22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2026年07月

常にボールを握り続けながら、相手を完璧に抑え込み、最終的に黄金のトロフィーを手にしたのはスペインでした。

アルゼンチンは120分で2本しかシュートが打てませんでした。自陣でフェラン・トーレスに隙を与えてしまったジュリアーノ・シメオネによる反撃のシュートも、クロスバーの上に飛んでいきました。

前回王者の誤算は、最終ラインの選手が次々と負傷したことでした。ハーフタイムを待たずにピッチを去ったリサンドロ・マルティネスだけでなく、クリスティアン・ロメロまでも後半のハイドレーションブレイク以降はプレー続行不可能でした。

要の選手が思わぬ形でピッチを去ると、チーム全体に与える影響、とりわけ勝敗を大きく左右してしまうというのは、今大会を通して様々なチームで見られました。アルゼンチンとて例外ではなかったのです。

加えてエンソ・フェルナンデスが2枚目のイエローカードをもらい、90+3分に退場。10人で守るのはあまりにも酷でした。リオネル・メッシを最前線に残しての5-3-1では、耐え切ることはできません。

対するスペインは盤石でした。期待されたラミン・ヤマルが輝きを解き放つ場面こそほとんどありませんでしたが、大会のベストプレーヤー、ゴールデンボールに選出されたロドリの落ち着きは突出していました。それだけにアルゼンチンも背番号16を消そうとしましたが、時折最終ラインにも落ちるロドリを封じることはできません。

ルイス・デ・ラ・フエンテ監督はそのロドリを最後まで引っ張らず、延長に入った99分にマルティン・スビメンディと交代します。つなぎ役として欠かせないはずの大黒柱を代えてなお、戦えるスペインはさすがでした。

個人技術の高さ、守備意識の強さ。それらを全員欠かさず持っていることがスペインの大きな強みでした。大きな波がなく戦えるからこその抜群の安定感です。

スペインの先制点は106分、ペドロ・ポロのファーへのクロスをニコ・ウィリアムズが頭で落とし、アルゼンチンDFがいない場所、マイナスのボールを受けられる位置にフェラン・トーレスがいたことで生まれました。

守ってはアルゼンチンをほとんどボックスの中に攻め入れさせず、ユニフォームの星を二つに増やしたスペイン。美しく強いラ・ロハの復活です。EURO2024ではノックアウトステージの全試合で1失点を喫したものの、今回はグループステージからの全8試合で――その中にはポルトガルやフランスも含まれますが――ベルギーのシャルル・デ・ケテラーレによるヘディングでのゴールしか許しませんでした。

16年ぶりに返り咲いた世界王者は4年後、ホスト国の一つとしてトロフィーを死守する側に回ります。


2002年、快適な札幌ドームでの対戦から24年。同じようにプレーしやすいアトランタスタジアムを舞台に、ワールドカップで再び相まみえた両者。試合はフットボールの歴史に残る壮絶な戦いでした。

前線からハイプレスをかけるイングランドに対し、それをいなそうとするアルゼンチン。この構図でスタートした試合は、10分を前にハイプレスこそ落ち着いたものの、次第に激しさを増します。ジンクスを踏まえてセカンドユニフォームを着用したアルゼンチンが、全身を使ってプレーしました。主審がファウルを細やかにとることはなく、ヒートアップする場面もありましたが、大騒動にはなりません。

シュートの少ない前半でしたが、潰し合いには迫力があり、何よりリオネル・メッシの奮闘が光りました。今大会のこれまでとは違い、時には守備に走り、止められることの多かったドリブルも切れ味が鋭く、イングランドにたびたび脅威を与えます。

とはいえ、メッシといえども全盛期ほどのパフォーマンスではないため、ドリブルを仕掛けた際のボールロストのリスクは高いのですが、仲間たちがそれを補います。

試合が動いたのはハーフタイム明けの55分、アンソニー・ゴードンによるゴールでした。中盤に下がることの多いハリー・ケインの大きな展開をきっかけにして、先制点に結び付けました。

負ければ頂点への道が閉ざされるアルゼンチンは、ボールを保持しながら隙をうかがいます。イングランドは自陣深くに下げさせられ、懸命に1点を死守しようとします。ケインは時折、中盤に立つメッシを消す動きをしていました。

トーマス・トゥヘル監督はハイドレーションブレイク明けに殊勲のゴードンに代えて、エズリ・コンサを投入。守備時は5バックにして逃げ切りを図りました。

対するリオネル・スカローニ監督は3枚代えを決行。そのうち1枚は警告を受けていたセンターバックの一人、リサンドロ・マルティネスで、代わりにニコラス・オタメンディが入ります。

ゴール前を固められながらも、アレクシス・マクアリスターやフリアン・アルバレスが果敢に迫りましたが、ジョーダン・ピックフォードの好セーブもあり、得点を奪えません。

残り10分を切ると、アルゼンチンはラウタロ・マルティネスを、イングランドは屈強なダン・バーンを入れて決着をつけにいきました。

結果として、イングランドの逃げ切りは許されませんでした。コーナーキックを起点にして、エンソ・フェルナンデスが鋭いミドルを放ち、ジュード・ベリンガムがスライディングでブロックに入ります。しかし、エンソのシュートが上回り、ゴールネットに突き刺さりました。

守備者の増えたイングランドは、カウンターを仕掛けることもままならず、追い付かれたことで難しくなりました。アルゼンチンの攻撃を一方的に受けるばかりで、さらなる失点は時間の問題でした。

90+2分、メッシが再三攻めていた右サイドから逆足でクロスを入れ、それをラウタロが頭で合わせます。アルゼンチンに歓喜の時が訪れました。

イングランドは攻めるしかないのですが、攻撃の駒が少なく、やむを得ずバーンやマーク・ゲーイを前線に上げます。さらにはマーカス・ラッシュフォード、イバン・トニーをも投入。しかし、アルゼンチンの懸命のディフェンスが勝りました。

10分以上のアディショナルタイムの末に、アルゼンチンが勝利を収めました。ノックアウトステージに入るとカーボベルデに苦しめられ、エジプトにはVARにも救われつつ驚異的な逆転劇で勝ち上がり、スイスには劣勢に立たされたところで相手に退場者が出たこともあって勝利。この日も得点力を誇るケインとベリンガムに仕事をさせず、試合をひっくり返しての勝ちでした。

ドラマチックなストーリーを紡いで、前回王者はEURO王者との“フィナリッシマ”に臨みます。


1勝2分1敗。

最高の景色を見るために挑んだ日本代表。しかしながらこれが今大会の偽らざる結果です。ネーションズリーグがあるために親善試合を組みづらいヨーロッパ勢に2分け、プライドを刺激された南米の王国には20年前と同様に逆転負けを喫しました。

現状のベストメンバーを用意した日本は、立ち上がりに奇襲をかけます。東京スタジアムでの前回対戦時には後半からかけたハイプレスを冒頭から開始。セレソンを一気に追い詰めて先制点を狙います。

それがはまらずに終わると、ミドルサードで構えつつ機をうかがいます。チャンスが来たのは29分、佐野海舟がボールを奪い、そのままボックス外からミドルを放つとボールはネットを揺さぶりました。代表ではまだゴールのなかったMFによる先制点です。

しかし、以降はほとんどブラジルにゲームを支配されました。特に後半に入ると、中央にポジションをとることが多かったビニシウスを得意の左サイドに張らせ、中央には入ったばかりのエンドリッキを置き、ラフィーニャが負傷でいない右からはクロスを連発。時にはハーフスペースからガブリエウのクロスも織り交ぜてきます。そして56分、アーセナルに所属する世界屈指のセンターバックのボールを、カゼミーロに合わされて追い付かれます。

失点後は鈴木彩艶の懸命の守備に救われていたものの、このままでは決壊しかねない日本。そこで森保一監督が手を打ちます。66分に堂安律と中村敬斗がプレーしていた両ウイングバックを、菅原由勢と鈴木淳之介に代えました。これが勝負の分かれ目になったかもしれません。

片方だけでなく、大外を両方とも守備力強化にしたことで、ブラジルはなおさら前に出てきます。

すると日本の指揮官は鎌田大地を下げて田中碧を入れます。同時に伊東純也に代えて町野修斗を入れはしましたが、理由はどうあれ、攻撃で変化をつけられる選手がことごとくピッチからいなくなってしまいました。

こうなると防戦一方になり、引き分けで延長突入はできても勝ち越す可能性は下がります。結果的に田中のボックス付近でのボールロストがきっかけだったとはいえ、アディショナルタイムの失点は必然だったと言えます。

日本の攻撃力を支える選手の不在もありますが、後半はミドルサードまではボールを進められても肝心のファイナルサードで効果的なプレーは披露できませんでした。それはグループステージの出来からは決してスーパーなチームとは言えなかったブラジルが、百戦錬磨のカルロ・アンチェロッティ監督指揮のもと、負ければ終わりのノックアウトステージに入って本領を発揮したからでしょう。

日本が再び頂上に挑むにはまた4年、あらためて一から努力をしなければなりません。そしてワールドカップのノックアウトステージを勝ち上がる、という一つの大きな壁を突破しなければ先は見えません。


このページのトップヘ