時間が経つにつれて、苦境に立たされていたのはレアルでした。しかし最後に笑ったのはレアルでした。

前半に限って言えば、白い巨人が主導権を握っていました。前半15分にトニ・クロースのフリーキックをガレス・ベイルが頭ですらし、セルヒオ・ラモスが押し込んで先制点を奪うと、次第に落ち着いてピッチを広く使ってじっくりとボールを回すようになりました。

また、ディフェンスも慎重だったことから、アトレティコの選手はボールを持つと、パスの受け手を探して逡巡する場面が多く見られました。ファイトをしない、らしくない姿でした。そんな中、アントワーヌ・グリーズマンだけは34分、39分、43分と立て続けにシュートを放ち、切れ味の鋭さを見せていました。

アトレティコが本来の戦う姿勢を取り戻したのは、ヤニック・フェレイラ・カラスコが送り込まれた後半からでした。ディエゴ・シメオネ監督の檄がハーフタイムに飛んだのでしょう。

すると早速チャンスが到来します。後半1分、ペペがエリア内でフェルナンド・トーレスを倒してPKの判定が下されたのです。ところがグリーズマンのシュートはクロスバーを直撃してしまいます。同点に追い付く絶好のチャンスを逃してしまいました。その数分後、ダニエル・カルバハルが涙の負傷退場をしていた間に、グリーズマンはシメオネ監督に闘魂を注入されます。

好機を逸してもアトレティコの戦意は落ちず、レアルに圧力をかけます。繰り出すパスにも迷いがなくなり、攻撃に迫力が出てきました。

そして34分、ガビの浮き球のパスを受けたフアンフランがダイレクトでクロスを上げると、カラスコが合わせて試合を振り出しに戻します。鮮やかな崩しにレアルの守備陣は対応しきれませんでした。

すでに3人の交代枠を使い切っていたレアルは、前線でなかなかボールが収まりません。クリスティアーノ・ロナウドはケガの影響か、2年前の決勝以上に精彩を欠いており、この試合でいい働きをしていたベイルも延長に入ると足をつってしまいます。

どうにかシュートを打とうとしても、ボックス内を固めたいつものアトレティコの牙城を崩せません。そして試合はアトレティコペースで進んでいきました。ただスコアだけは動きません。

結局、120分で決着がつかずにPK戦に突入します。流れはアトレティコに傾いていましたが、この勝負は別物でした。アトレティコは4人目のフアンフランが失敗。逆にレアルは3人目のベイルが苦しみながらもゴールにねじ込み、最後のキッカーを務めたロナウドもきっちり決めて、2シーズンぶりにビッグイヤーを手に入れました。