中盤でボールが収まらず、縦パスはたびたび相手にカットされ、ボール回しでの小さなズレが目立ち……と、全体的には特に攻撃面での課題が見られた大会最終戦でしたが、最後まであきらめない姿勢がなでしこジャパンに勝利をもたらしました。

韓国同様にワールドカップメンバーを起用してきた王珊珊擁する中国相手に、序盤は前線から意欲的なプレスを仕掛けていきました。最後こそ勝ちたいという思いが伝わる走りでした。

前半10分、川村優理が右サイドの中島依美にミドルレンジのパスを送ると、オフサイドと思ってか、中国ディフェンスが足を止めたところを逃さず突き進み、ゴール前に鋭いクロスを上げます。田中美南が飛び込むも、足は届きませんでした。

26分には、田中美南が劉杉杉に止められたため得たFKを杉田亜未が生かします。壁の外を巻いていったボールは枠をとらえ、王飛にセーブされてゴールポストに当たります。セカンドボールを狙って高瀬愛実と川村が詰めていましたが、ボールは足元にこぼれません。クリアされたボールは京川舞がシュートを狙うも、呉海燕がブロックします。これが前半最大のチャンスでした。

逆に38分、山下杏也加のキックが中途半端になったところを王珊珊に拾われ、ペナルティエリアへの進入を許し、王霜にラストパスを送られます。幸い王霜がボールコントロールに失敗し、ファウルを犯したために救われました。

日本は後半頭から高瀬に代えて菅澤優衣香がピッチに入り、それとともに中島をボランチに移すなど、中盤の選手の配置換えを行いました。これが奏功して、シュートチャンスが増えてきました。

後半13分にはセンターサークル付近で中島と田中明日菜がはさんで王珊珊のパスミスを誘うと、菅澤がこれをキープして、有町紗央里、田中美南へと渡り、最後は右サイドでフリーになった京川がシュートを放ちます。ここは王飛がパンチングをして逃れられました。

続く15分、CKのクリアボールを川村が拾うとボールを動かし、有町からパスを受けた田中明日菜が中国の最終ラインの背後にボールを出します。それを菅澤がダイアゴナルな動きで受け、やや後方にいた中島に預けます。中島は有町に渡し、有町はファーサイドにクロスを上げました。クロスの落下地点にはエリア外から走り込んだフリーの川村がいて、ヘッドで合わせます。今度はポストを直撃し、王飛にキャッチされました。

佐々木則夫監督は、21分に増矢理花、38分に横山久美という攻撃にアクセントをつけられる選手を送り出し、状況打開を図ります。

すると横山投入直後、右サイドで京川が増矢とのワンツーを成功させると、ドリブルでカットインしてゴールに迫ります。そして中国ディフェンスを引き付けると、前にいた横山にラストパスを送りました。横山は力いっぱい右足を振り抜きますが、弾道が低く、王飛に防がれました。こぼれ球に反応した菅澤も苦しい体勢からシュートを打ちますが、趙容にブロックされます。

これが伏線となり、43分の横山は、グラウンダーのシュートではなく、体を投げ出してきた王飛の上を通るシュートを打ち、待望の先制点をもぎとります。中島のスルーパスに反応し、趙容のタックルをかわしてのゴールでした。

さらに48分、菅澤が前線に抜け出して懸命にキープして落とすと、そこに走り込んできた杉田がダイレクトで合わせ、コースを狙ったシュートで追加点を奪います。菅澤が体勢を崩した際にボールが腕に当たっていたようですが、そばにいた中国の選手は特にアピールせず、主審も笛を吹きませんでした。

これで勝負は決まり、完封勝利を挙げた日本は1勝2敗で大会を終えました。課題は残ったものの、攻守ともに試合を重ねるごとに成長し、この試合ではタイムアップの笛が鳴るまで粘り強く戦い、走り続けて勝ちました。実になでしこジャパンらしい、魂のこもった戦いでした。