INACがセットプレーからの一撃に涙をのんだ、のは事実ですが、それよりも相手ゴール前でほとんど何もできなかったことの方が、この試合のみならず今後に向けて大きな課題となりました。

立ち上がりは中盤でダイレクトのパスを回せる場面もありました。ただ、バイタルエリアをなかなか攻略するまでには至らなかったため、次第に千葉の選手につかまり始めます。特にボランチのところで引っかかることが多くなりました。

前半32分にはチョ・ソヒョンが鴨川実歩にセンターサークルでボールを奪われ、最後は菅澤優衣香にシュートを打たれてしまいました。幸い、好守が光る三宅史織が体を投げ出してコースを消したこともあり、ボールは枠をとらえませんでした。

苦境を脱するため、前半の半ばに守屋都弥を右サイドバックから左サイドバックに移し、鮫島彩を一列前に置く形に変えたり、シュートなしで前半を終えると、インターバル明けには道上彩花に代えて、中島依美を入れるなど、松田岳夫監督は様々な手を打っていきます。しかし、それらは奏功しないまま時間が流れていきます。

そして後半2分、チョ・ソヒョンのパスを菅澤がカット。ボールを小澤寛に預けると、小澤はそのまま持ち込んでシュートを狙います。ここは守屋がブロックしますが、千葉のコーナーキックになります。

瀬戸口梢のコーナーキックは千野晶子が頭でそらし、深澤里沙がダイレクトで押し込みました。近賀ゆかりがゴールのカバーに下がっていなければ深澤の位置はオフサイドポジションでしたが、フリーの状態で決められました。

INACはサイドからのクロス、最終ラインの背後へのボールを駆使して同点に追い付こうとしますが、精度を欠いたり、オフサイドになったりして実りません。32分にようやく守屋のクロスがペナルティエリア内の中島に通るも、3人に囲まれてしまいシュートは打てませんでした。

千葉は34分に若林美里を入れて、5バックにして守備を固めます。1点差で逃げ切るには早いかに思われましたが、この日のINACはそれを押し切ることができませんでした。

結局、48分の中島のフリーキックも生かすことができず、0対1で敗れてしまいました。これでINACと千葉との勝ち点差は1に縮まりました。しかも千葉は1試合多く残しています。INACはこの日のような出来ですと、残された最終戦の日テレ・ベレーザとの試合も苦戦しかねませんので、準決勝進出が危うくなってきました。