単なる敵地ではありませんでした。川崎の選手は終始、ノエビアスタジアム神戸の芝に苦しめられました。神戸の選手も数回、足を滑らせるシーンはありましたが、川崎の比ではありません。

前線からハイプレスをかけたいのにかけきれない、豊富な運動量が持ち味の田中碧が自陣で寄せ切れない、三笘薫が得意のドリブルをスタートさせてバランスを崩すなど、小さなほころびが数え切れないほど出てしまいます。

それは昨シーズンの神戸戦でも見られた光景であり、川崎としてもなんらかの対策はとっていたはずですが、やはりずっと足元に神経を使わなければなりませんでした。

ファーストチョイスの11人で臨んだ試合はこうして通常以上に消耗する形となり、前半はレアンドロ・ダミアンとジェジエウにフリーでの決定機がありながら枠にシュートが飛ばず、先制したのは72分でした。

前川黛也がボックスを飛び出してクリアしたボールを谷口彰悟がダイレクトで前線に送り、高い最終ラインとの駆け引きを制したレアンドロ・ダミアンが無人のゴールにロングシュートを決めたのです。

鬼木達監督はベテランの家長昭博を64分に遠野大弥に代えただけで、先制点が認められるまで大幅な入れ替えは行いませんでした。それだけ膠着した難しい試合であったと言えます。待望の先制後、ジョアン・シミッチと脇坂泰斗を下げて、塚川孝輝、橘田健人を入れました。

1試合3得点を掲げている川崎は終盤、しっかり逃げ切るというよりは2点目を奪いに行く選択をしました。結果、オープンなボールの行き来が激しい展開になります。

すると下がったドウグラスに代わってトップに入った古橋亨梧のスピードに手を焼き、二度ピンチを迎えますがそこは谷口とチョン・ソンリョンによって逃れます。

しかし90+10分、途中投入された初瀬亮の左足のクロスに菊池流帆が頭で合わせ、同点弾が決まってしまいました。谷口も飛びはしましたが、空中での競り合いに遅れてしまいます。

この場面の前には相手コーナーキックからの流れでチョン・ソンリョンと接触したジェジエウが負傷。治療を行い一度ピッチを出なければならず、失点の場面では許可が出て戻ってはいたもののボックス内の守備には間に合いませんでした。実質、川崎の選手が1人少ない中、パワープレーに出てきた神戸の執念が実った格好です。

川崎としては確実にウノゼロで試合のテンポを遅くしてでも終わらせる策をとってもよかったはずです。ポリシーを貫くのも大事ですが、ピッチ状態へのアジャストに苦労した試合であるからこそ、安全策を選ぶ手はありました。これで開幕からの連勝は5でストップしました。