22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

カテゴリ:サッカー > 観戦

F・マリノスサポーターのボルテージが何度も上がり、声援が大きくなる場面が終盤にかけて増える中、川崎は辛くも同点に追い付いてドローに持ち込みました。

長谷部茂利監督は大胆なターンオーバーを行い、チョン・ソンリョンや小林悠がスタメンに名を連ね、脇坂泰斗や山田新はベンチスタート。山口瑠伊や三浦颯太、丸山祐市などはベンチにも入りません。

普段は我慢の多い前半の45分間ですが、この日はトップ下に入った瀬川祐輔が少ないタッチで中継役となり、宮城天に代わって急遽先発を務めたマルシーニョを活かした攻撃で相手を脅かします。

7分には早くも先手を取りました。決めたのは3列目を任された大関友翔です。ヤン・マテウスのパスミスを伊藤達哉がさらい、複数の選手が攻め入ってゴールを奪いました。

その後はF・マリノスの宮市亮とヤン・マテウスのいる右サイドを軸とした攻めを受ける時間が続き、ホームチームは統制のとれた3ラインで凌いでいたものの、相手コーナーキックの流れでヤン・マテウスに決められてしまいます。

直後、伊藤がボックスで倒され、VARの介入がなされるも、その前に小林がオフサイドポジションにいたと判定され、PKとはなりません。

ハーフタイム明け、長谷部監督は明確に勝ちに行く姿勢を見せます。河原創とマルシーニョを下げ、攻撃で違いをつくれる山本悠樹と脇坂泰斗を投入。瀬川が左MFに変わります。

川崎が前に出る機会が増えたため、F・マリノスはカウンター主体の攻めを繰り出してきました。2対3の数的不利になった場面は、高井幸大がクレバーな守備で阻止します。

一進一退の攻防が続く中、セサル・アイダルの左足が火を吹きました。セットプレーではなく、オープンプレーで持ち上がっての強烈なロングシュートです。これで再び一歩前に出ました。

ただ、久々の出場となったコロンビア人センターバックは足がつってしまい、交代を余儀なくされます。代わりに入ったのは土屋櫂大でした。残り2分とアディショナルタイムを若いセンターバックコンビで逃げ切るつもりでした。

しかし、この采配が裏目に出ます。途中出場の天野純、さらにヤン・マテウスに立て続けにゴールを許してしまい、試合をひっくり返されたのです。勝ち越したアウェイチームは喜びを爆発させます。

土屋が入る前に左サイドバックとして入った佐々木旭をセンターバックに移し、瀬川をサイドバックにする形もできたはずですが、指揮官はそうではない形で試合をクローズできると思ったのでしょう。

このままではあまりにも苦いデビューとなる18歳を救ったのは、高井でした。脇坂のコーナーキックを高い打点で合わせ、90+10分に同点弾を叩き込みました。

F・マリノスとは近いうちにサウジアラビアで一発勝負をする可能性がありますが、その相手に今回のメンバーで勝ち切れれば最高でした。それでも土壇場で勝ち点1をもぎ取ったことは大きいと言えるでしょう。




30分から45+3分までの18分。背番号にちなんだわけではないでしょうが、バフェティンビ・ゴミスが川崎での初ゴールからハットトリックを達成するまでに要した時間です。この3点が大きくものを言って、川崎が完勝しました。

チョン・ソンリョンが負傷からベンチに戻り、カタール帰りの高井幸大もベンチ入り。さらにジェジエウがスタメンに名を連ねられるようになり、佐々木旭は左サイドバックに。後方の陣容が再び整い始めます。

それでも札幌のマンマークに対してビルドアップに苦しみ、前半はゴミス目掛けてのロングキックを多用しました。ゴミスのフィジカルが強く、一定の成果を上げられるため、決して悪い戦い方ではありません。

札幌は攻撃時に前線の5人が川崎の最終ラインの間に立ち、全部のレーンを埋めます。そして大きなサイドチェンジを使いながら攻めてきました。

上福元直人が高い位置をとるのを見て、ジェジエウのミスパスを取った浅野雄也がロングシュートを狙ったり、コーナーキックからチャンスをつくったりして川崎ゴールを脅かします。

一方の川崎は、脇坂泰斗、家長昭博が絡む場面がはじめは少なく、前半半ばあたりから彼らにもボールを触って効果的に動かせるようになりました。

その流れでゴールに迫り、待望の瞬間が訪れます。ゴミスが遠野大弥のパスを受け、家泉怜依を背負いつつターンしてフィニッシュ。ゴール左隅に突き刺さりました。

ゴミスは喜びを爆発させ、その後、鬼木達監督のもとへ向かいます。ベンチメンバーからも祝福を受け、スタジアムはいいムードに包まれました。

得点を取れたことでゴミスの動きはよくなり、43分に追加点を奪います。ハットトリックにリーチがかかると、マルシーニョがボックスの中で菅野孝憲にファウルを受けました。

キッカーはゴミス。冷静に真ん中に蹴って3-0とします。エリソンの出場停止でスタメンに立った元フランス代表がこの日は爆発しました。

優位に立った川崎は、後半も持ち味を出しながらボールを動かします。ただ、シュートに至るプレーが少なく、4点目は奪えません。

ゴミスは61分で山田新と交代。ミッドウィークに試合があることを考慮してか、家長、マルシーニョも75分で下がります。ジェジエウも早めに休ませたいところでしたが、大南拓磨が脳震盪の疑いで高井と代わりました。

札幌にはシュートを打たれる機会が多いものの、ほとんどが枠外に飛んだため、後半、上福元が慌てた場面は数えるほどしかありません。

最終的に後半はスコアが動かないまま終わり、クリーンシートで勝利を収めました。ホームで確実に勝って、アウェイでの連戦に臨みます。


120分戦ってもスコアはまったく動きませんでした。しかし、カップファイナルならではの緊張感の高さを保った一戦でした。

川崎にとっては我慢を強いられるゲームでした。特に前半は柏に押し込まれ、川崎はハーフタイム前の瀬古樹のミドル1本しかシュートを打てずに終わります。

チョン・ソンリョンのゴールキックをはじめ、ロングボールの多くを柏にキープされました。
またビルドアップ時も細谷真大と山田康太が、両センターバックに強くプレッシャーをかけてくるため前進が難しく、中盤から前の選手が効果的にボールに触れる機会が増えません。

押し込まれるならば跳ね返す攻撃を仕掛けたいのですが、単独でもカウンターを完結させられるマルシーニョはベンチにもいませんでした。

ただ、公式戦で完封勝ちを続けるチームは、継続して育まれた自信を持って守ります。

後半になると、橘田健人を筆頭に個人の打開で柏陣内に入っていきました。再開早々には幸先よくゴール前でフリーキックを得ますが、脇坂泰斗のシュートは枠を外れます。

枠内シュートは途中投入の遠野大弥によるものが初めてでした。川崎はたびたびポケット近辺まで進みますが、肝心のフィニッシュまで持ち込めません。

逆に柏には再三センターバックの背後を突かれ、ピンチを招きます。マテウス・サヴィオと細谷による攻めは脅威でした。ただ、シュートやその手前のボールコントロールが完璧ではないために事なきを得ます。

後半と同じエンドで再開した延長前半には最大の危機を迎えるも、細谷のシュートはチョン・ソンリョンが体を張って防ぎました。

この延長前半は家長昭博を中盤に下げて、遠野を右ウイングにしますが、大きな変化を生むことがなく得点も奪えません。

同後半にはそれを元に戻し、最後の交代として小林悠に代わってバフェティンビ・ゴミスがトップに入ります。

ラスト15分は山根視来のクロスからチャンスをつくり、ゴミスがそれに合わせます。枠をとらえたヘッドは松本健太に阻まれました。こぼれ球には家長が詰めるも実りません。

延長でも決着がつかないため、どちらに転んでもおかしくないPK戦で優勝チームを決めることとなります。先攻は川崎です。

2人目の瀬川祐輔のPKが止められましたが、やり直しとなり成功するなど、一喜一憂の激しいPK戦となります。

柏の4人目、仙頭啓矢のキックが枠を叩き、5人目のゴミスが決めれば優勝となるはずが松本に止められ、続く登里享平も止められますが、直後の片山瑛一もボールがバーを叩きました。

このままもつれにもつれ、10人目はチョン・ソンリョンが担当。厳しいコースに蹴り込みます。柏は同様に松本がキッカーを務めました。

チョン・ソンリョンはまだ一度もPKを止めていませんでしたが、このシュートは完璧にストップ。長い戦いに終止符を打ちました。

前回の優勝はコロナ禍の特別なレギュレーションで、参加チームも限定された上に準決勝からの参加でした。今回はシーズンを通して勝ち抜いての制覇です。

この大会を取れなければ、2シーズン連続の無冠となり、来秋からのAFCチャンピオンズリーグエリートへの出場も叶いません。

鬼木達監督が就任後、2021年シーズンまでは常に何かしらのタイトルを取っていただけに、空白期間を続けるわけにはいきませんでした。

こうした強烈なプレッシャーから解放された選手達の中には涙する者もいました。今季からのキャプテン、橘田健人もその一人です。この日も持ち前の激しさで相手ボールを狩るべく走り回りました。

公式戦はあと1試合、アウェイの蔚山現代戦が残っていますが、すでにAFCチャンピオンズリーグのベスト16入りは決めていますので、負傷者、退場者の続出した厳しいシーズンをいい形で締めくくれたと言っていいでしょう。



是が非でも取りたいタイトルのために力を尽くした川崎が、4-2で勝利して決勝進出を果たしました。

試合の入りは順調でした。ボールの循環がスムーズで、早々にコーナーキックを獲得。脇坂泰斗のキックに山村和也が合わせて先制します。

幸先のいいスタートを切れたことで、しばらくは余裕を持ってゲームを進められました。中央から攻める形もできていて、脇坂のスルーパスに反応したマルシーニョが村上昌謙に倒されてPKを得ます。

ところがレアンドロ・ダミアンが村上にPKを阻まれると、ムードが一変しました。福岡が活気を取り戻したのです。

ピッチの幅を使った攻めを見せていた福岡は、登里享平のスローインのボールを奪って流れるような崩しを披露。最後は金森健志のシュートで同点に追い付きます。

公式戦では負け試合の多い今シーズンだけに、会場となったホームスタジアムに淀んだ空気が漂い始めました。

ハーフタイムでの切り替えがうまくいかずに後半の入りも悪く、福岡ペースで始まりました。ここで逆転を許していたら、川崎は立ち直れなかったでしょう。

この悪い流れを引き戻したのが家長昭博でした。ここ2試合は温存ではない理由で欠場した模様ですが、大事なこの一戦には間に合った背番号41。ボールをキープし、保持する時間を増やしてチームを安定させました。

落ち着いてきたところで橘田健人のミドルが炸裂。奈良竜樹に当たって入ったとはいえ、先日の蔚山現代戦に続く豪快な一撃でした。再びリードできたことで空気も変わります。

70分、福岡のコーナーキックからの攻撃を守り切るとチョン・ソンリョンがロングキック。中央に正確に蹴り出されたボールにマルシーニョが追い付き、飛び出しが中途半端になった村上の前でループシュートを放ちます。ボールは転々としながらゴールに入りました。

試合を決定づける3点目が入り、ベンチメンバーを中心に得点したマルシーニョに駆け寄る一方、貴重なアシストをしたチョン・ソンリョンを讃えに行くメンバーもいました。

とどめは脇坂のコーナーキックに合わせたレアンドロ・ダミアンの叩き付けるヘディングでした。苦しいシーズンを送っていて、PK失敗もあっただけに喜びを爆発させ、思わずユニフォームを脱いでしまいました。

高井幸大を入れて3-5-2に変え、逃げ切りをするはずが終了間際に失点したのは今後への反省点ですが、ともあれ勝ち上がりこそが最も大事な試合を90分で勝ち切りました。

決勝は2ヵ月後の12月9日。先に進出を決めた柏レイソルとの対戦です。










冷たい雨の降る中でホーム初勝利を目指し、後半になってから奮起したものの、前半の不出来が尾を引いて敗れてしまいました。

この日はセンターバックの一角に高井幸大を、右ウイングには永長鷹虎を起用。家長昭博をトップに据えた4-3-3でスタートしました。

川崎はビルドアップによる丁寧な組み立ては控えめにすることで、ショートカウンターを食らっての不用意な失点を防ごうとします。

しかし9分、相手陣内で永長のパスを米本拓司に引っ掛けられると名古屋がカウンターを発動。一気に攻められキャスパー・ユンカーに先制されます。

取られたら取り返す勢いが欲しいところですが、前半の川崎はまたしてもボックスに踏み込む回数が少なく、5-2-3で構える名古屋守備陣を崩せません。

クロスを上げては簡単に跳ね返され、ミドルどころかシュート自体も少ないまま45分が経過します。

途中、宮代大聖がファウルを受けた後、右で苦労していた永長を左、家長を右に変え、右サイドでの山根視来、脇坂泰斗との連携に期待する動きもありましたが変わりません。

残り1分のアディショナルタイムで小塚和季がマテウス・カストロにファウルを犯すと、マテウス自らフリーキックを叩き込み、点差は2に広がります。せめて1点ビハインドでロッカールームに戻りたかった場面だっただけに痛恨の失点です。

後半も形勢が変わらない中、鬼木達監督が60分にもならないタイミングで大胆な4枚替えを行おうとします。それを知ってか、ピッチにいるプレーヤーが鋭い攻めで中央を攻略。宮代が決めて1点差としました。

追い付く可能性が出たため、4人同時交代はひとまず取り止めになりますが、同じメンバーを2人ずつ段階的に呼んで交代が行われます。

74分に佐々木旭とジョアン・シミッチが入った際には3バックにシステムを変更。おそらく4枚替えした際には実行したであろう変化をピッチに施します。

川崎は得点を奪うために果敢に攻め、宮代、シミッチが際どいシュートを放つも、ミッチェル・ランゲラックに阻まれました。

終盤は高井が前線に上がっていき、コーナーキックの機会もあったのですが、守備固めを進める名古屋相手に同点にさえ追い付くことなくタイムアップとなりました。

今シーズンの出来を考えると、無得点に終わらなかった点は辛うじてポジティブにとらえられるとはいえ、様々な梃入れが勝ち点に結び付かない点は無視できません。難題を抱えたまま次節もホームで戦います。


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