたが、再び追い付かれた直後に車屋の鋭いクロスがオウンゴールを誘発。三度リードを奪います。

その後、80分にマルシーニョを下げて山村和也を入れ、ジェジエウと谷口彰悟の間に立たせた5バックに変更します。4点目を狙うより、確実な逃げ切りを目指し、東京陣内深くに進んだ際には家長と知念慶を中心にボールキープをして時計を進めました。

川崎は全員が最後まで懸命にピッチのあらゆるところで体を張り、多摩川クラシコを制してディフェンディングチャンピオンの意地を見せました。

しかし、タイムアップ後、別会場で勝利した横浜F・マリノスの優勝が決まって、鬼木体制では初の無冠に終わりました。

ジェジエウが7月半ばまで戦列に戻れないハンデを背負いながらの今シーズン。すべての公式戦が終わって振り返ると、ここ数シーズンとは違って新戦力の突き上げ、底上げが乏しかったことが結果的にF・マリノスとの勝ち点差、得失点差につながったと言えるかもしれません。

今までの蓄積を生かして勝負強さを随所に見せたものの、連戦になると勝ち点を伸ばせませんでした。過密日程を乗り切るだけの戦力が揃っていたとは言えないでしょう。

また、新型コロナウイルスの影響は例年以上に大きく、7月下旬はフィールドプレーヤーの離脱が続出して試合開催が危ぶまれるほどでした。

こうした中、昨シーズン終盤はベンチ外も珍しくなかったジョアン・シミッチの奮闘は、チームを大いに助けてくれました。チームトップタイの12ゴールを記録したベテランの家長の働きは言うまでもないでしょう。

とにもかくにも今シーズンの結果を真摯に受け止め、来シーズンの王座奪還、タイトル獲得に向けて前進するほかありません。


3年前のチェルシー戦よりもはるかに落ち着かない空気に満ち溢れていた国立競技場。その64,922人の大観衆を前に川崎の選手は最後まで戦う姿勢を貫きました。

川崎にとってこの試合最大のトピックは、ジェジエウの実戦復帰でしょう。45分間のプレータイムの中で持ち味のスピードとパワーを存分に発揮しました。頼れるセンターバックの帰還は、残りのシーズンに向けての大いなる好材料です。

パリと川崎の立場は当然異なり、シーズン前でありなおかつ指揮官が変わって新体制となった前者と、シーズン中であり、先週末の試合が中止になって比較的フレッシュな状態の後者という違いがまずあります。

それゆえ代表組不在ながら、現状のベストメンバーで臨んだ川崎の方が機動力では優位に立てました。早速、立ち上がりから家長昭博、マルシーニョ、そしてレアンドロ・ダミアンがハイプレスを見せます。

とはいえ主導権自体は個の力で上回るパリに握られてしまいます。細かい局面局面で後手を踏む格好となり、たとえばトップ下のリオネル・メッシにはアンカーの橘田健人が翻弄させられました。

そうした劣勢の中でも川崎は選手達がおなじみのプレーを随所に披露します。チャナティップ・ソングラシンは低い姿勢のドリブルでボールをキープし、レアンドロ・ダミアンはジャンルイジ・ドンナルンマのポジションを見てロングシュートを放ちました。

チームとしては相手3バックの横、アクラフ・ハキミの裏のスペースを活用。マルシーニョを走らせる攻撃に活路を見出そうとします。残念ながらこの形で枠をとらえた際どいフィニッシュには至りません。

決定力ではパリが勝り、メッシに右足での先制弾を許します。シュートは登里享平に当たってコースが変わったため、ネイマールやキリアン・エンバペ相手に再三好セーブを見せていたチョン・ソンリョンも及びませんでした。

2失点目もメッシが司令塔となって生まれます。いずれのゴールもウイングバックが絡んでいたため、パリとしては新しいやり方が一つの形になったと言えます。

後半は両チームともメンバーが大幅に変わり、パリは60分過ぎまでに主力がごっそり抜けました。ただ、ベンチメンバー主体となったことで機動力は上がり、川崎のボール保持時は人につく守備をしていました。

川崎は84分にコーナーキックの流れで瀬古樹のアシストから山村和也が1点を返し、残り時間も手を緩めることなく同点に追い付くべくプレーを続けました。

加えて最後は高井幸大、永長鷹虎もピッチに立ち、このゲームを経験することができました。スコアの上では負けましたが、真剣勝負ではないとはいえ川崎が得るものは多かったはずです。


ワールドカップ予選の重圧から解放され、パラグアイに快勝した日本。ようやく優勝経験国であり真の強豪であるブラジルとの対戦を迎えました。

ブラジル戦というと親善試合であっても勝ったことがなく、毎回いいようにやられていた日本ですが、新しい国立競技場での初戦はいつになく全員守備で耐えていました。

例えば、ビニシウス・ジュニオールと対峙した長友佑都は、本職の山根視来を差し置いての右サイドバック起用に応える働きを見せました。

ただ、主に伊東純也にボールを預けて攻め、コーナーキックを獲得するまではできるものの、セットプレーでの得点の可能性は低く、マルキーニョス、エデル・ミリトンがセンターで構えるボックスの中には簡単に入らせてもらえません。

実際、シュートストップに優れたアリソンが慌てたのは、前田大然の猛烈なプレスを受けた時だけでした。日本は最後までブラジルゴールを脅かすことができずに終わります。

一方のブラジルは25分頃からギアを上げ、ネイマールの強烈なミドルシュートが権田修一を襲ったのをきっかけに怒涛の攻撃を仕掛けました。

そこからハーフタイムまでは日本陣内でプレーが続き、実質4-2-4のアグレッシブなブラジルにほぼ一方的に攻められました。ネイマールに対してはファウルでしか止められないのです。

しかし、森保一監督は劣勢の中でも強気の姿勢を貫こうとします。ハーフタイム明けには攻守に気の利いたプレーのできる原口元気を下げて、鎌田大地を投入します。

以降も前田、三笘薫、堂安律、さらに柴崎岳と山根をピッチに送り出しました。

その中で三笘は持ち味を出すべく果敢にドリブルで仕掛けていきます。それでもチアゴ・シウバが入ったことで右サイドバックにポジションを移したミリトンに完璧に封じられました。

結局、ややペースの落ちかけていたブラジルにPKを献上。ネイマールのスローな動作からのキックに沈みました。日本にとっての歴史的初勝利はまたもお預けとなります。

ワールドカップでベスト8に進みたいのであれば、強豪相手の勝利が必須です。とりわけ今年の大会はドイツ、スペインと同居しているのですからなおさらです。

現実はと言えば、日本のシュートはわずかに4本。最多が遠藤航の2本という結果ですから、悲願達成の可能性を感じられる内容ではありませんでした。

後半のアディショナルタイムの使い方にしても、最低でも1点が欲しいはずなのに後方でボールを動かすばかりで攻めの姿勢を感じられません。結果、時間を浪費してタイムアップを迎えてしまいます。

どんな相手でも守ろうと思えば守れる、ただし得点は取れないというのでは以前からの日本と変わりません。一皮むけるにはまだまだ時間がかかりそうです。


新しい国立競技場での決戦は、クラブ初のタイトルがかかっているとはいえ勝者のメンタリティを備えた選手を擁する神戸と、クラブとして20ものタイトルを獲得している鹿島の激突となりました。

序盤は鹿島が押し込んでいたものの、それを凌ぐと神戸が主導権を握ります。鹿島のトップの選手は神戸の最終ラインと飯倉大樹のボール回しに圧力をかけないため、ビルドアップがスムーズに進んでしまいます。

そこから左ハーフスペースを主戦場にするアンドレス・イニエスタに預けてスイッチが入る格好になっており、背番号8のボールキープ力、展開力の高さで鹿島を大きく上回ります。クォン・スンテの立ち位置を見てロングシュートを放ったりもしました。

最初は右ウイングに構えていたルーカス・ポドルスキも次第に左にポジションを変えます。そこに酒井高徳が絡んでの攻撃が神戸にとっては主体となっていました。

先制点は鹿島ゴール前で酒井とポドルスキがともにボールに迫り、ポドルスキが蹴り込んだクロスをクォン・スンテが弾くも犬飼智也に当たったことで生まれました。

流れをつかんだ神戸は左偏重になりすぎないように右からの攻撃にも重きを置き、時折イニエスタが山口蛍とポジションを変えるなどしており、追加点は西大伍のクロスに藤本憲明が合わせて決まります。

試合はここから鹿島がどう逆襲を仕掛けるかが注目され、大岩剛監督は後半開始から動きました。土居聖真をハーフタイム明けに、山本脩斗を後半8分に送り込みます。

ただ、この日の鹿島は選手のコンディション不良が一部で伝えられており、実際、プレーの精彩を欠いていました。シンプルなロングパス、サイドチェンジがミスになり、タッチラインを割るシーンが目立ちました。

そうなると大きな展開を求めるのではなく中央を打開しにかかりますが、5-4-1で守る神戸の守備を崩すことができずにつかまってしまいます。イニエスタの相手のコースを消す動きも巧みでしたが、山口、西といった日本代表クラスの選手が汗かき役となって奮闘しました。

終盤に入りようやくサイドを大きく使った攻撃で神戸陣内深い位置まで入ってクロスを入れるところまでできるようになりましたが、フィニッシュワークに迫力を欠き、決定機が生まれません。鹿島らしいしぶとさ、憎らしさが表に出てこないまま時間が過ぎていきます。

試合が終わりに近づくと、勝利を確信したトルステン・フィンク監督はイニエスタを下げ、さらにポドルスキを下げて代わりに現役最後の試合となるダビド・ビジャを投入します。

後半のシュート数が2本にとどまった神戸でしたが逃げ切りに成功。天皇杯のタイトルを獲得するとともにAFCチャンピオンズリーグ出場権をも得ることとなりました。神戸はタイトルを取ったことでクラブとして見える景色が変わっていくでしょうし、野望に向かって大きな一歩を踏み出すことができました。


小林悠がボールを懐に収め、シュートを放って決めるまでの一連の動作はスローモーションのように見えました。それほどまでに完璧なシチュエーションであり、決定的なゴールだったはずです。

残り時間は2分とアディショナルタイム。勝利を確信した川崎サポーターの声には喜びの色が混ざっていました。相手陣内でのプレーが多かったものの、鈴木武蔵、チャナティップ・ソングラシン、ジェイ・ボスロイドを中心としたカウンターに幾度も冷や汗をかいた戦いを90分で終わらせられる間際まで来たのです。

ところが夏場以降のリーグ戦で低迷する川崎は試合巧者ではなく、後半のほぼラストプレーでコーナーキックから深井一希の同点弾を食らってしまいます。時間帯は大きく違いますが、スコアの推移は先日のガンバ大阪戦と同じです。

それまでの間に時計の針を進めることは可能でした。まず小林が得点する前から長谷川竜也がピッチに入ろうとスタンバイしており、その計画通りに交代を行い、一旦ピッチ上の選手たちの気持ちを落ち着かせることもできました。

実際には鬼木達監督はゴールが決まったことで長谷川投入を見送り、結局、同点に追い付かれたあとの延長頭にあらためて阿部浩之と代えることにします。

また札幌陣内のコーナーフラッグ付近で得た川崎のフリーキックでは、ボールを受ける家長昭博がオフサイドポジションにいたため、あっさり札幌にボールを明け渡すこととなりました。

こうした小さな判断ミスの積み重ねが、延長、PKまでもつれた原因となります。

そこからも川崎にとってはまさかの展開が続きます。VARにより、谷口彰悟のファウルが警告から退場の判定に変わって10人での戦いを余儀なくされ、そのときに与えたフリーキックを福森晃斗に沈められてリードを許してしまいました。

以降、流れの中では札幌優位で、ピッチの幅を広く使った相手に対して守勢に回る時間が多かった中、数的不利を挽回できるセットプレーで小林が同点ゴールを叩き込んで、PK方式で決着をつけることにするまではよかったものの、今度は4人目の車屋紳太郎が痛恨のクロスバー直撃。絶体絶命のピンチに陥ります。

それでも川崎サポーターを背にゴールを守った新井章太が、5人目、6人目をストップ。クラブとしても自虐的になっていたルヴァンカップ決勝の負の歴史にピリオドを打ちました。

現実的には今季獲得可能な主要タイトルはルヴァンカップしかないと考えられる中、これをしっかり勝ち取れたのは昨季、一昨季のリーグ王者だからこそと言えます。

もっとも、これほどまでの激闘を制した勢いで今後続く過密日程での難敵との対戦を乗り切れれば、ひょっとするとリーグ戦においても新たな光が見えるかもしれません。


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