22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2025年10月

この日、長谷部茂利監督は早め早めに動いて、攻めの姿勢を強めました。しかし、セレッソの堅い守りを破ることなく完封負けを喫します。

守備への意識は強かったはずです。J1トップの破壊力を帳消しにしてしまうような失点の多さを、選手たちが問題視していないとは思えません。

それでも最初の攻撃で決定機をつくったセレッソにそのまま押し込まれます。田中駿汰の大きなサイドチェンジを起点に、チアゴ・アンドラーデがダイレクトで中央に折り返すと、ラファエル・ハットンが確実にフィニッシュ。最終ラインを後ろ向きにさせられた川崎は、あっさりと先制を許しました。

川崎がアタッキングサードまで攻められないでいるうちに、セレッソに追加点を奪われます。田中の強烈な一撃が突き刺さりました。ここまでわずか7分です。

前半唯一と言っていいチャンスは、山本悠樹の相手GKと守備ラインの間を狙ったフリーキックでした。最後はマルシーニョがネットを揺らすもVARでオフサイドの判定となり、追撃は実りません。

点を取りたい川崎はハーフタイム明けの段階で2枚代えを行います。田邉秀斗に代えてフィリップ・ウレモヴィッチを入れて、佐々木旭を左サイドバックにし、さらに河原創を下げて大関友翔を送り込んで、攻撃を活性化させようとしました。

60分にはマルシーニョを下げて、家長昭博を投入。大畑歩夢のタイトなディフェンスに苦労していた伊藤達哉を左に回します。

一連の交代でサイドの深い位置やポケットこそ取れますが、肝心の中央で決定的なフィニッシュに至りません。そこは福井光輝を中心としたホームチームの守備に阻まれました。

惜しい場面はつくっています。ただ、ゴールまであと少しと言うほどの際どいチャンスはほとんどありません。

終盤はジェジエウやウレモヴィッチも上がって、得点を取りに圧力をかけるも、最後までゴールネットを揺らさずに終わりました。

序盤の2失点が大きく響いて敗れた川崎。最終ラインに負傷者が多いだけでなく、今回も不要なイエローカードをもらったウレモヴィッチの不安定さも気になります。

シーズン途中からの新加入選手がフィットする難しさを未だ抱えながら、残り3試合を戦います。


幸先のいいスタートを切りながら、失点を重ねて追い詰められる。今シーズンの川崎のパターンとも言える展開が、今節も繰り広げられました。

15分を前に3-0とリードしたことで、早くも勝利を確実にしたかに見えました。1点どまりでは今シーズンはどうなるか微妙ですが、この点差はさすがにセーフティリードのはずでした。

エリソンが強引に放ったシュートが決まり、4-0にスコアが変わると、あとはどう時間を進めるかという話に変わります。

そこで動いたのは清水ベンチでした。3バックから4バックに変更します。川崎と噛み合う形にしたことで、アウェイチームは戦いやすくなりました。

川崎としては相手の様子を見てじっくりプレーする方法もありましたが、特段大きな変化はさせずにいました。

前半にしては長い、6分のアディショナルタイムに古巣対決となった小塚和季に決められ、雲行きが怪しくなります。

後半開始直後にもあっさり失点し、2点差に詰め寄られます。時間はまだ充分ありました。

ムードのよくない中で、エリソンが不要なファウルで警告を受けてしまいます。長谷部茂利監督はたまらずエリソンに代えて小林悠を投入します。

その後、山口瑠伊が北川航也のPKを完璧に阻止し、逆に河原創の粘り強いプレスからの得点で5-2とします。

それでもホームチームに余裕があるとは言えず、清水ペースで試合が進みます。結果、北川にPK失敗のリベンジを許してしまいました。

最終ラインに負傷者が多いのが原因の一つではあるものの、守備の不安定さが川崎を中位近辺にとどめています。

今の川崎は打ち合い上等、という風ではなく、複数のゴールを奪えたとしても、失点を許しつつ辛くも逃げ切る試合が目につくチームです。

強者としてしたたかに勝ち切れない以上、上位に名を連ねることは難しいのが現実です。




来夏、最高の景色を見たいのであれば、この日のブラジルは倒しておかなければなりませんでした。ソウルでの韓国戦が現状のベストだったとすれば、東京でのセレソンは言わば「落とした」メンバー構成だったからです。

それだけに負傷者は多いとはいえ、今いる中ではベストな人選で臨んだ日本が、前半だけであっさり2失点したのはいただけません。

ネイマールのPKによる1失点で済みながら、点差以上に差を感じさせた国立競技場での前回対戦と比べれば、前半の日本はミドルで構えて引き過ぎないようにはしていました。

しかし、長期離脱から戻った谷口彰悟は中央にいたものの、代表経験が豊富とは言えない左右のセンターバックが隙を突かれてしまいました。

一方で日本の攻撃もポケット付近までは運べますが、強烈なフィニッシュでウーゴ・ソウザを脅かす機会をつくれません。

過去のブラジル戦同様、既視感を覚えるような見慣れた45分を終え、メンバーを変えないまま後半に臨んだ日本。ただし、戦い方を一変させます。

その振る舞いはカタールでドイツやスペイン相手に見せたのと同じでした。勇猛果敢にプレスをかけ、それが実ってミスを誘い、南野拓実が1点を返します。

すると森保一監督は堂安律とのコンビで右サイドを攻めていた久保建英に代えて、伊東純也を投入。久保はコンディションの問題もあったのかもしれませんが、キックの精度が上がっている背番号14が、その持ち味を存分に発揮しました。

まずファーへのクロスで中村敬斗のゴールをお膳立て。サイドから逆サイドへという攻撃は、アジア3次予選でも日本が披露してきた形です。

さらにコーナーキックで上田綺世のゴールをアシスト。チームとして磨きをかけているセットプレーでの得点です。フランスからベルギーに戻っても伊東の鋭さは錆び付いていません。余談として、その際に谷口が詰めていたのは流石でした。

カルロ・アンチェロッティ監督は、そこからレギュラークラスで固めることはせず、堅実な交代策を進めるばかりで、無理に勝とうというこだわりは見せません。

あるいは選手達がこの後、週末に所属クラブでのリーグ戦を控えているのを考慮したのかもしれません。

迫力が足りないながらも攻めるブラジルに対して、鈴木彩艶の安定した守りが時間の経過とともに光り、谷口を中心とした体を張った守備も奏功します。

3-3にされてしまえば、今までと同じ、何も変わらないということをわかった上でのプレーを選手達は続けました。

ホームの指揮官はというと、パラグアイ戦で準備ができていながらチーム事情で投入を見送らざるを得なかった望月ヘンリー海輝をここで送り込み、サイドの守備強度を高めます。

6分のアディショナルタイムを凌ぎ、35年を超える対戦の歴史の中で、日本がブラジルに初の勝利を収めました。もちろんホームでのフレンドリーマッチだけに手放しで喜べるわけではありません。

たとえば、韓国相手にクリーンシートを達成したエデル・ミリトンとガブリエウがセンターバックを務めていたら、アリソンかエデルソンが負傷していなければ、といったことが挙げられるからです。

とはいえ、スタンドが歓喜で満ちたのも無理はありません。現在、GKコーチを務める下田崇のファンブルなどが原因で2失点した旧国立競技場での親善試合や、崖っぷちの状況下、ドルトムントで先制しながら完膚なきまでに叩きのめされたワールドカップでの激突などを思い返すと、この勝利はやはり格別です。

現体制としては、アメリカ遠征の不出来から回復し、カタールで得た感覚を取り戻せた。その意味で収穫のある10月シリーズとなりました。


早々に伊藤達哉が先制しながら、一瞬の隙をつかれて須貝英大に同点にされ、またしても勝ち切れませんでした。

相手のプレスを剥がす攻撃の組み立て自体は、ここ数試合の中でも特にすばらしかったのですが、肝心のフィニッシュが決まりません。

三浦颯太のフリーキックは太田岳志の指先に阻まれ、脇坂泰斗のキックは際どいコースながら枠を外れます。

この日は山本悠樹が警告の累積で出場停止だったため、脇坂が攻撃の中心として奮闘しました。幅広く動き、巧みなボールキープでパスコースをつくっては、次へとつなげていました。

また山本がいないために三列目の構成が、河原創と橘田健人になり、守備面が安定しました。1失点で済んだのは2人の存在が大きかったと言えます。

さらに山口瑠伊不在により久々の出場となったチョン・ソンリョンも持ち前の安定感を披露して、ゴール前に立ちはだかります。

川崎は全体として矢印が前に向いており、センターバックの佐々木旭がたびたび持ち上がるシーンもありました。そうすることで京都が対応しづらい局面をつくります。

個々の働き、チームとしての連動。いずれもトップレベルのものを出してはいました。それだけに複数得点が取れなかったことが悔やまれます。

悔やまれると言えば、途中出場のラザル・ロマニッチがあえてファウルする必要のない場面で二度もファウルを犯したことが挙げられます。

せめてイエローカードを1枚受けた時点で自重してくれればよかったのですが、それができずに大事な終盤を10人で戦うことになりました。

ピッチに残った選手はそれでも決勝点を奪いに攻めました。数的不利を感じさせないプレーぶりです。それだけ勝ち点3が必要だったということです。

しかし、90分を通しての猛攻も1得点にしか至らず、足踏みを強いられる結果に終わりました。




このページのトップヘ