序盤、前から圧倒してくる新潟に対し、INACは大野忍、高瀬愛実、中島依美が最終ラインの背後を狙って走り続け、そこを狙った攻撃を仕掛けていきました。

前半15分あたりからは、いつものポゼッションを高めるサッカーができるようになり、22分には大野の縦へのボールを高瀬が落とし、澤穂希、中島と繋いで、最後は高瀬がシュートを放ちます。また、30分には田中明日菜のロングパスを鮮やかなトラップで受けた鮫島彩が、カットインしてシュート。いずれも福村香奈絵がキャッチします。

44分にはさらなるビッグチャンスがINACに訪れます。川澄奈穂美のクロスに対して大野がしゃがんでスルー。流れたボールを中島が合わせましたが、またしても福村に阻まれ、こぼれ球も中村楓のカバーによって阻止されました。崩しにかかるINACに対して、新潟が体を張った守備をするという試合展開を象徴するような場面でした。

エンドが変わると後半3分、4分と立て続けに川澄のCKが澤に合います。準決勝は黒子に徹して、相手の攻撃の芽を潰す役割をまっとうしていた澤でしたが、この試合はセットプレーに限らず積極的に攻撃に絡んでいました。

32分、途中投入の増矢理花が粘って中村からボールを奪って持ち込み、大野にクロスを入れます。大野はトラップして落ち着いてシュートを打とうとするも、左山桃子がスライディングで阻みました。

ここで得たCKで決勝点が生まれます。川澄の完璧なキックに飛び込んだのは、ファーサイドから中央へポジションを移した澤でした。後半、再三狙っていたセットプレーの形が試合終盤の大事なところで実を結びます。

一方の新潟は前半24分の左山のクロスに小島美玖が飛び込んだシーン、そして後半45分の渡辺彩香のクロスを大石沙弥香がスルーして、フリーの上尾野辺めぐみがシュートを放ったシーンくらいしか決定機をつくれず、1点が遠い90分でした。準決勝で120分を戦った影響があったかもしれません。

結果、INACはなでしこリーグのエキサイティングシリーズで敗れたベガルタ仙台レディース、新潟を破り、皇后杯では女王の座に返り咲きました。歓喜をもたらしたのは、2011年FIFA女子年間最優秀選手の澤でした。期待はしていても実現は難しいようなことを現実化した、すばらしいフィナーレとなりました。