最近出たばかりのマルティ・パラルナウ著、羽中田昌+羽中田まゆみ訳の本です。位置づけとしては、ペップ・グアルディオラがバイエルン・ミュンヘンとの監督契約を結ぶまでの半生を記した『知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像』(グイレム・バラゲ著、田邊雅之監訳、フロムワン、2014)の続きのようなものとなります。

ただし両者には決定的な違いがあります。それは『シーズン中は、チーム内で見たことは一切口外しないこと』を条件に「自由にチームに出入りできる」ことでした。すなわち、2013―2014シーズンにバイエルンの完全密着取材を許されたのちに書かれた一冊なのです。そして時には前職のバルセロナ時代のエピソードを絡めつつ進行していきます。

詳細について触れるのは極力控えますが、戦うためにサッカーにひたすら没頭するグアルディオラ監督が何を考え、何を意図しているのかを見聞きしつつ、さらにバイエルンの選手・関係者への取材を踏まえ、ドイツ王者がトレーニングや試合を通じてどのような手ごたえを得て、進化を遂げているのかを知ることができるのです。

またおそらく密着できたことによって、一般的に言われるペップの志向するサッカーについての誤解や間違いに気づかされることもありました。これは大変意義のある話です。

そして、特に興味深かったのは、大敗したチャンピオンズリーグ(CL)準決勝のレアル・マドリー戦のくだりでしょうか。この時チームで起こっていたできごとを知るに、敗因を納得することができました。

こうした事実を知るにつれ、今シーズンのペップとバイエルンについても同じような作品を読んでみたくなります。とりわけ逆境に立たされたCL準々決勝のポルト戦、そして先日行われたばかりの同準決勝バルセロナ戦についてだけでも知りたくなって仕方ありません。
さらに欲を言えば、ペップの目指す究極のサッカーとはどんなものなのかというのも聞いてみたいものです。

429ページとなかなかに分厚い本ですが、一気に読み進められる一冊です。