およそ1ヵ月半前、大勢の観客を集めたホーム・味の素スタジアムでアンドレス・イニエスタのいないヴィッセル神戸を下して以来、勝ち点3から見放されている東京。この日も前半は低調で先制を許す展開となりましたが、後半持ち直して首位の広島相手に勝ち点1を持ち帰ることができました。

低調とはいえ立ち上がりは東京も2トップで決定機をつくっていました。前半5分、ディエゴ・オリヴェイラが右サイドをドリブルで突き進んでクロスを入れ、リンスが合わせるも惜しくもポストの外側を叩きます。

さらに前半14分、ディエゴ・オリヴェイラの落としをリンスがミドルレンジからシュート。今度は林卓人に防がれました。

こうしたチャンスを生かせないでいると、前半9分に食らった広島のショートカウンターの心理的影響が大きかったのか、全体が引き気味になり、ボールの取りどころもはっきりしなくなりました。

重心が下がる悪い流れの中で遠目の位置からのフリーキックを与えてしまい、前半18分、キッカーの柴崎晃誠が青山敏弘にボールを下げ、青山がゴール前に放り込み混戦をつくりだします。最終的には高萩洋次郎のクリアがパトリックに当たってゴールに入ってしまいました。

失点により目が覚めた東京はここからプレスを強くかけだします。ただリードした広島は堅実に守備網を形成。圧縮されたライン間を攻略するのは難しくなりました。

状況打開に苦労しだすと今度は攻守の切り替えが遅くなり、それを広島に見透かされて激しく当たられてしまい、東京は前半のほとんどの時間を相手の掌の上で転がされたまま終えることとなりました。

しかし東京はロッカールームで切り替えに成功したのか、後半4分、高萩、リンス、ディエゴ・オリヴェイラとつなぎ、高萩や田邉草民が相手DFを引き付ける中でやや遅れてボックスに入ってきたリンスがディエゴ・オリヴェイラのパスを受けて同点弾を叩き込みます。和田拓也が絞ってタックルで阻止しようと飛び込みましたが及びません。前線の選手が連動した見事な崩しでした。

同点に追い付いて息を吹き返した東京。とりわけ東慶悟が意欲的にプレーするようになり、ディエゴ・オリヴェイラや高萩からのパスを受けるべく裏のスペースに走る場面が増え、ときには全体の押し上げを促すなどチームを引っ張る働きを見せます。

それに触発されるようにフィールドプレーヤー全員の動きも活性化。リンスは後半26分に足をつるまで走り切り、東京が得意とする自身の持ち場を離れて別のレーンに侵入しプレーに関与することも多くなりました。

リンスに代わってピッチに入った永井謙佑は、持ち前のスピードを生かして最終ラインの背後を狙って走ります。後半45分には左サイドで永井が相手を振り切りクロスを入れ、DFに当たったボールを高萩がシュート。後半48分には高萩が青山からボールを奪ってスペースへパスを繰り出し永井を走らせましたが、飛び出してきた林卓人に阻まれて得点には至りません。

タイムアップが近づくにつれて広島のシュートがなくなる一方、東京は再三裏を突いた攻撃を継続できただけに、逆転勝ちによる久々の勝ち点3奪取の可能性もありました。しかし敵地での首位チームとの戦いで同点に追い付いたことは今後につながるはずです。