3分、合わせるボールを入れられる位置・距離のフリーキックで直接入れず、大外に開いた家長昭博を使って右サイドからクロスを入れる形にして谷口彰悟の決定機をつくるなど、セットプレーでは前の試合から中10日の成果を見せました。しかし、全体としては北海道コンサドーレ札幌戦から十分に復調したとは言い難い出来でした。

得点にしても、ファン・アラーノの中途半端なバックパスがきっかけでした。ボールを奪った脇坂泰斗がドリブルで運び、並走する三笘薫と2人で奈良竜樹を惑わせて決めたシュートは見事でしたし、チームが好調なシーズンにあって十分な結果を残せずにいた脇坂のゴールは大きいですが、これほどの幸運は容易には訪れません。

川崎は終始、三竿健斗、レオ・シルバを筆頭とした鹿島の激しい守備に苦労します。この日、守田英正に代わってアンカーを任された田中碧は狙われ続け、後方で数的優位をつくるべく両センターバックの間に下がった際にもピンチを招いてしまいました。

また中村憲剛が上田綺世、三竿健斗にフィジカル勝負で当たり負けするなど、ミドルゾーンでも簡単には自由を与えてくれませんでした。

ボールをすばやく動かして相手を翻弄するのが川崎の長所ですが、そこまでのボールスピードを出した攻撃が繰り出せないでいました。

三笘を中心に攻めるようになった後半の決定機は、レアンドロ・ダミアンのクロスを沖悠哉が弾き、こぼれ球に中村憲剛が詰めたシーンしかありませんでした。そのほかのシュートチャンスはボックスの外が大半で、ゴールの確率を高める攻めには思うようにつながりません。

逆に鹿島には広瀬陸斗からのクロスでチャンスをつくられます。同点弾は遠藤康の絶妙なフォローから広瀬が入れたボールにエヴェラウドが合わせ、チョン・ソンリョンが阻んだもののこぼれ球を押し込まれて決められました。

厳しい戦いを勝ち切ることができずに終わったゲームではありますが、連敗は回避し、勝ち点1を獲得しました。また、大島僚太、長谷川竜也がともにベンチ入りを果たすだけでなくピッチに立ってプレーすることができました。優勝に向かって、さらには初の天皇杯制覇に向かって頼もしい2人が帰ってきたのです。

札幌戦、そしてこの日の鹿島戦と運動量豊富なタフな相手に苦戦しており、ミッドウィークの横浜F・マリノス戦も苦しめられる可能性が低くありません。そこでどれほどの力を見せられるかが大いに問われることとなります。