22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

サッカー

不安 ――J1リーグ 川崎フロンターレ vs 鹿島アントラーズ

ホームで鹿島相手に勝ち点3を獲得――。結果だけを見れば順調なリスタートを切ったかのようですが、内容に関しては手放しで喜べないものとなりました。

前半はアントニオ・カルロス・ザーゴ監督のもと改革途上の鹿島に対し、川崎は持ち味を出しながら得点を重ねました。とりわけ家長昭博のファーサイドを狙ったクロスを受けた長谷川竜也のトラップからのシュートは、一連の流れが見事でした。

しかし直後にファン・アラーノのコーナーキックをチョン・ソンリョンの前に立ったレアンドロ・ダミアンがオウンゴール。そこから少しずつリズムが崩れていきます。

後半、ロッカールームから戻ってきた鹿島が、プレッシャーと囲い込みを強めるようになると、ボールの収まりどころがなくなり、流れるようなボール回しができなくなります。頼みの大島僚太はこの日はボールにフィットしきれていませんでした。

交代で入った選手も齋藤学ががむしゃらさを出すくらいで、チームに変化をもたらすことができません。逆に鹿島は遠藤康、染野唯月が攻撃面で大きな貢献をします。染野はクロスバーを叩く強烈なシュートを披露しました。

終盤は体を張ってコーナーキックに逃げ、それを懸命のクリアで凌ぐ。そんな繰り返しでした。レアンドロ・ダミアンが倒れてもブーイングが起こらないような、無観客でホームスタジアムならではの声援がないからか、はたまた約4ヵ月ぶりの公式戦ゆえの感覚のずれが時間とともに現れたのか、とにかく川崎らしさはほとんど出せなくなっていきます。

そもそもショートコーナーからの谷口彰悟の先制点も、VARがあればオフサイドで取り消しになっていたはずですから、この試合に関してはなにかと幸運に恵まれていました。

ただ、どんな形であれ勝つということでポジティブになれる側面はあるので、これをきっかけに勢いをつけられる可能性はあります。次節、アウェイでの多摩川クラシコでどれだけのパフォーマンスができるかが鍵になるでしょう。


大破 ――プレミアリーグ マンチェスター・シティ vs リバプール

シティにとっての4点目、アレックス・オックスレイド・チェンバレンのオウンゴールが記録される66分までは、非常に緊迫した展開が続きました。リバプールの優勝が決まった直後の対戦だとは感じられないほどの熱量がそこまではありました。

互いに引くことを望まないスタンスで戦うため、リバプールはフィルジル・ファン・ダイク、ジョー・ゴメスの後方からのロングボールを生かしてシティの背後を狙い、シティは窮屈な場面であろうともボールをすばやくつなぐ形を貫きます。

均衡を破ったのはPK獲得能力の高いラヒーム・スターリングのプレーでした。対峙したジョー・ゴメスは、前回対戦でやり合った背番号7をボックスの中でクリーンに止め切ることができませんでした。

さらに2点目もスターリングがゴメスの逆をとって生まれており、ファーストチョイスの右センターバックは前半だけでベンチに下がることとなります。その位置はファビーニョに託されます。

前半、リバプールの誇る3トップが高い位置でディフェンスをスタートし、中盤の3人は呼応するようにハードワークをしていました。攻撃面でも貢献度が高く、しっかりグループとしてはまっていただけにオックスレイド・チェンバレンを入れてそのバランスを崩したメンバー変更は裏目に出てしまいます。

反撃の形がつくれないまま時間が経過し、結果的に4点目を失うこととなりました。

大差がついたことで、さすがのチャンピオンチームも集中が落ちます。シティもクリーンシートで終わらせる意思を見せてはいたものの、ゲームの流れを読んで、容赦なく畳み掛けることはしません。確実に堅実に締めてタイムアップを迎えました。

シティで目を引く出来だったのは、たくましさを増しているフィル・フォーデンです。かつてはバックパスや横パスといった安全第一のプレー選択が多く、怖さを感じなかったプレーヤーでしたが、20歳になった生え抜きは相手に脅威を与え続けました。

45分にはケビン・デ・ブライネとのワンツーから右足でフィニッシュ。早い段階で試合を決定づける3点目を奪います。その後も任されるポジションを変えながら、カウンターの好機に絡みます。

シティは頼もしい若手の働きもあり、自分たちの庭では優勝を讃えて拍手で迎えこそすれ、勝利の美酒だけは味わわせませんでした。


餌食 ――プレミアリーグ チェルシー vs マンチェスター・シティ

アーセナル戦、バーンリー戦にクリーンシートで快勝し、長期中断明けは好調のマンチェスター・シティ。スタンフォード・ブリッジに乗り込んでの上位対決は、守りに重心を置きながらもカウンターという鋭く強烈な武器を持つチェルシーに敗れる結果となりました。

最初の失点はバンジャマン・メンディとイルカイ・ギュンドアンの意思疎通がうまくいかなかったことからクリスティアン・プリシッチの独走を許したために生まれました。もともとは相手陣内深い位置でのフリーキックのチャンスでしたが、見事に引っ繰り返されます。

その後、ハーフタイムを迎えるまでの9分間、シティの選手に動揺が見られました。攻撃の組み立てに際して焦りが出ていて、それまでのようなバランスのとれた効果的な戦いができないでいました。

ロッカールームに一度戻ってからは立て直しに成功。アンカーのロドリ含め、前方への意識を強めてチェルシー陣内に進出します。この日はプレースキックの精度がそれほど高くなかったケビン・デ・ブライネが、絶好の位置からのフリーキックを沈めて同点にも追い付きました。

直後、0トップの役割を担っていたベルナルド・シウバに代えてガブリエウ・ジェズスを、ロドリに代えてダビド・シルバを入れてギュンドアンをアンカーに置く、よりオフェンシブな形とします。

リスク承知で挑んだシティですが、ホームチームは冷静に対処します。隙あらばカウンターの精神で、少ないチャンスを生かしました。プリシッチのきわどいシュートはカイル・ウォーカーがギリギリのところでクリアしますが、ひたむきな守備が実ったのはここまででした。

左サイドでファウル覚悟のプレーをしたデ・ブライネがウィリアンの突破を許し、チェルシーが決定機を創出。最後はシュートに対してフェルナンジーニョが腕を出したため、PKを与えることとなりました。これをウィリアンがきっちり決めて勝負あり。フェルナンジーニョは退場処分を受けたため、シティは数的不利にもなりました。

引き分けでもリバプールのプレミアリーグ優勝が決まる中、残り時間はわずかに12分。アディショナルタイムは6分用意されたものの、選手交代の機会を使い果たしていてラヒーム・スターリングを右サイドバックで起用しなければならない難しさもあり、あきらめの色もにじみ出てきて勢いが失われます。

結局、ボールは支配しながら、枠内シュートはわずかに2本。勝ち点3の獲得はなりませんでした。

シティとしてはこの試合に勝って、まだリーグ優勝が決まっていない状態で次節リバプールとの燃えるような直接対決を迎えたかったはずですが、昨シーズンのヨーロッパリーグチャンピオンはたやすく倒せるチームではありませんでした。


全敗 ――シービリーブスカップ アメリカ女子代表 vs 日本女子代表(なでしこジャパン)

とにかく失点をしない。苦手なサイド攻撃を封じたい――。狙いは様々あったでしょうが、センターバックタイプを最終ラインに4人並べて挑んだアメリカ戦は、3失点に終わりました。

自分たちのいい部分を出すというより、守備的な意識を強めたメンバー構成がチームの勢いを削いでしまいました。前半は相手が飛ばしてきたこともあり、ミス絡みでの失点を重ねます。

先制弾となるミーガン・ラピノのフリーキックを与えた原因は、左サイドハーフで起用された田中美南が自陣でのミスを挽回しようとして犯したファウルでした。

2失点目は山下杏也加が土光真代に向かって蹴ったボールが短く、ラピノにカットされたところから始まりました。ラピノはすばやくクリステン・プレスに預け、熊谷紗希と南萌華の間に立ったプレスは山下の頭上を越える軌道のシュートを放ちます。

南はサイドを走るトビン・ヒースが気になって詰めが甘くなり、ヒースを見るべき左サイドバックの三宅史織は中央への絞りが遅れてしまいました。ミスがきっかけのため難しい場面でしたが、もう一歩切り替えが早ければ、ブロックしきれたかもしれません。

同じような過ちを繰り返しつつも、選手は反撃の意思を見せました。後半頭から岩渕真奈が入るとそれが形に現れ始め、岩渕に引っ張られるように籾木結花もドリブルで密集に突っ込むようになり、杉田妃和はボール奪取能力の高さ、攻撃参加の意欲を見せだします。加えて最終ラインの熊谷から縦につけるボールもつながるようになりました。

前の2試合よりも相手ペナルティエリアへの進入が増え、アメリカの運動量が落ちて後ろ向きに走るようになったのも手伝って、流れの中から岩渕のゴールが生まれました。

その後、コーナーキックから失点はしたものの、大会初戦からこのサッカーができていれば、失いかけていたなでしこらしさを取り戻し、全敗という最悪の結果は避けられたかもしれません。

結果的にスペインの圧力に屈して及び腰になったことで、すべてのリズムが崩れてしまいました。オリンピックが短期決戦であることを考えると、今回と同じようなミスはできません。

最後の45分にかすかな希望を見出した大会ではありましたが、欧米の強豪への苦手意識はやはり払拭しきれませんでした。


消沈 ――シービリーブスカップ 日本女子代表(なでしこジャパン) vs イングランド女子代表

残り時間7分での失点から立ち上がる力はありませんでした。残念ながらなでしこジャパンではかつてからパターン化している形でゴールを奪われたことによるショックは大きく、反撃できないままあっさりとタイムアップを迎えました。

エレン・ホワイトの得点につなげてしまった三宅史織のミスは、イングランドの狙い通りでした。前線の3人が日本のビルドアップのミスを予測。杉田妃和と両センターバックを追い詰めることでパスコースを限定させつつゴールへの道筋をつくります。日本はその罠にまんまと引っかかってしまいました。

前の試合のスペインと比較すると、パワーとフィジカルは脅威としてあったものの、プレッシャーの強度はやや落ちるイングランド。それだけに反省を生かして90分戦い抜かなければならなかったのですが、あと一歩足りませんでした。

無得点に終わった攻撃は、またしてもミドルレンジからのシュートが多くなりました。シュートで終わるのは悪くないとはいえ、怖さを与えられない時点で多用するのはあまり意味がありません。

それ以外では守備時は4-1-4-1で構えるイングランドに対して、サイドでボールを動かしてクロスを入れても高さのあるセンターバックにことごとくはね返され、中盤を飛ばして最終ラインの背後を狙ったパスもなかなか効果的な形になりませんでした。

後半途中から入った植木理子は、高倉麻子監督の指示があったのか、はたまたピッチサイドから見ていての自身の判断なのか、ペナルティボックスに入って攻撃を完結させる意識を持っていましたが、チーム全体には浸透しませんでした。

スタメンの大幅入れ替えは、疲労を考慮しての指揮官の決断にも見えましたし、守備陣を変えて、籾木結花、田中美南といった選手を最初から起用することで新たな化学反応を期待したようにも見えました。

ところが終わってみれば同じような結末。オリンピックのグループステージはよほどのことがなければ突破可能だとして、その先のメダルが見える戦いができているかといえば、まったく見えない状況です。


ギャラリー
  • 曖昧 ――FUJI XEROX SUPER CUP 川崎フロンターレ対セレッソ大阪
  • 動揺 ――ルヴァンカップ決勝 セレッソ大阪対川崎フロンターレ