立ち上がりは規律正しく、プレッシャーも速いスイスに思うようにプレーさせてもらえませんでした。ショートパスをつなごうにもパスコースは寸断されてしまい、長いボールに頼らざるを得ない展開でした。

それでも前半18分の櫨まどかのシュートが枠をとらえてからは少しずつリズムが出てきました。中里優の巧みなボールコントロールをはじめ、なでしこらしい細やかなプレーが徐々にボディブローのように効いてきて、整然としていたスイスの陣形が乱れていきます。

つかんだ勢いを持続させるべく、中島依美を投入して後半も積極的に攻めた日本。待望の先制点が生まれたのは後半24分のことでした。この日好調の櫨からのスルーパスに中島が抜け出してシュート。一度はセライナ・フリードリに阻まれますが、こぼれ球に反応してゴールを決めました。

後半48分には田中美南が確実に追加点を挙げ、そのまま試合は終了。なでしこジャパンは6月のオランダ戦以来、5試合ぶりの完封勝利を収めました。

とはいえ、手放しで喜べる内容ではありません。前半36分にはカウンターを食らい、エセオサ・アイグボグンにフリーでシュートを打たれましたし、後半31分には最終ラインから前へのパスコースがなく、みすみす自陣でボールを失う羽目となり、あわやPKというシチュエーションをつくってしまいました。幸い笛は鳴らなかったため救われたものの、日本の悪い部分が出てしまったシーンでした。

また攻撃時のセットプレーはフィジカルで勝るスイス相手ということで、直接放り込むのではなく変化をつけたものがほとんどでしたが、あれこれ試した割にそこから決定機には至りませんでした。このあたりは今後に向けての課題となります。

ただ、アメリカで行われたトーナメント・オブ・ネーションズで結果が出なかったあとの試合をしっかり乗り切れたことは、女子ワールドカップ出場をかけた女子アジアカップに向けて大きな収穫となりました。