どこかで緊張の糸が切れてしまったら、大量失点を食らって惨敗していたかもしれません。それほどまでに中国の激しい攻撃を受けながら、終了間際に値千金のゴールを奪って日本は金メダルを獲得しました。
決勝トーナメントに入って対戦した北朝鮮、韓国同様、いやそれ以上に中国は前線からプレッシャーをかけてきました。ボランチへのパスコースは塞がれ、日本が最終ラインでボールを回す時間がいたずらに長くなるばかりで、ならばと清水梨紗にボールを渡せばすぐさまサイドハーフの古雅沙が襲いかかりました。
脅威にさらされた場面は一度だけではありません。前半13分には有吉佐織がボックス内でボールを奪われ、そのままシュートに持っていかれましたが、鮫島彩がじっくりと相手を見て立ちはだかったことで防ぎます。
4分後には王珊珊が切り返してマイナスに出したボールを、中央に絞った古雅沙がシュート。これは山下杏也加がこぼすことなく見事にキャッチしました。
劣勢の日本はシュートはおろか相手のアタッキングサードに侵入することもままならず、人数をかけた激しい寄せをかいくぐるために中盤で少ないタッチで回そうとしてもつなぎ切れず簡単に中国ボールになってしまいました。
中国はキック力、速さ、高さの面で日本よりすぐれていて、日本は極力ラインを高く保つことでオフサイドをとってはいましたが、全体としてはなかなか重心を前に上げられません。
エンドが変わっても状況は変わらず、依然として中国ペースで試合は進みます。後半8分には鮫島の味方へのパスを狙ったようにも見えるクリアボールを王霜に拾われてスルーパスを出され、王珊珊に抜け出されるも三宅史織と山下がペナルティエリアという極めて神経を使う場所で集中した対応をしてシュートを打たせませんでした。
後ろの選手がしっかりとした守備をしているとはいえ、悪い流れには変わりはなく、高倉麻子監督は籾木結花に代えて、前線でターゲットになれる菅澤優衣香を投入します。菅澤がいることで中盤からボールが出しやすくなり、また守備面においても効果が表れ、プレスをかける位置が高くなりました。
シュート数こそ増えないものの日本が少しずつ流れをつかみかける中、序盤から飛ばしていた中国は徐々に失速します。
それでもピンチは訪れました。後半31分、王珊珊、趙容、古雅沙とつながりゴールを狙われたのです。しかしここも山下がすばらしい反応をして逃れます。
延長も見えてきた残り10分を切ったあたりからは、日本はショートパスで崩す形よりも最終ラインからロングボールを蹴って、中盤を省略する攻撃を多用し始めました。この縦への意識が実を結んだのが後半45分のことです。
清水が自陣から前方に大きく蹴ると、菅澤ではなく岩渕真奈が抜群のポストプレーを披露してボールを懐に収め、サイドを上がる中島依美にタイミングを計ってパスを出します。中島は深い位置までえぐることなく早めにクロスを入れ、そのボールに菅澤が泥臭く飛び込んでゴールネットを揺らしました。
この1点を守り切ったなでしこジャパンは、8年ぶりにアジア大会を制しました。
海外組がいない、加えて東京五輪を見据えてか招集したのは18人のみ――と決して万全の状態で臨んだ大会ではありませんでしたが、どんなに追い詰められても最後までしぶとく戦うなでしこのDNAを受け継いだ選手達はたくましく5試合を勝ち抜きました。
決勝トーナメントに入って対戦した北朝鮮、韓国同様、いやそれ以上に中国は前線からプレッシャーをかけてきました。ボランチへのパスコースは塞がれ、日本が最終ラインでボールを回す時間がいたずらに長くなるばかりで、ならばと清水梨紗にボールを渡せばすぐさまサイドハーフの古雅沙が襲いかかりました。
脅威にさらされた場面は一度だけではありません。前半13分には有吉佐織がボックス内でボールを奪われ、そのままシュートに持っていかれましたが、鮫島彩がじっくりと相手を見て立ちはだかったことで防ぎます。
4分後には王珊珊が切り返してマイナスに出したボールを、中央に絞った古雅沙がシュート。これは山下杏也加がこぼすことなく見事にキャッチしました。
劣勢の日本はシュートはおろか相手のアタッキングサードに侵入することもままならず、人数をかけた激しい寄せをかいくぐるために中盤で少ないタッチで回そうとしてもつなぎ切れず簡単に中国ボールになってしまいました。
中国はキック力、速さ、高さの面で日本よりすぐれていて、日本は極力ラインを高く保つことでオフサイドをとってはいましたが、全体としてはなかなか重心を前に上げられません。
エンドが変わっても状況は変わらず、依然として中国ペースで試合は進みます。後半8分には鮫島の味方へのパスを狙ったようにも見えるクリアボールを王霜に拾われてスルーパスを出され、王珊珊に抜け出されるも三宅史織と山下がペナルティエリアという極めて神経を使う場所で集中した対応をしてシュートを打たせませんでした。
後ろの選手がしっかりとした守備をしているとはいえ、悪い流れには変わりはなく、高倉麻子監督は籾木結花に代えて、前線でターゲットになれる菅澤優衣香を投入します。菅澤がいることで中盤からボールが出しやすくなり、また守備面においても効果が表れ、プレスをかける位置が高くなりました。
シュート数こそ増えないものの日本が少しずつ流れをつかみかける中、序盤から飛ばしていた中国は徐々に失速します。
それでもピンチは訪れました。後半31分、王珊珊、趙容、古雅沙とつながりゴールを狙われたのです。しかしここも山下がすばらしい反応をして逃れます。
延長も見えてきた残り10分を切ったあたりからは、日本はショートパスで崩す形よりも最終ラインからロングボールを蹴って、中盤を省略する攻撃を多用し始めました。この縦への意識が実を結んだのが後半45分のことです。
清水が自陣から前方に大きく蹴ると、菅澤ではなく岩渕真奈が抜群のポストプレーを披露してボールを懐に収め、サイドを上がる中島依美にタイミングを計ってパスを出します。中島は深い位置までえぐることなく早めにクロスを入れ、そのボールに菅澤が泥臭く飛び込んでゴールネットを揺らしました。
この1点を守り切ったなでしこジャパンは、8年ぶりにアジア大会を制しました。
海外組がいない、加えて東京五輪を見据えてか招集したのは18人のみ――と決して万全の状態で臨んだ大会ではありませんでしたが、どんなに追い詰められても最後までしぶとく戦うなでしこのDNAを受け継いだ選手達はたくましく5試合を勝ち抜きました。