終わりよければすべてよし、ではないですが、少なくともトロフィーを掲げて喜べる状況ができれば慰めにはなったはずです。しかし、バルセロナはバレンシアの前に屈し、5連覇達成はなりませんでした。

バレンシアの戦い方ははっきりしていました。ライン間を圧縮してブロックを固め、ルイス・スアレス不在の中、中央に構えるリオネル・メッシでさえ容易には突破できない守備網を構築。忍耐強く守ったあとでカウンターを発動させて仕留める、というものでした。

彼らを勢いづけたのは序盤の決定機でした。クレマン・ラングレがロドリゴ・モレノへのラストパスかというようなミスを犯し、フリーでボールを受けたロドリゴはヤスパー・シレッセンをかわしてフィニッシュ。ここはジェラール・ピケがゴールライン手前でクリアに成功しますが、バレンシアにとっては手ごたえを感じられたはずです。

縦に、そして横にとバルサの選手を揺さぶって生まれた前半22分のケビン・ガメイロの先制点、そしてカルロス・ソレールがジョルディ・アルバとの競争に勝ってクロスを入れ、ロドリゴが押し込んだ追加点。どちらも気持ちのいい鮮やかな攻撃でした。

追い込まれたバルセロナは相手に制限されている影響もあって前線の動きが少なく、イバン・ラキティッチとメッシがゴールを狙うも決定打にはなりません。

エルネスト・バルベルデ監督が闘える男、アルトゥーロ・ビダル、そしてマウコムを同時に投入してからの後半は、メッシが中央のポジションにこだわらなくてもよくなり、ボールを動かすテンポも前半にくらべると改善されて攻撃が活性化します。

後半18分、ダニエル・パレホが直接フリーキックで軸足を滑らせた際に負傷。メッシを抑えていたキャプテンがピッチを去らなければならなくなり、ジョフレイ・コンドグビアに代わると抑制が効かなくなり、メッシの活動量が上がります。

その流れでマウコムにキッカーを任せたコーナーキックにラングレが競り勝ち、ジャウメ・ドメネクが防いだボールをメッシが押し込んで1点差に詰め寄りました。残りはまだ15分少々ありました。

そこからクーリングブレイクを挟んで5分が経過したころになるとピケが最前線に上がります。パワープレーも辞さない格好で、ペナルティエリアでクロスを待ち構えるバルサの選手の数は次第に増えていきました。

ただ、決定的なチャンスをつくったのはほぼ守備を捨てたディフェンディングチャンピオンではなく、バレンシアの方でした。ゴンサロ・ゲデスには広大なスペースに二度の決定機が与えられ、シュートにまで至ったもののボールはゴールの枠をとらえきれません。

とどめを刺すことはできなかったものの、長身のムクタル・ディアカビを入れて5バックにしたバレンシアが逃げ切りに成功。バルセロナからタイトルを奪い取りました。

バルサは後半に若干持ち直したとはいえ、フィリペ・コウチーニョをはじめ全般的に攻撃の歯切れが悪く、後方支援が少なくメッシへの依存度が非常に高いまま時間が流れていきました。

UEFAチャンピオンズリーグのリバプール戦での屈辱的な逆転負けをきっかけとした悪い流れを引きずったままオフに入るリーグ王者は、心機一転のための人事異動が避けられない状況です。