開幕戦となった多摩川クラシコは、互いに相手のミスをつき切れないままスコアレスドローに終わりました。

ホームの川崎は立ち上がりこそ東京の前線からのプレスに苦しめられましたが、守田英正が最終ラインまで落ちてビルドアップをするなどして次第にリズムをつかみ、相手をギリギリまで引きつけながらパスを回していきます。我慢を続けたことで次第に東京の守備位置は低くなりました。

4-4-2の密集した守備網を敷かれても大島僚太はそれを貫く精度の高い縦パスを通し続け、ゴールに迫るもあと一歩が足りません。スーパーカップでその実力を見せたレアンドロ・ダミアンは警戒され、ポストプレー以外ではあまり見せ場はありませんでした。加えて周囲との連携がまだ十分には確立されていないことがあらわになり、後半28分に齋藤学と交代します。

川崎は守田や谷口彰悟らの自陣でのミス絡みで東京にチャンスを献上。カウンターを食らう場面が前半だけでも数回ありました。そしてハーフタイムまで残り10分を切ってからは久保建英の躍動を許します。久保にはポストを直撃する強烈なフリーキックを放たれました。ただ17歳の若武者はそれ以降輝きを見せる機会がほとんどありませんでした。

久保と反対のサイド、東慶悟、小川諒也と対峙したマギーニョは、先週の浦和レッズ戦ほど目立ったボールロストはなかったとはいえ、小林悠がカバーに走ることも多いほど攻守の上下動とその動き方に物足りなさがありました。その結果、後半10分の段階で馬渡和彰と代わることになります。Jリーグの理解度では上回るであろう右サイドバックがピッチに立ったことで川崎の不安要素は減りました。

橋本拳人の不用意すぎるバックパスを中村憲剛が難なく懐に収めたシーンは、大島、中村、小林と中央をグラウンダーのボールで攻略して、小林が林彰洋の股間を狙った攻撃以上に絶好の、この試合最大のチャンスでした。しかし林に阻まれてゴールには至りません。

鬼木達監督が3人の交代枠を使い切った終盤は、空中戦で勝負できるレアンドロ・ダミアンがいないなかでサイドからの展開が多くなって攻撃に迫力を欠いた川崎。連携で完全に崩されたあとの田川亨介のシュートミス、そして危険なファウルを二度犯した奈良竜樹が退場にならなかったことがチームにとっては救いでした。奈良は背後から東京サポーターのブーイングを浴びながらもプレーすることが許されました。

開幕戦ということを考えても90分フルで高いテンションのまま戦うことはまだ難しく、気分よく白星スタートで三連覇に向けて発進することはできませんでした。