個々としては局面で奮闘していました。それでもチームとして、組織として川崎の強さを見せられたかというと疑問が残ります。

確かに鳥栖のパフォーマンスがよかったというのもありました。ビルドアップでは前の清水エスパルス同様に中盤の3人に厳しくつかれて手詰まりになりがちでした。ときどき脇坂泰斗や田中碧がセンターバックの横に下がってみせたものの、大きな変化を起こせません。

また三笘薫、家長昭博に訪れた決定機は朴一圭に阻まれました。その一方でボックスの中までボールを運びながら無駄に手数をかけてしまい、シュートを打つタイミングを逃す場面もいくつかありました。

結局、チャンスの多くはカウンターによるもので、崩し切って圧倒する形はあまりつくれませんでした。連動、連携の面では物足りなさがありました。

先制点はセットプレー、コーナーキックからの流れで残っていた谷口彰悟が挙げました。脇坂がボックスの手前で余裕をもってクロスを上げられる状態になり、完璧なボールが供給されました。

これが57分のことでした。それまでに得点を奪いきれなかったことが結果的に大きく響きます。

ベンチワークも後手に回りました。チーム状態がいい試合はスタメンを引っ張るケースも少なくないものの、この日は決してそうではなく、またミッドウィークに試合を控えている点を考えても、早目に動いてよかったはずですが、レアンドロ・ダミアンと長谷川竜也が送り込まれたのは67分でした。

最終的に終了間際にレンゾ・ロペスに同点弾を叩き込まれ、せっかくのリードを追い付かれてしまいます。清水戦より安定感を取り戻したジェジエウのクリアが不発に終わり、ゴール方向にボールを飛ばしてしまいました。

アウェイ2連戦はともに引き分け。連勝街道を走っていたころの面影は消えつつあります。

唯一の光明は、左サイドバックを務めた旗手怜央です。負傷による本職不在の危機的状況で任された背番号30は、絶妙なターンで相手をはがしたり、鋭すぎるクロスを小林悠に送ったり、さらにはコーナーキックのセカンドボールを強烈なミドルシュートで返したりと十分な働きを見せました。

リーグ戦は残り2試合。王者としての強さを取り戻すことができるでしょうか。