とにかく失点をしない。苦手なサイド攻撃を封じたい――。狙いは様々あったでしょうが、センターバックタイプを最終ラインに4人並べて挑んだアメリカ戦は、3失点に終わりました。

自分たちのいい部分を出すというより、守備的な意識を強めたメンバー構成がチームの勢いを削いでしまいました。前半は相手が飛ばしてきたこともあり、ミス絡みでの失点を重ねます。

先制弾となるミーガン・ラピノのフリーキックを与えた原因は、左サイドハーフで起用された田中美南が自陣でのミスを挽回しようとして犯したファウルでした。

2失点目は山下杏也加が土光真代に向かって蹴ったボールが短く、ラピノにカットされたところから始まりました。ラピノはすばやくクリステン・プレスに預け、熊谷紗希と南萌華の間に立ったプレスは山下の頭上を越える軌道のシュートを放ちます。

南はサイドを走るトビン・ヒースが気になって詰めが甘くなり、ヒースを見るべき左サイドバックの三宅史織は中央への絞りが遅れてしまいました。ミスがきっかけのため難しい場面でしたが、もう一歩切り替えが早ければ、ブロックしきれたかもしれません。

同じような過ちを繰り返しつつも、選手は反撃の意思を見せました。後半頭から岩渕真奈が入るとそれが形に現れ始め、岩渕に引っ張られるように籾木結花もドリブルで密集に突っ込むようになり、杉田妃和はボール奪取能力の高さ、攻撃参加の意欲を見せだします。加えて最終ラインの熊谷から縦につけるボールもつながるようになりました。

前の2試合よりも相手ペナルティエリアへの進入が増え、アメリカの運動量が落ちて後ろ向きに走るようになったのも手伝って、流れの中から岩渕のゴールが生まれました。

その後、コーナーキックから失点はしたものの、大会初戦からこのサッカーができていれば、失いかけていたなでしこらしさを取り戻し、全敗という最悪の結果は避けられたかもしれません。

結果的にスペインの圧力に屈して及び腰になったことで、すべてのリズムが崩れてしまいました。オリンピックが短期決戦であることを考えると、今回と同じようなミスはできません。

最後の45分にかすかな希望を見出した大会ではありましたが、欧米の強豪への苦手意識はやはり払拭しきれませんでした。