試合が動いたのは、前半12分でした。それまで右サイドを中心に攻められ、ヴィッセルに優位に立たれていたガンバでしたが、ファーストシュートを得点に結び付けました。決めたのは、しばし高い位置でボールを要求していた遠藤保仁です。

スローインから30秒近く後方でボール回しをしたあと、今野泰幸が鋭い縦パスを入れます。ボールは宇佐美貴史、リンスを経由し、ようやく遠藤に到達。すると蹴りやすい位置にボールを前に出して、美しく弧を描いたシュートを放ちます。山本海人は懸命に手を伸ばしますが、ちょっと触れるのが精一杯でした。

さらに、タイトな日程で戦うガンバに好材料が生まれます。24分、ルーズボールを奪いに行った阿部浩之に対し、相馬崇人が足の裏を見せてタックルしたとして退場処分を受けたのです。これで神戸は10人で戦わざるを得ず、3バックの左を任されていた高橋祥平を左SBにスライドさせ、3-4-2-1から4-4-1のシステムに変更しました。

神戸はカウンターを仕掛けようにも、前線の枚数が足らず、パスの受け手を探すシーンも目立っていました。結局、41分には高橋祥平を下げ、左SBを本職とする安田理大を投入することになります。

しかし数的不利でもゴールを奪いやすいセットプレーで、ガンバは同点に追い付かれます。48分、チョン・ウヨンのCKを渡邉千真が折り返し、増川隆洋がダイレクトで合わせてゴールを奪いました。マークに付いていた岩下敬輔が増川を外して、渡邉に気を引き付けられたため失った1点でした。

後半は互いにカードを切るものの、スコアが動かないまま時間が経過し、30分頃にはオープンな展開になりました。そんな中、後半序盤のシュート以降、消えていた宇佐美が試合を決めます。

32分、ルーズになったボールを遠藤が背後に落とし、走り込んだ宇佐美は神戸守備陣のタイミングを外して、鮮やかなコントロールショットを打ちます。ボールはポストに当たって、ゴールネットを揺らしました。

終盤、長谷川健太監督は大きな仕事をした宇佐美に代わって、明神智和を投入。中盤の守備の安定化を図りました。44分のCKでは攻めずにキープを選択。一方、パトリックは馬力のあるドリブルとキープ力を生かし、攻めの姿勢を見せて、うまく時間を使います。

それでもアディショナルタイムにはガンバの選手の足は止まりかけたため、体を張った守備で凌がざるを得なくなります。幸い石津大介の2本のシュートは、東口順昭の正面だったため難を逃れます。

試合はこのまま終了。ガンバは4試合ぶりの勝利を収めました。タイムアップ直後、カメラがとらえた長谷川監督の安堵の表情が、苦しかった試合展開を物語っていました。