その瞬間をわかっていたかのようにペナルティエリアの中に入ってきました。

ほとんどの時間、センターハーフとしてハーフウェイライン付近を主戦場にボールを四方に散らす役割を担っていて、時折山口蛍と左右のポジションを入れ替える程度でしたが、後半の立ち上がりはじわりじわりとポジションを上げ、ボールを受けると深い位置でドリブルを仕掛けます。

このとき上げたクロスは活きなかったものの、セカンドボールが西大伍にわたり、今度は西からクロスが上がります。中央の選手には合わず、流れた先にフリーのアンドレス・イニエスタがいました。ゴールへの道筋を見つけた背番号8はシュートを叩き込みます。

約1ヵ月ぶりのピッチとなったイニエスタ。この日はスタメン出場に耐えうるだけのコンディションが整っていたようで、存在感は頭抜けていました。的確なポジションから的確なパスを出し、ときには相手を巧みなコントロールでいなします。

味方選手もイニエスタを常に意識した状態でプレーしており、誰が神戸の中心なのかは明らかでした。ただ、スタートポジションが低いので東京もなかなかつぶしには行けません。

とりわけ前半はトルステン・フィンク監督に代わった神戸の出方をうかがうべく、東京が得意とする守備からのカウンターを軸に戦っていたこともイニエスタに自由を与える要因となりました。とはいえ、それを継続したのは実際にカウンターを次々と発動させる機会があり、得点の可能性は東京の方が高い45分だったからでもあります。

そのいい流れが頭に強く意識されていたがゆえに、失点を喫してしまいました。

先制されてからは首位を走る東京が前に出てくるようになり、負けが込んでいる神戸はどこか守り慣れていないため劣勢に立たされます。キム・スンギュのミスであわやというピンチもありました。

それでもダンクレーが出場停止で不在の中、体を張って守り抜き、ポストにも救われます。後半アディショナルタイムに入ってからは、フィンク監督がイニエスタを下げて渡部博文を投入。さらに守備を固めて5分の追加時間を乗り切りました。

タイムアップと同時に神戸の選手たちは優勝したとまでは言わないものの、一発勝負のトーナメントに勝ったかのように喜びを爆発させます。すでに泥沼の連敗街道からは抜け出していましたが、新しい指揮官のもとで苦しい中を勝ち切った充実感が表れていました。

東京は最後のところで決定打を欠き、シーズン2敗目をホームで喫しました。惜しまれるのは永井謙佑がプレーできるコンディションであれば、ディエゴ・オリヴェイラとのコンビで両サイドバックが上がりがちな相手の裏を突いて、早いうちに仕留められたかもしれないということです。

またチームを牽引していた久保建英がすでに東京の所属選手ではなくなっており、その穴埋めをチームとしてどうやっていくのかも悲願のリーグ制覇のために解決すべき問題として浮上した試合となりました。