クラブの歴史の中で、ずっと越えられなかった壁を突破しました。一昨シーズン、天皇杯の激闘を制して開けた道を突き進み、前進の大会ではこれまで三度阻まれていた準々決勝を勝ち上がります。

長谷部茂利監督のもと、今季はミドルサードで構えて入るゲームが多かった川崎ですが、このゲームはハイプレスを織り交ぜてスタートします。エリソンやマルシーニョが果敢に出ていって、相手にプレッシャーをかけました。

その積極性が実り、開始早々に先制します。山本悠樹のミドルパスを家長昭博が右足で折り返し、エリソンがこちらも右足でフィニッシュ。幸先のいい先制弾です。

ところが、すぐさまアル・サッドに追い付かれます。山口瑠伊の蹴ったロングボールを回収され、そのまま攻められてしまい、最後はアクラム・アフィフのお膳立てをパウロ・オタヴィオに狭い角度から決められました。

試合を振り出しに戻したアル・サッドはリズムをつかんで、川崎ゴールへと襲いかかってきます。ボックス手前からでも躊躇なく、思い切りのいいシュートを打ってきますが、幸い際どい一撃はありませんでした。

前半守って耐える形に慣れている川崎は、我慢を重ねてチャンスをうかがっていました。21分、山本の左足から放たれたミドルパスに抜け出したマルシーニョが、相手より一瞬早くボールに触れてゴールに蹴り込みます。

このままのスコアで折り返しての後半は、アル・サッドがシステムを変え、長いボールをしきりに使い始めます。川崎が押し込まれた中で、相手にボックスに人数をかけられる場面が増えます。

71分、三浦颯太がジオヴァニに奪われ、出されたパスを2人がスルー。クラウジーニョが豪快に蹴り込んで再び同点にされました。

川崎はエリソンに代わって山田新が入るも、シュートまでやり切るケースが少なく、得点を奪えないセカンドハーフになりました。

試合が動いたのは98分、瀬川祐輔が追い回して取ったボールを山田、脇坂泰斗とつないでフィニッシュ。キャプテンは足をつらせてゴールセレブレーションもできないほどでしたが、貴重な得点が生まれました。

一歩前に出たことでチーム全体に活力が戻ります。その中で奮闘が目立ったのは、負傷から復帰した橘田健人。途中出場で中盤を駆け回り、アル・サッドの攻撃の芽を摘み続けます。

時間を進めつつも機を見て攻めた川崎は、山田と橘田がゴールを狙うも決まりません。

追いかけるアル・サッドはボールを保持しつつ、バイタルから加速する攻撃を仕掛けますが、強引な攻めはあまり見せてきませんでした。

川崎は最後まで集中を切らさず、今度は逃げ切りに成功。90分で勝ち切れなかったのは、最近のゲームを踏襲したような形ですが、120分を戦って勝ちました。

東地区唯一の生き残りとなった川崎。次は、UEFAチャンピオンズリーグで歴代最多得点のクリスティアーノ・ロナウドを擁するアル・ナスルとの準決勝です。