立ち上がりにペースを握っていたのは仙台でした。川村優理を含め、前から積極果敢にプレスをかけていくなど、全体のプレースピード、強さは確実にINACを上回っていました。

20分には川村が大野忍からボールを奪って繋ぎ、嘉数飛鳥がファーサイドにクロスを上げて、中野真奈美がトラップしてゴールを狙いました。両サイドの選手が絡んでのプレーでしたが、甲斐潤子がブロックします。

スペースを与えてもらえず、思うようにボールを保持できなかったINACは、最終ラインの背後を突いた攻撃を仕掛けていきます。26分には川澄奈穂美が自陣から縦パスを出すと、抜け出した大野が高瀬愛実に預け、高瀬がシュートを打ちます。ここは坂井優紀が絞って対応しました。

こうした背後を狙ったサッカーが奏功し、30分あたりからわずかではありましたがスペースができ始め、INACのパスが回るようになりました。川村のミドルシュートを海堀あゆみが防いだ3分後には、大野が中盤で粘ってボールを奪い、澤穂希がサイドに展開。それを受けた川澄が後方から猛然と上がってきた近賀ゆかりにパスを送り、そのクロスを川村が阻止する場面がありました。

これで得たCKで、高瀬が有町紗央里と競って流れたボールを大野が押し込んでINACが先制します。ペースを握り返した中できっちりと得点に結び付けました。

後半に入ると右足のテーピングが痛々しい鮫島彩がオーバーラップを見せ、より一層前への圧力をかけていきます。後半4分には高い位置でのプレスがはまり、高瀬がブリトニー・キャメロンのパスミスを拾うと、マイナスのラストパスを供給。大野がスルーして伊藤美紀がシュートを打ちました。

INACに躍動感が出てくる一方、仙台は明らかに動きが落ちてきました。やはり準々決勝で110分プラスPK戦を戦った影響が出てきたのかもしれません。

すると16分、自陣から左サイドを使いつつ11本のパスを回し続け、伊藤美紀のボールを受けた川澄が井手上麻子の背後にパスを通すと、近賀がマイナスのクロスを入れ、最後は中島依美がフィニッシュ。山本りさが体を投げ出しましたが及びませんでした。

点差が2点に広がり、千葉泰伸監督は20分からの10分間に三枚の交代カードを切ります。しかし川村からのダイナミックな展開もほとんど見られないなど、全体の運動量が再び活性化するには至らず、逆に勢いを増したINACのプレスが効くようになりました。

48分には澤のカットから川澄がドリブルで持ち込んで相手を引き付けてパスを送り、途中出場の増矢理花がポストをかすめるシュートを放ちました。こうして最後まで攻撃の手を緩めなかったINACが決勝進出を果たします。今大会での現役引退を表明している澤のために、チームが一致団結しているという印象を抱かせた90分でした。