第114話から第116話にわたってブラジル対策を入念に行った様子が贅沢に描かれ、最終的に「一対一」で負けない覚悟を植え付けた上で、本物よりはるかにクールなネストール率いるサッカー王国とのアウェーゲームを迎えました。

ブラジル国歌の描写は、先のワールドカップを思い起こさせるようなもので、音を使わずに文字と絵だけの見事な表現であの時のスタジアムの雰囲気をつくりだしていました。

日本は坂本琴音の提案した4-3-3ではなく、本田圭佑を最前線に置いた4-2-3-1でスタート。試合は前半5分、由利速人のすばやいスローインを受けた本田が虚をつくシュートを放って先制します。ペナルティエリアの外からか中かからなのか、どんな弾道でゴールネットを揺さぶったのかはわかりませんが、とにかく「もってる」男のゴールであったことは間違いありません。

その後はブラジルの脅威をじわじわ感じつつも、日本が平常心で真っ向勝負を挑んでいます。負けたら終わりのノックアウトラウンド、しかもホスト国相手だというのに非常に頼もしいイレブンです。

流れが変わったのは、師匠であるカルロ・グロッソ監督が「ブラジルに一番欠かすことができないパーツ」と言わしめるCBのヒクソン・シウバに沖田薫がボールを奪われてからです。そこから前線に持ち込まれ、最後はアンドレアのトゥーキックによるテクニカルなシュートで同点に追い付かれます。

それでも日本はメンタルを保って、再び戦いに身を投じたところでこの巻は終わりました。まだ主人公の坂本轍平が活躍していないので、日本が簡単には引き下がらない展開になっていきそうです。

さて、本田の先制ゴールの詳細が気になった12巻でしたが、もう一つ気になる箇所がありました。それはブラジルのフォーメーション図で最終ラインの並びが逆ではないかという点です。

少なくともSBが逆なのは間違いないようです。マルスのモチーフになったのがマルセロ、ダニエル・アウフのモチーフになったのがダニエウ・アウベスなのは絵柄や劇中の所属クラブからして確実で、そうだとするとマルスが右、アウフが左に配置された図は明らかに違っています。

またマルスとマッチアップしていたのが、右SBの由利である点からもマルスは左SBを任されているはずなのです。単行本化するにあたって、どなたも気付かなかったのか。読者へのクイズではないでしょうし、やや不思議ではあります。