前半は立ち上がりこそ引かない姿勢でライン間を緊密にして戦っていた長崎の陣形を崩せずに苦労しましたが、前半10分あたりから川崎が完全に流れをつかみ、試合を優勢に進めました。

チームを上向かせるのに大きく貢献したのがセンターハーフでプレーした中村憲剛でした。

前半14分に枠をとらえた鋭いミドルシュートを放ちましたが、基本的にはポジションを低めにとって、ビルドアップの時には奈良竜樹の右に立ったり、両センターバックの間に立ったりしてそこからボールを動かし、センターサークル付近まで運んだ際には大きく左右に散らし、時には縦一本でハーフスペースに位置どることの多かった登里享平や果敢に攻め上がるエウシーニョを走らせたりしました。

長崎が次第に前線からのプレッシャーを弱めてブロックを敷いたことから、中村憲剛がより自由にゲームをコントロールできるようになり、また大島僚太さえも中村憲剛とともにセンターバックの間に立つ場面が出てきて、そこからサイドを使った攻撃を中心に長崎陣内に侵入しました。

そして家長昭博の右足のクロスが相手に当たって得たコーナーキックを先制点に結び付けます。中村憲剛の蹴ったボールを小林悠が流して最後は知念慶が押し込みました。前半35分のことでした。

直後は長崎が一時的に前に出てきたもののすぐに川崎が押し込む流れに戻り、前半41分、中村憲剛のスルーパスを登里が受け、丁寧なインサイドキックでマイナスのボールを入れます。中央に走り込んだ家長のシュートは徳重健太に阻まれますが、詰めていた小林が倒れている徳重の体を越えるやわらかい浮き球を繰り出して2点目を奪いました。

ハーフタイム間際にはボールを運ぶ鈴木武蔵を取り囲んでパスコースを完全に切って守り抜き、申し分ない出来で45分を終えました。

さすがに中村憲剛を自由にさせたままではよくないと判断した高木琢也監督は、後半頭から投入したファンマにゴール前での仕事のほかに中村憲剛をケアするタスクを課しました。

中村憲剛はポジションを下げないでファンマを外す動きをしてはいましたが、これによって川崎の攻撃は若干停滞しました。徐々に長崎がセットプレーのチャンスを得る機会が増えていきます。

川崎がそこをしっかり凌ぐと、長崎は攻撃時に選手の足が止まりがちになります。川崎のように中盤でボールを保持している時に前線に猛然と駆け上がる選手がいません。そんな相手の気落ちを悟ってか、知念と小林の2トップは労を惜しまないディフェンスで流れを引き戻そうとし、車屋紳太郎はサイドで鈴木武蔵との1対1を粘り強く制しました。

その後、長崎はサイドからの飯尾竜太朗、翁長聖のクロスを軸に再び攻めてきましたが、得点を奪えないまま時間は流れます。

長崎にとっては不運なことに前線のターゲットの一角であった鈴木武蔵がエウシーニョとの1対1で負傷。後半33分にピッチを去らなければならなくなりました。代わりにとファンマがポジションを上げてアンカーの位置に出てきて4-3-3気味の形になります。

長崎の後方の人数が減ると、川崎が決定機をつくりだしました。後半39分、阿部浩之のクロスを鈴木雄斗がヘッド。後半41分、中村憲剛のスルーパスを小林がキープして下げ、最後は家長がシュート。いずれも徳重に阻止されますが、とどめを刺すまであと一歩のところまで迫ります。

アディショナルタイムに入ると無理をしなくなった川崎に対して長崎が前線への放り込みを増やします。その結果、後半48分に翁長のロングボールをファンマが収めて一矢報いました。

しかし残された時間はほとんどなく、川崎が逃げ切ります。試合開始前にトップを走っていたサンフレッチェ広島がガンバ大阪に敗れたため、川崎は広島と勝ち点で並び、得失点差で首位に立ちました。涙の初優勝に続く連覇への道が開けてきました。