来夏、最高の景色を見たいのであれば、この日のブラジルは倒しておかなければなりませんでした。ソウルでの韓国戦が現状のベストだったとすれば、東京でのセレソンは言わば「落とした」メンバー構成だったからです。

それだけに負傷者は多いとはいえ、今いる中ではベストな人選で臨んだ日本が、前半だけであっさり2失点したのはいただけません。

ネイマールのPKによる1失点で済みながら、点差以上に差を感じさせた国立競技場での前回対戦と比べれば、前半の日本はミドルで構えて引き過ぎないようにはしていました。

しかし、長期離脱から戻った谷口彰悟は中央にいたものの、代表経験が豊富とは言えない左右のセンターバックが隙を突かれてしまいました。

一方で日本の攻撃もポケット付近までは運べますが、強烈なフィニッシュでウーゴ・ソウザを脅かす機会をつくれません。

過去のブラジル戦同様、既視感を覚えるような見慣れた45分を終え、メンバーを変えないまま後半に臨んだ日本。ただし、戦い方を一変させます。

その振る舞いはカタールでドイツやスペイン相手に見せたのと同じでした。勇猛果敢にプレスをかけ、それが実ってミスを誘い、南野拓実が1点を返します。

すると森保一監督は堂安律とのコンビで右サイドを攻めていた久保建英に代えて、伊東純也を投入。久保はコンディションの問題もあったのかもしれませんが、キックの精度が上がっている背番号14が、その持ち味を存分に発揮しました。

まずファーへのクロスで中村敬斗のゴールをお膳立て。サイドから逆サイドへという攻撃は、アジア3次予選でも日本が披露してきた形です。

さらにコーナーキックで上田綺世のゴールをアシスト。チームとして磨きをかけているセットプレーでの得点です。フランスからベルギーに戻っても伊東の鋭さは錆び付いていません。余談として、その際に谷口が詰めていたのは流石でした。

カルロ・アンチェロッティ監督は、そこからレギュラークラスで固めることはせず、堅実な交代策を進めるばかりで、無理に勝とうというこだわりは見せません。

あるいは選手達がこの後、週末に所属クラブでのリーグ戦を控えているのを考慮したのかもしれません。

迫力が足りないながらも攻めるブラジルに対して、鈴木彩艶の安定した守りが時間の経過とともに光り、谷口を中心とした体を張った守備も奏功します。

3-3にされてしまえば、今までと同じ、何も変わらないということをわかった上でのプレーを選手達は続けました。

ホームの指揮官はというと、パラグアイ戦で準備ができていながらチーム事情で投入を見送らざるを得なかった望月ヘンリー海輝をここで送り込み、サイドの守備強度を高めます。

6分のアディショナルタイムを凌ぎ、35年を超える対戦の歴史の中で、日本がブラジルに初の勝利を収めました。もちろんホームでのフレンドリーマッチだけに手放しで喜べるわけではありません。

たとえば、韓国相手にクリーンシートを達成したエデル・ミリトンとガブリエウがセンターバックを務めていたら、アリソンかエデルソンが負傷していなければ、といったことが挙げられるからです。

とはいえ、スタンドが歓喜で満ちたのも無理はありません。現在、GKコーチを務める下田崇のファンブルなどが原因で2失点した旧国立競技場での親善試合や、崖っぷちの状況下、ドルトムントで先制しながら完膚なきまでに叩きのめされたワールドカップでの激突などを思い返すと、この勝利はやはり格別です。

現体制としては、アメリカ遠征の不出来から回復し、カタールで得た感覚を取り戻せた。その意味で収穫のある10月シリーズとなりました。