複数のポジションを任せられる車屋紳太郎と守田英正を先発起用したのは、守備的な部分での貢献を期待してのものと思われましたが、先制点となる失点はその2人のいるエリアを攻略されました。

車屋が出ていったために空いた川崎の左サイドからマイナスのクロスを入れられ、そのボールを守田が十分に触り切れずにいると、マルコス・ジュニオールにコースを突いたシュートを打たれてしまいます。

失点後、飲水タイムまでは横浜FMに完全に主導権を握られます。厳しいプレッシャーにさらされ、普段通りのリズムでボールを回せず、逆に守備時には相手の速いテンポのパス回しに翻弄されました。

この試合、攻撃面で頼りにされていたのは三笘薫でした。大外で構えてボールを受け、幾度となくドリブルで仕掛けようとします。ただ、対峙する小池龍太との1対1を制することができません。

33分の三笘の同点弾は、小池が脇坂泰斗のパス出しをつぶしに寄せていたため、チアゴ・マルチンスが戻って対応しに来ました。背番号18は冷静にチアゴ・マルチンスの股間を狙ってシュートを放ちます。

追い付いたことで川崎は平常運転に戻ります。慌てる素振りはなく、また横浜FMも立ち上がりほどのハイペースではなくなり、アウェイチームは冷静な戦いを続けました。

ハーフタイム明けに鬼木達監督は、旗手怜央と小林悠を投入。旗手を右ウイングに配し、そこにいた家長昭博を中盤に下げました。こうすることで3トップと家長によって横浜FMのビルドアップ阻害を図りました。実際、相手のミスを誘うことに成功します。

攻撃は自陣からテンポを速めて横浜FMの最終ラインの背後を突き、最後はGKとDFの間にボールを転がして2点を奪いました。後半開始からわずか5分間のできごとです。

早い段階での逆転成功が幸いし、その後は天候が味方しました。豪雨によりコンディションが悪化。ピッチの状態こそ保たれましたが、プレーしづらい状態になったのは間違いなく、両者ともそれまでほどのクオリティでのサッカーは難しくなりました。

そんな中で川崎は高い位置で人数をかけてスペースを消し、圧力をかけて奪うと、ピッチを広く使って相手選手のいないスペースにすかさずボールを出していきます。こうして横浜FMの選手を走らせて消耗させました。

三笘にハットトリックのチャンスが訪れたり、朴一圭があわやオウンゴールかという場面もありましたが、天候が悪化してからスコアは動きません。最終的にディフェンディングチャンピオンに内容でも圧倒しての逆転勝利となりました。