ゴールこそありませんでしたが、この日、MOM級の働きをしたのは、センターバックの田中マルクス闘莉王でした。崖っぷちの名古屋が残留争いを戦う上で、この上ない「補強」になったと言えます。じつに18試合もの間、勝利から遠ざかっていたチームを、プレーで、言葉で、身振り手振りで奮い立たせたのです。

攻撃面では後半、永井謙佑がそのスピードを生かして何度かチャンスに絡んだものの、仕留めることができず、結果的に前半28分の田口泰士のコーナーキックに頭で合わせた川又堅碁の虎の子の1点を守る形になりましたが、最後まで名古屋守備陣の集中は切れませんでした。

特に残り20分ほどとなったところで、ハ・デソンを下げてロビン・シモビッチを投入して、システムを4-3-3から4-4-2にした後は、前線の枚数は増えたものの中盤が手薄になって危うい空気が漂いましたが、ゴール前を固めて決死のディフェンスで凌ぎ切りました。

新潟は名古屋の迫力に気圧されたか、決定的なチャンスは前半38分のコーナーキックからコルテースが押し込みきれず、楢崎正剛にキャッチされたシーンくらいしかありませんでした。

名古屋にとってアウェイの新潟戦は過去一度しか勝利がなかった鬼門でしたが、この一戦に勝利したことで状況はやや好転。すぐ上の順位にいるヴァンフォーレ甲府もガンバ大阪に負けたため、残留圏内にいる新潟、甲府との勝ち点差が4に縮まりました。まだまだ降格圏を脱出したわけではないので油断はできないものの、希望を繋ぐ一勝になりました。