必死で抵抗を試みますが、日本はあまりに無力でした。守備が決壊するのは時間の問題と思われました。

遠藤航、鎌田大地でイルカイ・ギュンドアンからボールを奪い、前田大然がゴールネットを揺らしたシーンがオフサイドと判定されて取り消された後、ドイツは猛攻を仕掛けてきました。

人数をかけてプレッシャーをかけてもいとも簡単に揺さぶられ、狭いスペースでも余裕を持ってボールを動かされました。ドイツはいつでもとどめを刺せるかのようなふるまいで、日本を自陣深くに押しとどめます。6月のブラジル戦を思い出すような展開でした。

前半半ば過ぎ、権田修一がPKを献上。これをギュンドアンに決められてからも、ドイツは完全には手を緩めません。ハーフタイムまでに追加点を取られていれば、試合展開は大きく変わっていたはずです。イランやオーストラリアと同じく、強豪国に蹂躙されてもおかしくありませんでした。

しかし、森保一監督による戦い方の変更が流れを引き寄せます。フィジカル勝負で劣勢だった久保建英を下げ、冨安健洋を投入。3-4-2-1、実質5-2-3にシステムを変更しました。

これにより、深い位置で5レーンすべてを埋め、最終ライン一人ひとりの対応する幅を狭めます。守り方が整理されたことでチームは安定しました。傷口を広げないためのベタ引きではなく、勝つための手当てが施されたのです。

後半頭の変更にとどまらず、日本は積極的に得点を取るために交代カードを切ります。長友佑都に代えて三笘薫を同じ位置に送り込み、酒井宏樹が負傷した際も伊東純也を残して右ウイングバックを任せました。この時、代わりに入ったのは南野拓実です。

また田中碧を下げた際、鎌田をシャドーから一列後ろにポジションを変えさせ、送り込んだ堂安律にシャドーの役割を託します。

その間、ハンジ・フリック監督はトーマス・ミュラーとギュンドアンを下げ、引き続き余裕を見せる交代策をとりました。点差は1点でしたが、日本相手に失点を喫することはないと見切ったかのような采配です。

しかし、75分、冷静に状況に向き合っていた三笘を起点に南野がフィニッシュ。マヌエル・ノイアーに防がれるも、堂安がこぼれ球を押し込んで同点に追い付きます。

さらに8分後、遠藤が自陣で受けたファウルによるフリーキックで板倉滉が前方に蹴り出すと、浅野拓磨が見事なコントロールでボールを収めて前進。ノイアーのニア上を射抜くシュートを放ちました。前半は涼しい顔をして手を汚さずにいた世界トップレベルの守護神から、日本が2点を挙げてみせたのです。

終盤になって慌てたドイツはロングボールを多用し、セットプレーではノイアーが上がってきましたが、日本は辛抱強く守って勝利を収めました。

この日は森保監督の的確であくまでも勝利を重視した修正力が実を結びました。まだ初戦が終わっただけであり、中3日で試合が続くタイトなスケジュールですが、ワールドカップで初めて逆転勝利を挙げた、それも優勝4回の強豪相手に挙げたことがプラスに作用するはずです。