22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

サッカー

全敗 ――シービリーブスカップ アメリカ女子代表 vs 日本女子代表(なでしこジャパン)

とにかく失点をしない。苦手なサイド攻撃を封じたい――。狙いは様々あったでしょうが、センターバックタイプを最終ラインに4人並べて挑んだアメリカ戦は、3失点に終わりました。

自分たちのいい部分を出すというより、守備的な意識を強めたメンバー構成がチームの勢いを削いでしまいました。前半は相手が飛ばしてきたこともあり、ミス絡みでの失点を重ねます。

先制弾となるミーガン・ラピノのフリーキックを与えた原因は、左サイドハーフで起用された田中美南が自陣でのミスを挽回しようとして犯したファウルでした。

2失点目は山下杏也加が土光真代に向かって蹴ったボールが短く、ラピノにカットされたところから始まりました。ラピノはすばやくクリステン・プレスに預け、熊谷紗希と南萌華の間に立ったプレスは山下の頭上を越える軌道のシュートを放ちます。

南はサイドを走るトビン・ヒースが気になって詰めが甘くなり、ヒースを見るべき左サイドバックの三宅史織は中央への絞りが遅れてしまいました。ミスがきっかけのため難しい場面でしたが、もう一歩切り替えが早ければ、ブロックしきれたかもしれません。

同じような過ちを繰り返しつつも、選手は反撃の意思を見せました。後半頭から岩渕真奈が入るとそれが形に現れ始め、岩渕に引っ張られるように籾木結花もドリブルで密集に突っ込むようになり、杉田妃和はボール奪取能力の高さ、攻撃参加の意欲を見せだします。加えて最終ラインの熊谷から縦につけるボールもつながるようになりました。

前の2試合よりも相手ペナルティエリアへの進入が増え、アメリカの運動量が落ちて後ろ向きに走るようになったのも手伝って、流れの中から岩渕のゴールが生まれました。

その後、コーナーキックから失点はしたものの、大会初戦からこのサッカーができていれば、失いかけていたなでしこらしさを取り戻し、全敗という最悪の結果は避けられたかもしれません。

結果的にスペインの圧力に屈して及び腰になったことで、すべてのリズムが崩れてしまいました。オリンピックが短期決戦であることを考えると、今回と同じようなミスはできません。

最後の45分にかすかな希望を見出した大会ではありましたが、欧米の強豪への苦手意識はやはり払拭しきれませんでした。


消沈 ――シービリーブスカップ 日本女子代表(なでしこジャパン) vs イングランド女子代表

残り時間7分での失点から立ち上がる力はありませんでした。残念ながらなでしこジャパンではかつてからパターン化している形でゴールを奪われたことによるショックは大きく、反撃できないままあっさりとタイムアップを迎えました。

エレン・ホワイトの得点につなげてしまった三宅史織のミスは、イングランドの狙い通りでした。前線の3人が日本のビルドアップのミスを予測。杉田妃和と両センターバックを追い詰めることでパスコースを限定させつつゴールへの道筋をつくります。日本はその罠にまんまと引っかかってしまいました。

前の試合のスペインと比較すると、パワーとフィジカルは脅威としてあったものの、プレッシャーの強度はやや落ちるイングランド。それだけに反省を生かして90分戦い抜かなければならなかったのですが、あと一歩足りませんでした。

無得点に終わった攻撃は、またしてもミドルレンジからのシュートが多くなりました。シュートで終わるのは悪くないとはいえ、怖さを与えられない時点で多用するのはあまり意味がありません。

それ以外では守備時は4-1-4-1で構えるイングランドに対して、サイドでボールを動かしてクロスを入れても高さのあるセンターバックにことごとくはね返され、中盤を飛ばして最終ラインの背後を狙ったパスもなかなか効果的な形になりませんでした。

後半途中から入った植木理子は、高倉麻子監督の指示があったのか、はたまたピッチサイドから見ていての自身の判断なのか、ペナルティボックスに入って攻撃を完結させる意識を持っていましたが、チーム全体には浸透しませんでした。

スタメンの大幅入れ替えは、疲労を考慮しての指揮官の決断にも見えましたし、守備陣を変えて、籾木結花、田中美南といった選手を最初から起用することで新たな化学反応を期待したようにも見えました。

ところが終わってみれば同じような結末。オリンピックのグループステージはよほどのことがなければ突破可能だとして、その先のメダルが見える戦いができているかといえば、まったく見えない状況です。


速度 ――シービリーブスカップ スペイン女子代表 vs 日本女子代表(なでしこジャパン)

44分、清水梨紗の低く鋭いパスをダイレクトでループシュートにした岩渕真奈の判断、技術は見事でした。岩渕についていたアンドレア・ペレイラもローラ・ガジャルドも完全に裏をかかれました。劣勢に立たされる中での同点弾はチームを勇気づけるものとなります。

ただ、前回対戦と同様の狙いをもって戦うスペインを抑えることはできませんでした。日本のビルドアップにも容赦なく襲いかかり、即時奪回の意識が極めて高いことはわかっていたはずです。そうでなくても、この日ピッチでプレーしながら感じられたはず。それでもみすみす得点を許す形を繰り返してしまいました。

厳密に言えば、立ち上がりからスペインに比べてボールを持ったときの判断スピードに遅れがあり、どうにか前半を戦いながらその速さにアジャストしつつはありました。それをハーフタイム明けも続けられなかったことが結果的に大きな敗因となります。

交代枠が6人分あったことから高倉麻子監督が手当てを施し、最終ラインに宮川麻都、さらにはセンターバックに三宅史織を入れてもディフェンスは強化されませんでした。

脆弱なディフェンス陣を相手に2得点を奪った途中出場のルシア・ガルシアは、機敏なタイプのトップではありません。それでもアタッキングサードでのボールをめぐる競争においては爆発的なスプリントを見せました。彼女ほどの貪欲さが日本には足りませんでした。

攻撃面では岩渕のスーパーなプレー以外にチャンスがつくれなかったわけではありません。期待された田中美南にも味方がコースをつくる動きをしたことでシュートチャンスがめぐってきました。しかし、全体的には手詰まりな中でのミドルシュートが目立ち、セットプレーを除いてゴールの可能性の高いエリアまで進入してフィニッシュする形はほとんど見られませんでした。

また、なでしこジャパンが形として持っているサイドバックが絡んだ攻撃も、試合終盤になるまで披露できずにいました。前半に遠藤純が押し込まれた分、同じポジションを務めた宮川には期待がかかったはずですが、サイドを深くえぐるまでには至りません。

大半の時間、相手に思い通りのサッカーをさせてしまった日本。苦しいオリンピックイヤーの船出となりましたが、同じく初戦を落としたイングランドとの戦いでは頭と体をフル回転させて挑んでほしいものです。


新風 ――J1リーグ 川崎フロンターレ vs サガン鳥栖

4-2-3-1を主体としていたシステムを4-3-3に変え、正式に戦力として加入した若手選手が新たな一歩を踏み出した川崎ですが、試合はスコアレスドローに終わりました。

立ち上がり、早目に先制してしまおうとする鳥栖の勢いを殺したあとは、家長昭博からのクロスを武器として使い、中央のレアンドロ・ダミアンを生かす攻撃でゴールに迫りました。

サイドからのクロス主体の攻めで相手を押し込んでから、持ち味である連動性の高さを生かした地上戦にシフトしたのは35分ごろからでした。基本の立ち位置は変わっても、中盤の3人のポジション移動はスムーズで、相手陣内深いところまでボールを運べました。

ただ前半のビッグチャンスは、高丘陽平のパスミスを逃さず狙った田中碧のミドルシュート1本にとどまります。

後半に入るとレアンドロ・ダミアンが少し下がってポストプレーをして、中央でボールを収める機会を増やすようになり、それによりカウンターの形をつくることもできました。

49分、家長のシュートのこぼれをレアンドロ・ダミアンが押し込むも、VARの介入でオフサイドポジションにいたことが明らかとなりゴールは認められません。

均衡を破りたいところで昨シーズン終盤はやや硬直化傾向にあった采配ですが、新戦力の加入によってそこは変わってきました。70分、両ウイングを下げて、旗手怜央、三笘薫が代わりにピッチに入ります。

得点につながるプレーを求められる中、特に三笘は積極果敢に仕掛けてアタッキングサードで躍動しました。若武者に引っ張られるようにチーム全体もゴールへの意欲を強めます。

小林悠も送り込まれ、攻撃性を高め、ペナルティエリア手前でのフリーキックも二度得られたものの、最後の最後までゴールネットを揺さぶることはできませんでした。

これがトレーニングマッチならばまずまずかもしれませんが、リーグ戦の1試合、しかもホームでの開幕戦である点を踏まえると、覇権奪回に向けて新機軸を導入したとはいえ、19本のシュートを打ったとはいえ、勝てない、勝ち切れないという昨シーズンに頻発した結果に終わってしまったと言えます。

フィニッシュワークの物足りなさゆえにいいスタートを切れなかった川崎。次の試合で流れをつかみたいところです。


花道 ――天皇杯決勝 ヴィッセル神戸対鹿島アントラーズ

新しい国立競技場での決戦は、クラブ初のタイトルがかかっているとはいえ勝者のメンタリティを備えた選手を擁する神戸と、クラブとして20ものタイトルを獲得している鹿島の激突となりました。

序盤は鹿島が押し込んでいたものの、それを凌ぐと神戸が主導権を握ります。鹿島のトップの選手は神戸の最終ラインと飯倉大樹のボール回しに圧力をかけないため、ビルドアップがスムーズに進んでしまいます。

そこから左ハーフスペースを主戦場にするアンドレス・イニエスタに預けてスイッチが入る格好になっており、背番号8のボールキープ力、展開力の高さで鹿島を大きく上回ります。クォン・スンテの立ち位置を見てロングシュートを放ったりもしました。

最初は右ウイングに構えていたルーカス・ポドルスキも次第に左にポジションを変えます。そこに酒井高徳が絡んでの攻撃が神戸にとっては主体となっていました。

先制点は鹿島ゴール前で酒井とポドルスキがともにボールに迫り、ポドルスキが蹴り込んだクロスをクォン・スンテが弾くも犬飼智也に当たったことで生まれました。

流れをつかんだ神戸は左偏重になりすぎないように右からの攻撃にも重きを置き、時折イニエスタが山口蛍とポジションを変えるなどしており、追加点は西大伍のクロスに藤本憲明が合わせて決まります。

試合はここから鹿島がどう逆襲を仕掛けるかが注目され、大岩剛監督は後半開始から動きました。土居聖真をハーフタイム明けに、山本脩斗を後半8分に送り込みます。

ただ、この日の鹿島は選手のコンディション不良が一部で伝えられており、実際、プレーの精彩を欠いていました。シンプルなロングパス、サイドチェンジがミスになり、タッチラインを割るシーンが目立ちました。

そうなると大きな展開を求めるのではなく中央を打開しにかかりますが、5-4-1で守る神戸の守備を崩すことができずにつかまってしまいます。イニエスタの相手のコースを消す動きも巧みでしたが、山口、西といった日本代表クラスの選手が汗かき役となって奮闘しました。

終盤に入りようやくサイドを大きく使った攻撃で神戸陣内深い位置まで入ってクロスを入れるところまでできるようになりましたが、フィニッシュワークに迫力を欠き、決定機が生まれません。鹿島らしいしぶとさ、憎らしさが表に出てこないまま時間が過ぎていきます。

試合が終わりに近づくと、勝利を確信したトルステン・フィンク監督はイニエスタを下げ、さらにポドルスキを下げて代わりに現役最後の試合となるダビド・ビジャを投入します。

後半のシュート数が2本にとどまった神戸でしたが逃げ切りに成功。天皇杯のタイトルを獲得するとともにAFCチャンピオンズリーグ出場権をも得ることとなりました。神戸はタイトルを取ったことでクラブとして見える景色が変わっていくでしょうし、野望に向かって大きな一歩を踏み出すことができました。


ギャラリー
  • 曖昧 ――FUJI XEROX SUPER CUP 川崎フロンターレ対セレッソ大阪
  • 動揺 ――ルヴァンカップ決勝 セレッソ大阪対川崎フロンターレ