立ち上がりは伊賀の選手がフルスロットルで高い位置からプレスをかけ、INACにパス出しの余裕を与えない時間が続きました。加えて、櫨まどか、小川志保が積極的にシュートを放ち、リズムをつくります。

前半10分あたりから伊賀のプレッシャーが緩み、最終ラインを高く保ちながらブロックを敷くようになると、ようやくINACも落ち着いてボールを回せるようになりました。ただ、前線での連動性に乏しく、ダイレクトプレーがほとんど見られない状態で、また暑さの影響もあってかテンポの速い展開には至りません。

最初の決定機は17分。ボランチの京川舞が右サイドからクロスを上げるとボールは宮迫たまみの頭上を越え、高瀬愛実がヘディングで合わせました。しかしこれは久野吹雪がキャッチします。

36分には、増矢理花のパスを受けた鮫島彩が切り返して大橋実生をかわしてシュート。久野が弾いたところを増矢が詰めますが、久野と宮迫が体を寄せてきたためシュートは浮いてしまいます。

試合が動いたのは後半14分。中島依美が左足でミドルシュートを打ち、これが久野の頭を越えて決まりました。得点が入った直後、中島は手を口に当てて、驚いたように笑っていましたので、もしかするとシュートではなかったのかもしれません。いずれにしても1点は1点です。

その後のINACはなかなかシュートの形をつくれず、前半から狙っていた最終ラインの背後をめがけた攻撃はことごとくオフサイドになってしまいます。

すると36分、自陣ゴール前での増矢のクリアが弱くなり、櫨が拾って落とすと、那須麻衣子が強烈なミドルシュートを叩き込みました。

首位の日テレ・ベレーザ追撃のためにもホームで勝ちたいINACは、41分、増矢のやわらかいパスを受けた京川がシュート。しかしボールはクロスバーを直撃して真下に落ち、ゴールラインを割ることができません。

2分後、松田岳夫監督は道上彩花を送り込み、その高さと強さを生かした攻撃を求めます。投入直後の中島のコーナーキックに早速頭で合わせましたが、久野に難なくキャッチされました。

INACが決勝点を奪いにやや前にかかっていた48分、途中交代で入った園村奈菜にスペースを突かれてドリブルで持ち込まれると、園村は中央に走り込んだ杉田亜未にラストパスを供給。INACの選手の戻りは間に合わず、フリーの杉田が確実に決めて、伊賀が逆転します。

野田朱美新監督の下、ラスト10分の攻防できっちり得点を奪った伊賀が勝ち点3を獲得。INACは痛い黒星となりました。