指揮官の判断は失敗していれば無謀と言われても仕方のないものでした。

そのひとつが先発の6人入れ替え。初戦、第2戦とまったく同じメンバーで戦ったことによる疲労の蓄積やピッチ上の気温の高さが考慮されての決断でしょうが、親善試合と違って3枚しか交代カードがないにもかかわらず大幅な変更をしたのは、まだ決勝トーナメント進出が決まっていない日本にとっては非常にリスキーな選択でした。

実際、起用に応えたとは言いがたい選手もいて、たとえばワールドカップデビューを果たした武藤嘉紀はゴール前でボールを受けながらなかなかシュートを打たずにドリブルを始めてチャンスをつぶす場面が多く、山口蛍は自陣で不用意なファウルを犯してフリーキックを与えてしまい、結果としてヤン・ベドナレクの先制点につながってしまいました。

とはいえ敗退が決まっているポーランドのモチベーションが高くなく、インテンシティの低いゲームとなったため、時折見せるカウンターを除けば比較的余裕をもってプレーできました。それだけにピッチに立った選手には冷徹な判断が必要とされましたが、前半12分から16分にかけての3本のシュートを除けばあまり効果的な戦いができたとは言えません。

そして無謀と思われる判断の極めつけは終盤の時間の使い方です。同時キックオフのセネガル対コロンビアでコロンビアが後半29分に1点リードしたことを受けて、後半37分の長谷部誠投入とともに攻めを放棄した後方でのボール回しに移行しました。

こうした戦い方をすること自体はケースバイケースで許されるものながら、今回はフェアプレーポイントというほんのわずかな差でしか日本はセネガルに対して優位に立っていない状況で、もしコロンビアが追加点を奪ってしまえば一気に敗退へと変わってしまう危険なものでした。すでに勝ち点4を持っていただけに、その場合に日本が受けるダメージは計り知れず、次のチャンスは早くても4年先まで巡ってきません。

しかも大迫勇也と乾貴士を送り込み、長谷部が入ったことで柴崎岳の守備の負担が軽減されていたとはいえ、この時点での日本はもし得点が必要なシチュエーションに変わった際に即座に対応しきれるようなチーム状態ではありませんでした。

幸いもう1試合のスコアはそれ以上動かず、勝ち点3を確実に獲得して帰国できるポーランドも日本に付き合って執拗に追い回すことをしなかったため、ギリギリのところでノックアウトフェーズに進出することができました。

結果的に主力の多くをフル出場させることなく温存することに成功。またここ2試合のパフォーマンスが安定していなかったベテランの川島永嗣が調子を取り戻すことができました。

川島は前半32分のカミル・グロシツキのシュートをゴールラインを完全に割る前に防ぎ、後半36分の槙野智章のあわやオウンゴールかというボールも止めました。

ベンチワークを含めた戦い方に疑問を残し、見どころの少ない試合を経たからには次のベルギー戦で死力を尽くし、前線に世界トップレベルのタレントを擁する相手を下して、日本サッカー念願の準々決勝進出を果たすしかありません。