22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

カテゴリ: サッカー

シュートの意識が非常に高い大久保嘉人に手痛いゴールを二度も決められましたが、最終的には川崎が勝利を収めました。

前半は先制された直後に脇坂泰斗の角度をつけた鋭いパスで右サイドを崩して、山根視来のクロスにレアンドロ・ダミアンがダイレクトで合わせて追い付くことはできました。ただ、それ以降キム・ジンヒョンを脅かすほどの決定機はつくれませんでした。

それゆえハーフタイム明けに鬼木達監督はメンバーを代えずに微調整を施します。大久保と清武弘嗣に消されていたジョアン・シミッチの横に田中碧が時折下がってビルドアップの手助けをしたり、シミッチ自身は消されたままで終わらず、ペナルティボックス近辺まで顔を出したりするようになりました。

また、単純にサイドから放り込んでもビッグチャンスに結び付かないため、変化をつけながら攻撃を仕掛けます。それが後半開始早々の同点弾につながりました。

谷口彰悟の大きなサイドチェンジを起点に右サイドでボールを動かし、山根がボックス内でパスを受けてマイナスのクロスを入れることによって、やや下がって待っていたレアンドロ・ダミアンのゴールが生まれたのです。起点となったロングボールを使った攻撃は、今シーズンになって多く見られるようになりました。

開幕戦を含めてここまで右サイドからの得点が続いていましたが、決勝点は左からでした。三笘薫がリーグ戦今季初ゴールを記録します。それまで坂元達裕と松田陸に苦しめられていた背番号18は、この場面では巧みなボールタッチで相手を翻弄した後、レアンドロ・ダミアンとのワンツーで抜け出し、最後はキム・ジンヒョンが届かないコースに狙いすまして決めました。

リードしてからの試合運びが課題となりつつある現状ですが、数回カウンターを食らってピンチを招いたものの大事には至りません。大久保のコースを突いたシュートもチョン・ソンリョンが好セーブを見せて凌ぎます。

選手交代に関しては、シミッチと脇坂をそれぞれ塚川孝輝、橘田健人に代えた以外はスタメンをほぼ終盤まで引っ張る形で戦わせました。過密日程を考慮したターンオーバーも考えられる中、スタメンを固定していますが、その分、次のベガルタ仙台戦で大幅な入れ替えをするのかもしれません。

残り時間が少なくなってからは、相手陣内でボールを動かし続けて時計を進めた川崎。そのまま試合をクローズして連勝スタートを飾ることができました。


ディフェンディングチャンピオンは全員が労を惜しまぬハードワークを続けたことで美しいサッカーを披露することにつながり、鬼門のホーム開幕戦で白星を挙げました。

初戦としては試合の入りが非常によく、それだけにゴールが欲しい前半でした。川崎は左サイドの三笘薫に注目が集まりがちで、実際に三笘が左サイドバックの旗手怜央とも時折絡みつつチャンスをつくる場面もありましたが、得点はいずれもインサイドハーフが開いた右サイドから生まれました。

先制点は脇坂泰斗の浮き球に対して家長昭博と山根視来が重なりかけるも、家長が山根を見てスローダウン。走り続けた山根が意表をついてヒールで落とし、家長がダイレクトで合わせます。

43分の追加点は、田中碧がサイドに流れたレアンドロ・ダミアンとのワンツーを決めて鋭いクロス。家長が頭で押し込みました。それまでオビ・パウエル・オビンナに阻まれるものの枠内シュート自体は多く、いい流れの中で得点を重ねました。

ただ、一昨シーズンの王者がこのまま終わるはずはなく、アンジェ・ポステコグルー監督は左サイドで魅せるドリブルを仕掛けたルーキーの樺山諒乃介に代えて、プレス強度の高い前田大然を中央に配置。システムを4バックにフィックスして修正を図りました。

ビハインドを追い付こうとする強力な攻めに苦しんだ川崎ですが、ジェジエウ、谷口彰悟を中心に集中したディフェンスで失点を許しません。先週のガンバ大阪戦のような中途半端なプレーはほとんど見られませんでした。加えて前線の3枚も危険な時には自陣に下がって対応するなど、チームの守備意識の高さを感じさせました。

数回あったカウンターのチャンスを仕留めきれず、鬼木達監督が求める3点目を取ることはできませんでしたが、開幕戦としては上々の出来でした。64分からインサイドハーフに入ったルーキーの橘田健人もこのクラブで生き残ろうとして奮闘。リザーブメンバーを含む全員が同じ方向を向いて戦っていたのが印象的でした。


リーグ開幕前の一発勝負で一時は2点差を追いつかれましたが、前後半とも飲水タイム後にゴールを奪って90分で勝ち切ることができました。

先月の天皇杯決勝とは異なり、後方を重くすることなく前線からプレッシャーをかけてきたガンバに対し、序盤は余裕をもってボールを動かせずにいました。

それでも移籍した守田英正に代わって新加入のジョアン・シミッチがアンカーに入った川崎は、昨シーズン終盤に見られた危険なエリアでのピンチを招くようなボールロストはなく、レアンドロ・ダミアン、三笘薫までつないで決定機をつくれていました。ゆえに流れとしては悪くありません。

そして最初の飲水タイム明けに三笘が立て続けに得点を挙げます。ワイドに開いた田中碧からのパスを受けての先制点。追加点は山根視来の積極的な上がりを生かしました。その間わずか3分でした。

これで完全に主導権を握った川崎は、王者の凄味を見せつけて試合を折り返します。

ハーフタイム明けは息を吹き返したガンバに自由を与えてしまい、繊細かつ堅実な対応が求められるペナルティエリアでの振る舞いにミスが出て失点を重ねてしまいました。昨シーズンの対戦ではなかった失点です。

追い付かれた鬼木達監督は小林悠、長谷川竜也だけでなく、新加入の選手もピッチに送り込みます。スーパーカップという舞台を活用して、実戦の中でチームの熟成を進めました。

試合としては同点で推移する中、東口順昭が好セーブを披露していただけにPK方式での決着は川崎にとって不利になりかねない展開でした。

そうした状況下での決勝点は見事でした。残り時間少ない場面で確実に攻めるためにサイドに展開するのではなく、田中、遠野大弥が中央を切り裂くパスを繰り出しました。

ガンバ守備陣の隙間を一気に突いたパスを受けた小林が、最後は絶妙なコースを狙ってフィニッシュ。エースとしての役割を果たします。

完全に本調子とは言い難いコンディションのようですが、新戦力も違和感なくチームにフィットしており、きっちりとスーパーカップを獲得して終えました。


残り15分を切ったあたりからのガンバの攻撃は脅威でした。宮本恒靖監督は74分に藤春廣輝、山本悠樹に代えて福田湧矢、渡邉千真を投入。パトリックと宇佐美貴史は残したままで、得点を取ることに強くフォーカスした戦いを選択しました。

完全に押し込まれた川崎は、それでも必死で耐えます。ジェジエウ、谷口彰悟がエアバトルを制し、チョン・ソンリョンが好判断で危機を回避。まだコンディションが十分に戻り切っていない車屋紳太郎も短い時間で懸命のディフェンスをします。

それまでは川崎が主導権を握っていました。いつも通り、かつ準決勝と同じ11人を揃えた川崎に対して、ガンバは前回対戦で見せつけられた破壊力を警戒してか、3バックを採用して臨みました。守備時はパトリックが前線に一枚残る5-4-1のブロックを敷きます。引き気味の相手に対して、川崎は遠慮なく攻めに出ます。

特に前半の飲水タイムを挟んだ後はガンバの中盤の選手をミドルゾーン深い位置まで押し込むことに成功し、安定したビルドアップから圧倒しました。ただ、ゴール前のスペースは消されており、レアンドロ・ダミアンに多くボールを集めるも、シュートは枠を外れるか、枠内でも東口順昭の正面にしか飛びません。

後半、ガンバが前線からプレッシャーをかけるようになります。川崎にとってはセンターバックからのビルドアップが難しくなりますが、その分スペースはできます。加えて相手の前線には宇佐美が出てきて2トップの形になり、中盤は実質3人しかいない状態になり、川崎は前半よりも攻めやすくなりました。まるでリードしているかのようにマイペースでボールを動かして隙をうかがいます。

こうして55分に準決勝よりもコンディションが目に見えて上がってきた大島僚太、さらにはレアンドロ・ダミアンが相手に詰め寄られながら必死につないだボールを三笘薫が生かしてフィニッシュ。中央を破って先制します。

その後、ガンバがメンバーを代えずに4-4-2にシステムを変更。真っ向勝負となり、川崎としては望ましい展開になります。2点目を奪うのは時間の問題かと思われましたが、そこで宮本監督が動いたのです。

鬼木達監督はガンバベンチが動いた5分後、前線の鮮度を上げるべく三笘、レアンドロ・ダミアンを下げて長谷川竜也、小林悠を送り込みました。さらに86分には不慣れな左サイドバックを務めた旗手怜央に代えて車屋を入れます。

交代の機会は90分の中ではあと1回となりました。猛攻を凌ぐために指揮官が呼んだのは、脇坂泰斗でした。負傷明け間もない大島に代えての投入です。この日が現役最後の試合となる中村憲剛ではありませんでした。

勝負に徹した結果、終盤での同点弾を食らうことなく虎の子の1点を守って逃げ切り、川崎は初めて天皇杯を手にすることとなりました。表彰式ではキャプテンの谷口からカップを譲り受けた中村憲剛が高々と掲げて大会は幕を閉じました。


相手DFが寄せてくる中、足裏でのファーストタッチでボールをコントロールしてからの三笘薫のシュート、ペナルティエリア手前という直接狙うには難しい位置から鮮やかにねじ込んだ田中碧のフリーキック。いずれもすばらしいフィニッシュで2ゴールを奪って勝利した川崎。そのどちらにも絡んだのが背番号10、大島僚太でした。

動きを見る限りはまだ100%のコンディションにないように感じられますが、スタメンで出られるまでに回復した大島は重要な場面で決定的な仕事をしました。三笘のゴールをお膳立てし、追加点に結び付くフリーキックを獲得したのです。それ以外でも家長昭博のジャンピングボレーにつながる絶妙なパスを繰り出しました。

その大島をフォローする役割を果たしたのが、田中碧と守田英正でした。一緒に中盤を任された2人は、相手を外しつつバランスをとりながら広範囲を動き回って好守両面でチームを支えました。

そして同じく復帰組となるのが車屋紳太郎です。この日の先発は難しかったため、登里享平が離脱している中、最初は旗手怜央が左サイドバックを担当しますが、リーグ戦ほどのパフォーマンスができなかった旗手に代わって67分に登場してからは本職ならではの安定したプレーを披露しました。

J3を制した秋田が堅実に守っていたため、現時点での最強布陣によるJ1王者の圧倒的な強さ、貫禄を披露するには至らず、2点目を取るのも83分までかかってしまいました。ゆえに試合の行方が決まってからの投入が予定されていたと思われる中村憲剛の出番も短くなりました。

とはいえ、ノックアウト方式の天皇杯。どういう形であれ勝つことが重要です。タイトルのためには勝ち続けなければ意味がない大会ですから、決勝のガンバ大阪戦も同じように戦っていくしかありません。

大島、車屋の復帰、そして危なげなくシュート1本に抑えて公式戦では1ヵ月ぶりに完封した守備陣。国内でまだ獲得していないタイトルに向けての好材料は揃っています。


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