リオ五輪予選敗退とともに失っていた自信を取り戻す、価値ある優勝となりました。

高倉麻子監督就任後、2017年のアルガルベカップに始まり、強豪が集ったトーナメント・オブ・ネーションズ、優勝に手が届きかけたE-1サッカー選手権、そして今年のアルガルベカップとタイトルのかかった大会をことごとく落とし、復調の兆しが見えなかったなでしこジャパンでしたが、今回はオーストラリアの猛攻を凌いでアジア女王の座を守り抜くことができました。

準決勝で120分間戦ったオーストラリアは序盤から圧力をかけてきました。特にインサイドハーフのタメカ・バットがクロスを上げようとさかんにサイドに流れるのを、日本の守備陣は捕まえきれずにいました。

嫌な流れが続く中、前半14分にエリー・カーペンターのクロスを山下杏也加がキャッチし損ね、こぼれ球を狙ったバットのシュートを熊谷紗希が手で防いだとしてPKを与えてしまいます。

しかし山下はエリス・ケロンド・ナイトのシュートをストップ。自身がきっかけをつくったPKでしたが、この試合最大のピンチをみずからの手で救いました。

日本は菅澤優衣香のサイドチェンジを起点に相手ゴール前で得た中島依美のフリーキックの流れで、宇津木瑠美が前半24分にファーストシュートを放つも枠をとらえられず、前半35分に岩渕真奈がドリブルで運び、クレア・ポルキホーンとカーペンターの間を走った長谷川唯にパスを出し、長谷川が放ったシュートもリディア・ウィリアムズに阻まれました。

後半も主導権はオーストラリアに握られたまま推移し、なでしこは阪口夢穂、宇津木瑠美が攻め上がりを自重して我慢強く相手のMFに対処するなど全員守備で懸命に阻止します。それでも後半8分にエミリー・バン・エグモンドのロングシュートがクロスバーを叩くなど、しばしば脅威にさらされました。

そうして我慢に我慢を重ねた後半39分、山下が大きく蹴ったボールを長谷川が収めてパスを出すと、この日も途中出場の横山久美がそれを受け、アランナ・ケネディをいなして力強く振り抜き先制点をもぎ取りました。本当に数少ないチャンスをきっちりとものにしました。

そこからはウノゼロで逃げ切るべく、岩渕、横山もディフェンスに奔走。後半48分にロングボールに抜け出てきたサマンサ・カーを山下が阻止すると、それからほどなくしてタイムアップ。激闘を制して女子アジアカップ連覇を達成しました。

世界一を経験しているチームということで現段階ではそう簡単には変わらないかもしれませんが、この優勝によって、日本時間ではゴールデンタイムでもないのにBSでしか試合が中継されないといったことが減少するなど、なでしこジャパンを取り巻く環境がまた少しでも改善されることを願ってやみません。