なでしこジャパンのワールドカップ壮行試合的な意味合いのイタリア戦は、1対0の勝利に終わりました。

ただ、勝つには勝ったものの、ゴール前を固めるイタリアに対し、ペナルティエリアまでボールを運びながらそこでフィニッシュに行けず、混戦を嫌ってうしろにボールを下げてしまう場面が多く見られました。

たとえば前半5分。高い位置でリンダ・トゥッチェリ・チミニからボールを奪った川澄奈穂美が、すぐさま斜め前にいる大儀見優季にラストパスを送るも、サラ・ガマを前にシュートを打ちきれず、大野忍に預ける場面がありました。ここは大野が後方から走ってきた宮間あやに落として、宮間がエリアの外からシュートを打ちましたが、枠を外れました。

もう一つは、28分。ラウラ・ジュリアニのゴールキックを澤穂希が弾き返し、大儀見、宮間、大野とつないで、再び大儀見に渡ったところです。ここはシュートを打つまでに時間がかかってしまい、どうにかシュートを打ったもののエリザ・バルトリの体を張ったディフェンスにブロックされてしまいました。

最初の45分で相手ゴールを脅かした決定機と呼べるものは、18分、大儀見が相手のトラップミスを拾って、大野に渡し、大野がシュートを打ったシーンくらいでした。このシュートは右ゴールポストを直撃したため惜しくも先制はなりませんでした。

前半の終盤になってくると、イタリアの守備位置がやや低くなり、後方ながら日本がボールを支配できる時間が増えてきました。ニュージーランド同様に高い位置を保たれたため、小さなズレからパスミスが目立った序盤にくらべると、優位にゲーム運びができるようになりつつありました。

最前線に菅澤優衣香を投入した後半に入ると、前半よりも積極性が見られるようになり、7分には先制点が生まれます。宇津木瑠美のクロスは一旦、チミニに跳ね返されたものの、澤がボールを拾って再び宇津木へ。宇津木が鋭く低いクロスをゴール前に送ると、エレナ・リナリの前に体を入れた大儀見が右足を伸ばして合わせ、ゴール隅のネットを揺らしました。

ここからさらに相手を押し込むような攻めを披露したいところでしたが、あと一歩というところでチャンスを逃してしまいます。

直前にイタリアが3人を同時に投入した23分、宮間のCKに阪口夢穂が叩きつけるヘディングをするも、叩きつけすぎてバーの上を越してしまい、45分には大野の最終ラインの背後を狙ったボールを、菅澤が冷静なトラップをして抜け出し、一時はGKと1対1になりながらシュートには至らず、近くにいた鮫島に任せるも、右足のシュートはバーを越えていってしまいました。

逆に48分、イタリアが自陣の深い位置からカウンターを仕掛け、右サイドからメラニア・ガッビアディニにクロスを上げられてしまい、思い切りよく飛び込んだバルバラ・ボナンセアに当たれば1点というピンチが起こってしまいました。本大会では絶対に相手につくらせたくない形です。

ここを凌いで勝つには勝ったものの、連覇という高い目標を掲げるなでしこにとっては、やや消化不良な90分となってしまいました。試合後に大野と阪口が頭を抱えていたのが象徴的でした。

もっともこれはフレンドリーマッチにすぎないので、ワールドカップを戦いながら調子を上げていけば問題はないでしょう。参加24チームのうち、16チームがノックアウトラウンドに進めるレギュレーションですから、ゴールまであと一歩の形をそのままで終わらせず、もう一歩勇気をもって脅威を与えられるようにしたいところです。