当初、持ち味を存分に発揮していたのは東京の方でした。プレッシャーが単発で試合の入り方がよくなかった名古屋に対して攻勢を仕掛け、ゲームを支配。特に左サイドの太田宏介を使っていきます。

太田は単純なクロス放り込み一辺倒ではなく、クロスと見せかけて突破を図ったり、低いクロスを入れたりするなど工夫を凝らしてチャンスをつくろうとします。

先制点はその太田のフリーキックの際、ペナルティエリア内でファウルがあったとして得られたPKによってもたらされました。ディエゴ・オリヴェイラが時間をかけた助走から落ち着いてゴールに沈めます。

続いて力を見せたのは、古巣の名古屋サポーターから強烈なブーイングを浴びた永井謙佑でした。持ち前のスピードで、ペナルティエリアを飛び出してきたミチェル・ランゲラックのクリアミスを誘い、そのボールを拾った橋本拳人のラストパスに合わせて追加点を奪いました。

3点目も永井が前方に流れたボールに全速力で追い付き、絶妙なクロスを入れてディエゴ・オリヴェイラのゴールにつなげました。アシストをした永井は喜びを爆発させます。これが効果的な、後半1分も経たないうちの得点でした。

対する名古屋は前半、ボールを止めて、蹴るという動作をあまりにも慎重にやりすぎたため、簡単に東京のプレスにはまっていました。また蹴るボールも散水をした味の素スタジアムのピッチが劣悪なのかと思わせるほどスピードがなく、風間八宏監督の目指すサッカーを体現できていませんでした。

後半に入るとロッカールームで発破をかけられたのか、スピードのなさが改善され、攻撃に勢いが出てきました。そして前半32分のジョーのゴールと同様、相手ゴール前でのガブリエル・シャビエルのフリーキックを今度はホーシャが合わせて後半18分に1点差に詰め寄りました。

東京からすればシャビエルというすぐれたキッカーがいるにもかかわらず、名古屋にゴール前でセットプレーを与えすぎていました。ディフェンシブサードの守備には修正の余地があります。

その後、長谷川健太監督はやや運動量の落ちてきた前線の選手を東慶悟、前田遼一、富樫敬真に代えますが、さらにもう1点取りにいくというよりは、名古屋が時間の経過とともにロングボールを多用し始めたこともあり、次第に全体の重心が低くなりだしました。したがって富樫が最前線で必死にプレッシャーをかけても、うしろの選手はなかなか持ち場から離れようとしません。

1点失えば勝ち点2を落とす状況で最後に踏ん張りを見せたのは、前線で唯一フル出場した大森晃太郎でした。苦しい中でも労を惜しまぬ走りで相手に簡単に攻めさせまいとしました。そのハードワークもあって、東京は逃げ切りに成功します。

上位チームの戦い方として、東京が90分を通して安定していたかというと疑問も残りますが、とにもかくにも打ち合いを制して勝ち切れたことは大きいと言えるでしょう。