44分、清水梨紗の低く鋭いパスをダイレクトでループシュートにした岩渕真奈の判断、技術は見事でした。岩渕についていたアンドレア・ペレイラもローラ・ガジャルドも完全に裏をかかれました。劣勢に立たされる中での同点弾はチームを勇気づけるものとなります。

ただ、前回対戦と同様の狙いをもって戦うスペインを抑えることはできませんでした。日本のビルドアップにも容赦なく襲いかかり、即時奪回の意識が極めて高いことはわかっていたはずです。そうでなくても、この日ピッチでプレーしながら感じられたはず。それでもみすみす得点を許す形を繰り返してしまいました。

厳密に言えば、立ち上がりからスペインに比べてボールを持ったときの判断スピードに遅れがあり、どうにか前半を戦いながらその速さにアジャストしつつはありました。それをハーフタイム明けも続けられなかったことが結果的に大きな敗因となります。

交代枠が6人分あったことから高倉麻子監督が手当てを施し、最終ラインに宮川麻都、さらにはセンターバックに三宅史織を入れてもディフェンスは強化されませんでした。

脆弱なディフェンス陣を相手に2得点を奪った途中出場のルシア・ガルシアは、機敏なタイプのトップではありません。それでもアタッキングサードでのボールをめぐる競争においては爆発的なスプリントを見せました。彼女ほどの貪欲さが日本には足りませんでした。

攻撃面では岩渕のスーパーなプレー以外にチャンスがつくれなかったわけではありません。期待された田中美南にも味方がコースをつくる動きをしたことでシュートチャンスがめぐってきました。しかし、全体的には手詰まりな中でのミドルシュートが目立ち、セットプレーを除いてゴールの可能性の高いエリアまで進入してフィニッシュする形はほとんど見られませんでした。

また、なでしこジャパンが形として持っているサイドバックが絡んだ攻撃も、試合終盤になるまで披露できずにいました。前半に遠藤純が押し込まれた分、同じポジションを務めた宮川には期待がかかったはずですが、サイドを深くえぐるまでには至りません。

大半の時間、相手に思い通りのサッカーをさせてしまった日本。苦しいオリンピックイヤーの船出となりましたが、同じく初戦を落としたイングランドとの戦いでは頭と体をフル回転させて挑んでほしいものです。