歴戦の勇士達がわずか5分でパニックに陥りました。

前半3分、ミーガン・ラピノのCKは低い弾道でした。大野忍が触れなかったそのボールに、ペナルティエリアの外からまっしぐらに突進してきたカーリ・ロイドが合わせてアメリカが先制します。ロイドを警戒していた岩清水梓のタックルもおよびませんでした。

4分、左サイドの深い位置で鮫島彩がトビン・ヒースを倒して、アメリカにFKのチャンスが訪れます。1分後、ローレン・ホリデーが密集地帯に低いボールを入れます。ジュリー・ジョンストンがフリックしたボールが、阪口夢穂らに当たってこぼれたボールに対して、再びペナルティエリアのすぐ外からロイドが走ってきて押し込み、早くも追加点を挙げました。

日本対策と思われる変化を加えたリスタートで失点を重ね、観客のボルテージもヒートアップする中、なでしこジャパンは持ち味を発揮する前に劣勢に立たされてしまいました。一気に追い込まれたムードとなり、なかなかすぐには立て直すことができません。アメリカの高い位置をキープしたブロックを崩せないまま時間が流れました。

14分、中盤でボールを奪われると、右サイドのヒースが早目にクロスを上げます。熊谷紗希が対応しましたが、間に合いません。バウンドしたボールの処理を岩清水が誤り、浮いた球をホリデーに決められてしまいました。

さらに16分、宮間あやから大野へのパスがミスになり、ロイドに拾われます。ロイドは宇津木をかわすと、ハーフウェイライン中央からゴールを狙いました。海堀あゆみが前に出ていたところを突かれた格好で、ボールはネットに吸い込まれます。まだ75分近くあるとはいえ、サッカーにおいてはほぼ絶望的なスコア、0対4になりました。

18分にもメガン・クリンゲンバーグのクロスにロイドが頭で合わせ、あわやという場面をつくられました。

日本はここで選手の配置を変えます。宮間をボランチに、宇津木瑠美を左SBに、鮫島を左サイドハーフに移しました。より攻撃的に行くためのシフトでした。

すると27分、大儀見優季が反撃ののろしを上げます。センターサークル内にいた宮間が右サイドの川澄奈穂美に展開。川澄はカットインして大儀見に任せます。なでしこのエースは、ジョンストンをつぶし、左足を振り抜きました。ホープ・ソロが手を伸ばしましたが、止めきれませんでした。

30分には岩清水が相手陣内でボールを奪い、宮間、大野、大儀見のパスワークで中央を突破します。そして一旦、鮫島に預けて送られてきたクロスからチャンスをつくります。最後の宮間のシュートはソロがキャッチしました。

なでしこジャパンらしいリズムが出てくると、佐々木則夫監督が大胆に動きます。33分に澤穂希、39分に菅澤優衣香を投入しました。これで阪口をCB、大野を右サイドに置く形に変えました。澤に代わって退くことになった岩清水はベンチに座り、涙が止まりません。

1対4で折り返した後半、アメリカが再び牙をむきます。5分、右サイドでボールを回し、最後はモーガン・ブライアンがミドルを放ちました。ここは海堀がセーブして逃れます。

しかし1分後、大儀見がファウルを受けてFKのチャンスを得ます。宮間の蹴ったボールは、澤と競ったジョンストンの頭に当たってゴールの中に入りました。後半の早い時間帯に2点差に詰め寄る貴重な1点でした。

希望が見えてきた最中、日本はそれを打ち砕く1点を奪われてしまいました。9分、ホリデーのCKが流れたところをブライアンが折り返し、フリーのヒースが押し込んだのです。これで再び3点差となりました。

佐々木監督は、15分に最後のカードを切ります。大野に代えて岩渕真奈を投入しました。さらに25分過ぎには有吉佐織を高い位置に配した3バックに変更。なりふりかまわず攻めの姿勢を前面に出します。

31分、自陣からボールを動かし、熊谷が縦に長いボールを入れると、大儀見がキープして、鮫島に預けます。鮫島から宮間に繋がると、キャプテンはダイレクトでクロスを入れました。そこへベッキー・サウアブルンを振り切った菅澤が走り込んでヘディングシュートを放ちます。しかしボールはソロの正面でした。

その後も攻め続けましたが、出足が早く、自由を与えさせないアメリカの守備を攻略しきれず、なでしこに次のゴールは生まれぬままタイムアップを迎えました。

選手もベンチも最善を尽くしましたが、ワールドチャンピオンのバッジを奪いに、リベンジに燃えていたアメリカは強かった。そう言わざるを得ません。ただ、準優勝という結果はすばらしいものです。それにこれから続くなでしこリーグ、東アジアカップ、各国リーグ、リオ五輪予選、そして本大会――と彼女達の戦いはまだまだ終わりません。再び頂点に立つその日を信じて、見守っていきたいと思います。