後半47分、ソウザのゴールが決まった瞬間、一部の川崎サポーターは席から立ち上がりスタジアムをあとにしました。アディショナルタイムはまだ残っていたとはいえ、それほどまでに強烈な、川崎にとってはわずかに残っていた希望を打ち砕く一撃でした。

誤算の始まりは杉本健勇の先制点でした。日本代表FWがネットを揺らしたとき、スタジアムの時計はまだ50秒しか経過していませんでした。エドゥアルドの痛恨のミスで決定機を与えてしまった結果です。

これでまたしても喉から手が出るほど欲しいタイトルが遠のいてしまったと思ったのか、川崎はいつものプレーができなくなります。4-4-2のブロックを敷いて、我慢強く中央を固めるセレッソに対して、それを避けるようにブロックの外であまり意図の感じられないボール回しをすることが多くなり、空いているサイドに展開することまではできても、それ以降が続きません。

加えて、蹴ったボールが止まってしまう雨の日立台での苦しみが頭に残っているのかと思うほど、時間が経つにつれて前線の選手が前がかりになり、テンポよくボールを転がしてパスを回そうにもつなぐ相手がいないという形に陥ってしまいます。そこで気を利かせてボールを受けに下がってくるのは中村憲剛だけという状態でした。

その頼みの中村は相手陣内深くにボールを入れようとしますが、セレッソの選手に渡ってしまうケースがたびたび見られ、思うように攻撃を組み立てられません。背番号14が年を一つ重ねたからだとは思いたくないですが、効果的な働きはできていませんでした。

得点を取るために鬼木達監督は次々と選手を変えましたが、エウシーニョを下げて知念慶を入れた際、後半頭から左サイドハーフを務めていた長谷川竜也に右サイドバックを任せたのは失敗でした。中盤にいたときは切れ味鋭い仕掛けを見せていた長谷川のクロスはことごとく精度を欠き、せっかく2トップにしたにもかかわらず、チャンスの可能性を感じませんでした。

ちぐはぐな攻撃が最後まで改善されなかっただけでなく、攻から守への切り替えのときのバランスの悪さも前半から気になりました。奪われた後のポジションどりがあやふやで、あっさりとカウンターの餌食になりかけた場面が幾度かありました。そして、試合を決める追加点を奪われたのは、やはりカウンターからでした。

結局、ボールを支配して攻め立てた割にはシュートは11本しか打てずに終わり、ゴールも奪えないままタイムアップを迎えてしまいます。川崎はあまりにもナーバスでした。最初に失点した時点でまだ89分残っていたのに、それを落ち着いて有効に活用することができませんでした。

天皇杯とルヴァンカップを逃し、厳しい状況ながら残されているリーグ優勝のタイトルを鹿島アントラーズから奪い取るには、インターナショナルマッチウィークでこの小さくないショックからどれだけ立ち直れるかが重要になってきます。