このラウンドで唯一、ロシアでのワールドカップに出場したチーム同士の対戦となった屈指の好カードは、日本が前半20分に挙げた冨安健洋の虎の子の1点を守り切って準々決勝進出を果たしました。

しっかりとパスをつないで攻めてくるサウジアラビアに対し、それを受ける形で戦った日本。自陣深い位置のサイドでの長友佑都の空振りや原口元気の軽率な守備といった、ワールドカップを彷彿とさせるようなピンチを招きかけるシーンはあったものの失点することはなく、逆に柴崎岳のコーナーキックを冨安が合わせ、最初のシュートで1点をもぎ取りました。

このときモハメド・アルファティルのマークがあまりにも緩く、冨安はやすやすと飛ぶことができました。テクニカルエリアにいたサウジアラビアのフアン・アントニオ・ピッツィ監督は、思わず手に持っていたボトルをベンチに投げつけます。

若手のゴールによって士気が上がったか、ここから日本は守備時のプレッシャーを強めます。武藤嘉紀、南野拓実が高い位置で相手のビルドアップの阻害を試み、遠藤航がオマーン戦同様がむしゃらに中盤で危険の芽を摘みました。

ボールを保持するサウジアラビアも前線の選手がビルドアップを塞ぎに来るため、武器にしている最終ラインからの大きなサイドチェンジがほとんどできず、権田修一までボールが下がったときの正確なロングキックに頼らざるを得なくなり、それに対して武藤がサイドに流れるなどして競り合う形をとりました。

負ければ終わりのノックアウトラウンドゆえ、後半になると相手はさらに圧力をかけます。サイドからのクロスも増え、日本の選手がクリアしてはセカンドボールを拾われる苦しい場面が多くなりました。

幸いなことに危険なエリアでのフィニッシュの精度が低く、サレム・アルドサリらのシュートはことごとく枠の外に飛んでいきました。サウジアラビアに決定力の高さがあれば、逃げ切れたかどうかはわかりません。

一方、日本は相手最終ラインの背後を狙ってピッチを横断する原口元気の絶妙なパスを受けた武藤が、南野と堂安律が並走する中で強引にシュートを選択。コーナーキックに逃れられてしまいました。それ以外では肩でのトラップがハンドと判定された南野のプレーが後半の数少ないチャンスになりかけたシーンでした。

終盤は吉田麻也を中心に守備陣が人数をそろえてペナルティボックスで構えるものの、エリア外の選手をフリーにしてしまい、より一層集中砲火を浴びる格好となりました。それでも最後まで体を張ることを厭わずにやりきり、途中出場の伊東純也もみずからのスピードを生かしてチームを助けます。

こうして次のベトナム戦に臨むことができますが、前半39分に武藤が相手陣内のそれほど無理をしなくていいエリアでファウルを犯し、累積警告によって次は出場停止となり、頼みの大迫勇也はまだ試合中のウォーミングアップができないという状況。さらにこの日ベンチ外だった青山敏弘がチームから離脱と台所事情は苦しさを増しました。

残り3試合を乗り切るにはまさしくチームの総力を挙げなければならず、日替わりのヒーローの登場が欠かせなくなってきます。