福田晃斗を引きはがす酒井高徳の力強いドリブルや、トーマス・フェルマーレンの鋭いサイドチェンジをきっかけに後半も3点を奪った神戸でしたが、この日の勝利を大きく手繰り寄せたのは前半の緩急をつけたサッカーでした。

とりわけ前半30分台の神戸は完全にゲームをコントロールしていました。すでに3点リードしていることもあり、ミドルゾーン手前のあたりで軽いトレーニングでもしているかのようにゆったりとボールを回していました。

その中心にいたアンドレス・イニエスタが前半終了間際にドリブルをスタートさせた際、左太もも裏を負傷。3点目を奪った場面では視野の広さ、技術の高さをあらためて思い知らされる浮き球のワンツーからのサイドチェンジを見せ、例によって常にボールの預けどころになっていた背番号8が交代を余儀なくされたことで、リズムの変化は出にくくなりました。

さらに後半はホームの鳥栖が前半とは打って変わって高い位置からのプレッシャーをかけ出し、ビルドアップ時の余裕は奪われていきます。

それでもコーナーキックからの金井貢史の得点だけに抑えられたのは、この夏の補強で問題が山積みだった守備陣のてこ入れを行い、トルステン・フィンク監督が3バックを採用したことによってダンクレー、大崎玲央、さらにはその前のポジションを主戦場としていた山口蛍がディフェンスに振り回される場面が減ったことが大きく影響しています。

守備時には西大伍、酒井の両ウイングバックも下がるため、当然重心が低くはなりますが、そこから一気に前線に展開できるだけのプレーヤーを、そして古橋亨梧、ダビド・ビジャといった相手の最終ラインと勝負できるFWを有しているため、ディフェンシブにはなりにくくなっています。

ただ、再来週にインターナショナルマッチウィークを挟むとはいえ、イニエスタが数週間離脱することは避けられないため、不在の間に結果を残せるか否かがJ1残留のためには重要となります。

一方、大敗した鳥栖はこの試合でフェルナンド・トーレスが現役を引退しました。偉大なストライカーの最後としては悔しい結果に終わりましたが、リバプール時代の盟友、スティーブン・ジェラードのビデオメッセージから始まった引退セレモニーはスタジアムの雰囲気を含めて温かく、さわやかな空気に包まれていました。