初戦を落として後がなくなった日本は、宮間あやをトップ下に据え、左利きでテクニック抜群の上尾野辺めぐみ、攻守においてダイナミックなプレーが持ち味の川村優理をボランチに配し、攻撃に重きを置いた編成でこの試合に臨みました。

指揮官のメッセージを受け取った選手達は、立ち上がりからハイプレスをかけ、猛攻を仕掛けます。その中心にいたのが、この日先発起用された横山久美でした。

前半1分にチャン・スルギからボールを奪い、ドリブルで持ち込んでシュートを放つと、4分にはクロスバーを叩く一撃を、さらに13分にもゴールを狙い、得点への意欲を見せました。

その後は、両ボランチが前線に積極的に顔を出し、厚みのある攻撃で韓国を圧倒します。15分には十分ヒットしきれなかったものの、横山がチョ・ソヒョンをかわして上げたクロスに川村が飛び込み、39分には近賀ゆかり、宮間、川村で崩して、最後は上尾野辺がミドルシュートを放ち、キム・ドヨンに当たってCKを獲得しました。このCKは川村が頭で合わせ、ボールは惜しくも枠の外に飛んでいきました。

守備面では自陣でのミスから数回ピンチを招きかけたものの、大事には至らず、スコアレスとはいえ主導権を握った状態で折り返しました。

後半に入ってからはしばらく膠着状態が続き、後半14分に上尾野辺に代えて岩渕真奈がピッチに送り込まれます。ここで岩渕は最前線に入り、宮間がボランチの位置に下がります。前半、1.5列目でのプレーでやや窮屈そうだったキャプテンは、低い位置からタクトを振るうことになりました。

そんな中、24分に思わぬ形で最大のピンチが到来しました。代わって入ったばかりのチョン・ガウルの右サイドからのクロスに対し、チョン・ソルビンと近賀が競り合い、もつれて倒れた近賀の手にボールが当たってしまい、これがハンドの判定となりました。ペナルティスポットを指差したアンナマリエ・キーリー主審のジャッジは、なでしこにとって非常に酷なものでした。

しかし、チ・ソヨンのPKを福元美穂がファインセーブ。さらにこぼれ球に詰めてきたチョン・ソルビンよりも速くボールに反応してクリアします。守護神のビッグプレーで日本は息を吹き返します。

39分、中島依美がルーズボールを拾い、宮間が前線に力強く蹴り込むと、大儀見優季が安定したポストプレーで落とし、川澄奈穂美へ。川澄がすばやくアーリークロスを入れると、ボールはファーサイドに流れ、落下点に立っていた岩渕が頭で合わせて先制しました。残り10分を切った中での貴重なゴールでした。

ところがその3分後、チャン・スルギのクロスを福元がジャンプしてキャッチするも、熊谷紗希の肩にボールが当たってこぼれてしまいます。このこぼれ球に反応したチョン・ソルビンが体をひねって蹴り込み、同点に追い付かれてしまいました。ゴールラインには有吉佐織がカバーに入っていましたが、防ぎきれませんでした。

オーストラリアの攻撃を参考にしたと思しき韓国は、前半から再三狙っていた右サイドのクロスからゴールを奪うことに成功。日本はここまでペナルティエリア内でも人数をかけて粘り強く守っていただけに痛すぎる失点となりました。

何としてでも勝ち点3の欲しいなでしこジャパンは、懸命に韓国ゴールに迫っていきます。43分には中島のクロスに川村がヘッド、47分には宮間からのやさしいパスを受けた岩渕がシュートを打とうとしますが、ヒットしきれずキム・ジョンミにキャッチされます。

結果、1対1のドローに終わり、日本は勝ち点2を失ってしまいました。なでしこは攻守にわたって粘り強さ、勝負強さといった底力を見せたものの、終盤の大事な時間帯に失点を喫してしまいました。リオへの道はより一層険しいものとなってしまい、人事を尽くして天命を待つしかない状況に追い込まれました。