三笘薫が大迫敬介に詰め寄ると、大迫は大きくボールを蹴り出しました。前半の川崎であれば、そのロングボールを回収してあらためて攻撃に転ずるような場面でした。

ところがボールを収めたのはジュニオール・サントス。同時に回収を狙ったジェジエウがドリブルで引き剥がされ、ボックス内で谷口彰悟がタックルをするも難なく外され、シュートを打たれます。

幸運にもポストに当たったボールでしたが、拾ったのは森島司でした。角度のないところから放たれたクロス気味のシュートは田中碧に当たってゴールに吸い込まれていきました。

残りはまだ25分ありましたが、この失点が大きく響いて川崎は勝ち点2を取りこぼします。

前半の川崎はチームの充実ぶりがうかがえる戦いをしていました。川崎と言えばネガティブトランジションのすさまじさが挙げられ、攻撃から守備への素早い切り替えによってここまでゴールを重ねてきました。

この日はさらにポジティブトランジションもスムーズに行われており、安易にクリアするのではなく、たびたび自陣から淀みなくボールをつないでいきました。それだけピッチ全体でゲームを支配した45分でした。

38分の家長昭博の先制点も、広島がボールキープを続けるターンであったはずなのに、川崎が回収してからゴールへとつなげていきます。競り合いのこぼれ球を田中が拾って逆襲に転じたのです。チームの連携のよさが凝縮されたフィニッシュは、レアンドロ・ダミアンが家長にシュートを譲って生まれました。

惜しむらくはそれだけ圧倒した45分間にこの1点しか取れなかったことです。ベンチ外が続く選手のコンディションを推測すると、復帰したチョン・ソンリョンを含めておそらく現状ベストの11人を起用したと思われるものの、シュート数では広島の0本に対して完全に圧倒していながら得点を重ねられませんでした。

同点に追い付かれてから鬼木達監督は交代選手を次々と投入し、中盤と前線の活性化を図ります。実際にペナルティエリアの中への進入は果たせていましたが、広島の守りを崩し切れずにタイムアップを迎えます。

川崎にとっては幸いなことに、名古屋グランパスがサガン鳥栖にホームで敗れたため、勝ち点差を6に広げることができました。少なくとも唯一の無敗チームとして首位の座にとどまったまま、名古屋との決戦に臨めます。