22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

カテゴリ:サッカー > マンガ

無敵を誇ったステラシステムに森川竜司が加わり、ステラスポットが見えるヒクソン・シウバをも凌駕して、日本が難なくブラジル相手に3対3の同点に追い付きます。これで勝利が、そしてその先さえも見えてきました。

ところが、この試合が作中で描かれる最後の戦いになってしまいます。そうさせたのが、ホスト国のエースゆえのプレッシャーで追い詰められ、悪役に変貌したネストールでした。

後半アディショナルタイム突入間近にステラシステムの要である坂本轍平を負傷退場に追い込み、さらには巧妙にPKを獲得して西郷政光を2枚目の警告で退場させたのです。ネストールはPKを決め、ブラジルが勝ち越します。

1点ビハインドで主人公が大会を棒に振る負傷をして、ピッチからいなくなるという非常事態に陥るも、日本はサポーターからの熱い念を受け、「てっぺいさんなら…」という思いでプレーする残された選手の力でブラジルゴールに迫ります。そして最後は坂本琴音の愛の叫びを聞いた森川がゴールにねじ込み、同点に追い付きました。

試合はPK戦にもつれこみ、全員が成功する中、5番手のキッカーを務めたネストールが、先日のコパ・アメリカ決勝でのリオネル・メッシのような外し方をしたため、日本が念願の準々決勝進出を決めました。

しかし、どのような負け方をしたかは描かれませんでしたが、主力2人を失った影響は大きく、ドイツには1対6で敗れます。現実のブラジルより1点だけ失点が少ない敗戦でした。 

ファンタジー溢れ、世界から称賛を受けそうな日本の戦いは残念な形で幕を閉じました。ただ、草場道輝先生の「あとがき」によると、現実世界では未達のベスト8に進めることはできたものの、もともと「現実に即し」た作品にすることが求められていたとのことで、こればかりはどうすることもできなかったようです。

以前の「おまけまんが」から想像するに、『週刊少年サンデー』の方針転換の影響を受けて終わりを迎えてしまったのではないかと思っていましたが、どうやらそれは違うと言えそうです。てっぺいがピッチを去る時、「まだまだ上に行ける自信はあった…」という悔しい思いがこみ上げてきたのは、作者の思いの反映かとも思いましたが…。

ただ、実在の本田圭佑が作品の中にいたことで、最終話でSVホルン買収の話を出すことができ、日本サッカーの未来への希望が描かれて、きれいに終わることができました。


日本が勝つと、準々決勝進出が決まるマドリッド五輪第2戦のアルゼンチン戦。最終戦のナイジェリア戦を消化試合にしてしまうのかどうかがストーリー展開的には気がかりな中、輝きを放ったのはディエゴ・マラドーナをモデルにしたファン・ディアスでした。

ディアスのマラドーナ要素は以前に増して濃くなっています。時代が流れ、リオネル・メッシの要素が多少は混じるかと思いましたが、そうはなっていません。プーマのスパイクを履いた背番号10は、大空翼がいるためかバルセロナを経由しないものの、代わりにボカジュニアーズでリベルタドーレス杯を獲得し、来シーズンはナポリへの移籍が決まっています。ディアスがバルサに入って、翼やリバウールと共演する姿を見てみたい気もしますが、翼をライバル視しているがゆえにそうはいきませんでした。

試合でのディアスは軽やかにピッチを舞い、攻守両面において奮闘します。特に守備面での貢献度が高く、味方に力を温存するため休むよう言われるまでは、翼と岬太郎のツインシュートを至近距離でブロックしたり、コーナーキックで意表を突いた井川岳人のヘッドを阻止したりしていました。

そして、失点のピンチを防いだ後は、自陣ゴール前からの100M独走ドリブルを試み、成功します。相手コーナーキックからのカウンターということで、抜き去らなければならない日本の選手は少なく、岬も、若林源三も、さらには翼もボールに触れることができず、アルゼンチンが先制しました。

と、この巻ではディアスが主役の座を奪っていますが、ディアスのアクロバティックなミラクルオーバーヘッドを自分のものにしたように、これまで数多のライバル達の技を完コピしてきた翼が、このまま終わるはずはないでしょう。100M独走ドリブルをやり返す可能性もあり得ます。全日本少年サッカー大会決勝で明和FC相手に見せたゴールへのドリブルを彷彿させるプレーが、カンプノウで見られるかもしれません。

果たして試合はどんな結末を迎えるのでしょうか。ロベルト本郷、ナトゥレーザ、カルロス・サンターナが予想した通り、日本が勝利してしまうのか、リバウールの引き分け予想が当たるのか、はたまたロベルト・カロルスのアルゼンチン勝利の予想が当たるのか。後半の戦いに期待が高まります。


昨年発売予定だったはずがずれ込んでしまい、今月発売となった3巻。少なくとも2ヵ月遅れとなった一冊は、全9話、マドリッド五輪の日本対オランダを最後まで収録したボリュームたっぷりのものとなりました。

大空翼のオーバーヘッドでのパスを受けた三杉淳のオーバーヘッド、日向小次郎のジャンピングタイガーボレー、そして翼と岬太郎のジャンピングボレーでのツインシュートと、空中からの派手で豪快なシュートがオランダのゴールネットを次々と揺らす試合でしたが、決勝点となった2点目のゴールは意外とシンプルな形で生まれました。

若林源三が起点となったカウンターで石崎了がオーバーラップを仕掛け、ライツファーをかわしてマイナスのクロス。それに対して日向がクゥーマン、ダビィを引きつけ流れたボールを、フリーの翼が頭で押し込んで決めました。『キャプテン翼』にしては、かなりリアリティのある、現実的な形での得点でした。おそらくオランダにとっては石崎の仕掛けがあまりにも予想外だったのでしょう。

交通事故で命を落とした亡き兄の思いも背負って戦うブライアン・クライフォートの存在は、日本にとって引き続き脅威でした。ただ、先制点以降の決定機は、対応が難しい無回転シュートが若林の正面だったことを考えると、後半開始早々の至近距離からのスパイラルジャンピングボレーしかありませんでした。しかもここはSGGKの読み勝ちで、ピンチを免れることができました。

後半8分のツインシュートでスコアを4対1とし、試合を決定づけたあとの40分弱の時間は、ビハインドの大きさにオランダが萎えてしまったのかわずか4ページにまとめられ、タイムアップを迎えました。翼のコンディションが100%ではない中でも、日本強しと印象づけるのに十分な快勝でした。

勝点3を獲得した日本の次なる相手は、こちらも初戦でナイジェリアを下したアルゼンチンです。「2016年発売予定!!」の告知を信じて楽しみに待ちたいと思います。


決勝トーナメント1回戦の日本対ブラジルが描かれているこの巻では、2015年の終わりが近い今となっては懐かしさすら覚える8.6秒バズーカーとクマムシのネタのオマージュを挟みつつ、これぞ少年マンガ、と思わせてくれるファンタジーにあふれたプレーが次々と繰り広げられていきました。

まず見せたのは地元開催のワールドカップで負けられないブラジル。エースのネストールが鉄壁のディフェンスを誇るヒクソン・シウバのパスをわざわざ下がってカットし、自陣でボールを持つと、そのまま日本のゴールまでドリブルで進んでみせます。サイドラインでは森川竜司と山波健介を股抜きとヒールリフトでかわし、最後はイタリア戦での坂本轍平と同じように角度のないところからシュートを打ちました。

ボールは外側のサイドネットを揺らすにとどまり、得点には至りませんでしたが、ほぼ完璧な流れでした。この一連のシーンは、直後に森川がネストールとの1対1を制することの意味の大きさを表していました。

その次はディディーが見せます。巧みな演技でFKを奪うと、そこでは単なるおとり役ではなく、ボールに触っていないようで実はほんのわずかに触っていて、ネストールとのコンビで難なく勝ち越し点を奪います。イタリアのマルコ・クオーレのプレー以上にじっくり見ないとわからない、とても緻密で狡猾な動きでした。

もちろんそれで引き下がる日本ではありません。後半開始直後こそブラジルの勢いに負けて追加点を許してしまいますが、坂本琴音の提案した4-3-3、カルロ・グロッソ監督が「ステラシステム」と呼ぶ形に変え、一気に形勢を逆転させます。

このシステムはトップ下に人を立たせず、インサイドハーフと前の3人が自由自在にポジションを変え、5人でゴールに向かって星がきらめくイメージを共有。最終的にはゴールに通じる「星の通り道(ステラスポット)」を見つけ出し、フィニッシュに繋げるという攻撃です。実際にこれで1点を返しました。

ポジショニングを流動的にして相手を混乱させ、イメージ通りにボールを回すことで、特別な者にしか見えないステラスポットをいとも簡単に見つけることができているので、ブラジルに限らず、どんな相手であろうともいくらでも点を取れそうな無敵の攻撃に思えてしまいます。日本がミネイロンの惨劇を再現しそうな勢いがありました。

しかし、2回目は沖田薫のシュートをヒクソン・シウバがブロックしてこの巻は終わります。シウバも星の存在を感じられるプレーヤーのようです。サッカー王国にそういう選手がいなくてはおもしろくありません。1点ビハインドの日本がどのようにシウバを攻略するのかが、この試合の行方を大きく左右しそうです。


第114話から第116話にわたってブラジル対策を入念に行った様子が贅沢に描かれ、最終的に「一対一」で負けない覚悟を植え付けた上で、本物よりはるかにクールなネストール率いるサッカー王国とのアウェーゲームを迎えました。

ブラジル国歌の描写は、先のワールドカップを思い起こさせるようなもので、音を使わずに文字と絵だけの見事な表現であの時のスタジアムの雰囲気をつくりだしていました。

日本は坂本琴音の提案した4-3-3ではなく、本田圭佑を最前線に置いた4-2-3-1でスタート。試合は前半5分、由利速人のすばやいスローインを受けた本田が虚をつくシュートを放って先制します。ペナルティエリアの外からか中かからなのか、どんな弾道でゴールネットを揺さぶったのかはわかりませんが、とにかく「もってる」男のゴールであったことは間違いありません。

その後はブラジルの脅威をじわじわ感じつつも、日本が平常心で真っ向勝負を挑んでいます。負けたら終わりのノックアウトラウンド、しかもホスト国相手だというのに非常に頼もしいイレブンです。

流れが変わったのは、師匠であるカルロ・グロッソ監督が「ブラジルに一番欠かすことができないパーツ」と言わしめるCBのヒクソン・シウバに沖田薫がボールを奪われてからです。そこから前線に持ち込まれ、最後はアンドレアのトゥーキックによるテクニカルなシュートで同点に追い付かれます。

それでも日本はメンタルを保って、再び戦いに身を投じたところでこの巻は終わりました。まだ主人公の坂本轍平が活躍していないので、日本が簡単には引き下がらない展開になっていきそうです。

さて、本田の先制ゴールの詳細が気になった12巻でしたが、もう一つ気になる箇所がありました。それはブラジルのフォーメーション図で最終ラインの並びが逆ではないかという点です。

少なくともSBが逆なのは間違いないようです。マルスのモチーフになったのがマルセロ、ダニエル・アウフのモチーフになったのがダニエウ・アウベスなのは絵柄や劇中の所属クラブからして確実で、そうだとするとマルスが右、アウフが左に配置された図は明らかに違っています。

またマルスとマッチアップしていたのが、右SBの由利である点からもマルスは左SBを任されているはずなのです。単行本化するにあたって、どなたも気付かなかったのか。読者へのクイズではないでしょうし、やや不思議ではあります。

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