悪いことというのは続くもので、ここまで安定したプレーで評価の高かったジェジエウが過信したかのようなヒールパスを奪われてピンチを招き、田中碧、谷口彰悟は危険な位置でパスをカットされたりと、川崎らしからぬプレーでリズムを崩していきました。

吉田豊のミドルをバックヘッドですらした和泉竜司の先制点の場面は、コーナーキックのセカンドボールの対応が求められるところで、オフサイドを獲得することを優先して、ゴールエリア手前、中央に立つ和泉を完全にフリーにしていました。当初、マークについていたのは登里享平ですが、放してしまいます。

ガブリエル・シャビエルの鮮やかなターンでジェジエウがかわされ、和泉に追加点を許した際にはその前の中谷進之介の上がりを、なんとなく間合いを詰められずに阻止できませんでした。

3失点目に至っては、右サイドを崩されたあとに吉田豊にボックスの中に入られた時点で勝負ありでした。

スタートから試合の流れをつかめなかったのは、もともとスタメンに名を連ねていた大島僚太がアクシデントで試合に出られなかったことも一因です。しかも大島が復帰するまで主にそのポジションを務めていた下田北斗はベンチにもいなかったため、急遽、山村和也が出場することとなります。

その山村は見せ場をつくれないまま、レアンドロ・ダミアンと交代しました。ここで小林悠との2トップに変更して、中盤でのハイボールの競り合いに小林が下りられるようになり、一時的に厚みをつくることはできました。

ただ、センターハーフに下がった中村憲剛の状態が思わしくなく、やむを得ず家長昭博と代える運びとなりました。家長は攻撃に重きを置くタイプなので、中盤のバランスは乱れますが、その時点で3点のビハインドを背負っていたために鬼木達監督はこの決断をしました。

しかし、その9分後、谷口が2枚目のイエローカードをもらい、退場となってしまいます。すでに交代枠を使い切っていたため、車屋紳太郎をセンターバックに置き、後半から入っていた齋藤学に右サイドバックを任せて急造の4バックを形成します。

攻めにくい、苦しい状況に陥ると、さらにジェジエウが警告を受け、次節出場停止となってしまいました。

立て直しの効かない、なかば崩壊したといってもいい川崎を前に、名古屋は「止める、蹴る」を繰り返し、10戦勝利がないチームには見えない冷静さでゲームをまとめに入りました。1人少ない川崎はほとんどなにもできないで最後の笛を聞くしかありませんでした。

これで3試合勝ちなしと停滞してしまったリーグ王者。次はレギュラーのセンターバックを両方欠いてのベガルタ仙台戦となります。この正念場を乗り切れるか否かが、3連覇を果たせるかどうかを左右することでしょう。