敵地での多摩川クラシコに快勝して意気上がる川崎が、シーズン前の調整段階にあるチェルシーと対戦。互いのゲームに対する温度差もありながら、日産スタジアムでの難しく膠着した試合を動かして勝利したのは誠実に戦い続けたJ1王者でした。

鬼木達監督は2列目の変更を一部にとどめ、日曜日に戦列復帰後初のフル出場を果たした中村憲剛をベンチに置き、その日は結果的に温存する格好となった家長昭博をトップ下に据えました。

サッリボールと別れを告げ、クラブのレジェンドであるフランク・ランパード監督が就任したチェルシーは、ジョルジーニョをアンカーに置く形ではなく、マテオ・コバチッチとともに横に並べる4-2-3-1を選択。開始15分ほどは観客がどよめくダビド・ルイスのサイドチェンジもありましたが、基本的には川崎にボールを持たせて様子を見ていました。

ミシー・バチュアイの枠外シュートをきっかけにして、ヨーロッパリーグ王者が牙をむき始めます。

川崎は人数をかけてのディフェンスを余儀なくされ、中盤は下田北斗、田中碧がせき止め役となり、その後方の最終ラインは普段のリーグ戦であれば1人で守れるところも谷口彰悟、ジェジエウの2人でようやく押さえ込む場面がしばしば見られました。

押し込まれる展開になると、必然的に攻撃においても自陣のミドルゾーンを突破するのに苦労します。体格のすぐれたチェルシーの個々の選手がカバーする範囲が広く、パスを出すのに迷ってしまえばすかさず詰められ、カウンターの場面もテンポがわずかに遅れただけでチャンスになりません。

試合はスコアレスで折り返し、互いに5人を交代させた後半はゴール前での勝負にかける、シュート意識の高いレアンドロ・ダミアンの登場で川崎の得点の可能性が高まります。

一方、チェルシーも代わって入ったオリビエ・ジルーが決定機に絡み、ワールドカップでも見せた絶妙なポストプレーを経てケネディのシュートにつなげ、直接フリーキックでは強烈な弾道で枠をとらえました。そのいずれも後半20分にチョン・ソンリョンと交代した新井章太が好セーブで阻みました。

湿気がまとわりつく7月のナイトゲームはこのままドローに終わりそうなムードになりかけますが、ピッチに出るためにベンチに走る中村憲剛の姿が見えると場内の雰囲気が変わります。

川崎サポーターが待ちわびたバンディエラは、歓声を浴びただけでは終わりません。大方交代は終わっており、時間も後半38分を迎えていましたが、守田英正が左サイドバックにまわって、空いたセンターハーフのポジションを任されたその時点からがスタートです。

中村はヴィッセル神戸でアンドレス・イニエスタが見せるような、飛んでも取れない高さを意識したパスを繰り出し、チャンスの起点となります。コーナーキックの獲得に結び付け、山村和也の鋭いグラウンダーのシュートがウィルフレード・カバジェロを襲うなどしてセットプレーが続いた後半42分、中村はボックスの中に走り込んで一瞬フリーになり、こぼれ球をやわらかく、高いクロスでファーサイドに送ります。

クロスを察知したダビド・ルイスも対応が間に合わず、ボールは待ち構えていたレアンドロ・ダミアンの頭に合いました。背番号9を見ていたエメルソンはクロスが自分のところに来るとは予想できていませんでした。ただ見送るだけとなり、川崎の決勝点となります。

チェルシーはジルー以外ではチームで最後にピッチを退いたケネディ、そして後半から入ったロス・バークリーの個の奮闘は見られました。その一方で新加入のクリスチャン・プリシッチはチームメイトとの連携がまだ確立されておらず、結果的には強烈なウイングの不在が大きく響いて、川崎のサイドを翻弄するには至りませんでした。

逆に川崎はこの興行にも勝って、いい流れを持続させたまま次週の大分トリニータ戦に臨むことができます。