この試合で決める。それも勝って――。

不甲斐ない戦いが続いていた中で、そういった強い決意を感じさせる18人を鬼木達監督は選択しました。三笘薫を後半からの切り札ではなく最初から起用し、家長昭博を復帰させたスタメンはもとより、ベンチメンバーもDF登録の選手を控えさせません。ここまでJ1を席巻してきた破壊力を90分存分に発揮せんとする人選です。

ボール保持の時間が長い川崎のビルドアップの際、ここ数試合の対戦相手は守田英正を消して苦しめる動きがさかんに見られましたが、ガンバは矢島慎也がときどきケアしに出てくる程度で、どちらかと言えば守田に自由を与えました。

加えてセンターバックにもプレッシャーをかけてこないので、後方で苦労することは少なく、守田から大きくサイドに振るボールもしきりに出て、攻撃に幅を持たせました。

一方、川崎は川崎でリスクマネジメントとして守田をフォローする動きを田中碧にさせており、インサイドハーフを務める背番号25がセンターバックの横まで下りたり、守田の近くに立つようにしたりと万全の態勢を整えます。

後方が安定することで攻撃に力を注ぎやすくなり、飲水タイム直前の22分に登里享平のクロスに走り込んだレアンドロ・ダミアンが先制点を奪います。レアンドロ・ダミアンは昌子源を出し抜いて前方にジャンプしながら、ボールにミートするように右足を横にして丁寧に当てました。

引き分けでも川崎の優勝が決まる試合ゆえに先制点の持つ意味は大きく、45分の田中碧のコーナーキックを起点とした家長の追加点はタイトル奪還にさらに近付く1点になります。

勝つためには3点が必要なガンバは後半、メンバーこそ代えないものの陣形を修正して攻撃に出てきました。川崎はそれを逆手にとってカウンターから家長がチームの3点目を奪います。

次第に宮本恒靖監督が人選の色合いを変化させていく中でも、川崎は手を緩めません。先月末のFC東京戦と同じようにスタメン11人でのプレーは続き、73分には家長がハットトリックを達成します。同時に三笘はゴールこそありませんでしたが、2アシストを記録しました。

83分にようやく川崎の最初の選手交代が行われ、その3分後には大島僚太に代わって中村憲剛が登場します。もう一人の副キャプテン、守田はピッチに残っていましたが、大島のキャプテンマークは中村に託されました。

指揮官の期待に応えてきた選手達のゴールラッシュの最後は、中村と同時にピッチに入った齋藤学の今季リーグ戦初ゴールで締めくくられました。その前に小林悠への優しいラストパスを送った齋藤でしたが、ここでは旗手怜央のシュートのこぼれ球を押し込みました。

残り時間が少ないところでガンバが意地の1点を取りに来たものの、チョン・ソンリョンの好セーブで阻止します。そして中村が矢島のコーナーキックをクリアした直後に西村雄一主審の笛が鳴りました。強い川崎が戻ってきてのホームでの最速優勝達成です。

シャーレは大島が受け取りましたが、笑顔と喜びに包まれる中で最初に大きく掲げたのは腕章を巻いた中村でした。バンディエラの現役ラストシーズンを華々しく彩る、美しい光景でした。