22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2023年10月

ジェジエウが遂に戦列復帰を果たした一方で、大南拓磨が深刻ではないかと思われる負傷。大南はもともとこのゲームには出場停止で出られませんでしたが、川崎は未だに離脱者続出の悪循環から抜け切れません。

そうした中での天皇杯決勝の前哨戦でした。この試合が終わると次の公式戦まで1週間強空くとはいえ、タイ遠征から戻ったばかりの厳しいコンディションで、残留争いの渦中にいる柏に対峙します。

前半はマルシーニョを走らせつつ、最後はバフェティンビ・ゴミスに合わせる形を狙って戦いました。ゴミスへのボールは徐々にですが、以前よりも合うようになっています。

ただ疲労もあってか、つなぎを大事にする川崎には珍しく、ミドルゾーンでパスが引っ掛かるケースが多く、山田雄士に先制を許した場面もそのミスが原因でした。柏からするとマテウス・サヴィオのスペースを突いた好判断のパスも、ゴールの決め手になりました。

失点のきっかけをつくってしまった瀬古樹は前半で下がり、BGパトゥム・ユナイテッド戦はハーフタイムで退いた遠野大弥が入ります。

逆襲のために比較的フレッシュな遠野が入ったものの、細谷真大に対するファウルがオンフィールドレビューの結果、退場の判定となりました。ただでさえ柏に比べてコンディションがいいとは言えない川崎は、60分になる前に10人での戦いを強いられます。

それでもアウェイチームは試合を捨てません。鬼木達監督が次々と交代カードを切り、システムも4-4-1から4-3-2へと変えていきます。

すると70分、脇坂泰斗が広げて山根視来がクロスを入れ、ゴミスがつくった後方のスペースに走り込んだ橘田健人が最後に合わせました。スタートから出ていた面々が、苦しい状況下で試合を振り出しに戻します。

その後は選手を入れ替え、細谷に集めて攻める柏の攻撃を全員で耐えながら、チョン・ソンリョンのところでは時間を使いつつも、チャンスと見れば攻める姿勢を貫きました。

特に脇坂、山根、橘田は最後まで労を惜しまずピッチを走り回りました。それゆえに柏に勝ち越しを許さず、逆に相手ゴールに迫るシーンをつくれたのです。

結局、1-1のタイスコアに終わりました。残留を確実にするために是が非でも3ポイントの欲しかった柏相手に、数的不利になりながらの引き分けです。川崎としては決して悪い結果ではありません。



リーグ戦はタイトルの可能性がなくなり、モチベーションの維持が難しいかに思われました。しかし、初のルヴァンカップ決勝進出を果たして意気揚がる福岡相手に、ホームでプロの矜持を見せて逆転勝利を収めました。

すでに負傷離脱していた佐々木旭に加え、登里享平までもが不在の左サイドバックには瀬川祐輔が入り、4-3-3で臨みました。

天皇杯の時のようにはスムーズに福岡を攻略できず、ボックスの深い位置まで入れない中、川崎はミドルシュートに活路を見出します。

まず瀬古樹が鋭い一撃を放つと、このところミドルが冴え渡る橘田健人も力強く振っていきました。キャプテンのシュートは村上昌謙に弾かれますが、それに反応した瀬川が狙い澄ましたシュートで先制します。

ところがこの日も前半のうちに福岡に追い付かれます。紺野和也のフリーキックがチョン・ソンリョンを襲い、こぼれ球をドウグラス・グローリに押し込まれました。

同点にされ、守りを軸とする福岡に主導権を握られだします。ビルドアップにも苦労し、ミドルゾーンまで進めても、そこから効果的に抜け出せません。

苦しい状況を打開すべく、後半は山村和也からロングボールを左右に散らすなど工夫を凝らしますが、オフサイドの判定が続いて実りません。

すると66分、一度は弾かれながらも粘り強くボールに寄せた山岸祐也に逆転弾を食らいます。悪い流れになり、暗雲が漂い始めます。

川崎は直後に三枚替えを実行。フレッシュな面々を送り込みました。それでも福岡の体を張った守備は強固で、バフェティンビ・ゴミスのオーバーヘッドは枠をとらえられません。

その後、小林悠とジョアン・シミッチを入れ、78分までに交代枠を使い切ります。前線は小林、ゴミス、宮代大聖とストライカータイプが並びました。

6分後、山村和也のロングパスに反応した小林が体を当てられながら巧みなシュートを懸命に放って同点に追い付きました。背番号11が期待に応えます。

息を吹き返した川崎は、少ない残り時間でも勝利にこだわりました。90+2分、小林の左足のクロスをゴミスが落とし、最後は遠野大弥が豪快に蹴り込みました。逆転弾です。

さらに4分後にはスローインに抜け出したゴミスのラストパスに宮代が滑り込んで勝ち点3獲得を確実にしました。ゴミスは2アシストの結果を残します。

不屈の精神で劇的に勝ち切った川崎。すぐ上の8位にいる福岡との勝ち点差は3になりました。



是が非でも取りたいタイトルのために力を尽くした川崎が、4-2で勝利して決勝進出を果たしました。

試合の入りは順調でした。ボールの循環がスムーズで、早々にコーナーキックを獲得。脇坂泰斗のキックに山村和也が合わせて先制します。

幸先のいいスタートを切れたことで、しばらくは余裕を持ってゲームを進められました。中央から攻める形もできていて、脇坂のスルーパスに反応したマルシーニョが村上昌謙に倒されてPKを得ます。

ところがレアンドロ・ダミアンが村上にPKを阻まれると、ムードが一変しました。福岡が活気を取り戻したのです。

ピッチの幅を使った攻めを見せていた福岡は、登里享平のスローインのボールを奪って流れるような崩しを披露。最後は金森健志のシュートで同点に追い付きます。

公式戦では負け試合の多い今シーズンだけに、会場となったホームスタジアムに淀んだ空気が漂い始めました。

ハーフタイムでの切り替えがうまくいかずに後半の入りも悪く、福岡ペースで始まりました。ここで逆転を許していたら、川崎は立ち直れなかったでしょう。

この悪い流れを引き戻したのが家長昭博でした。ここ2試合は温存ではない理由で欠場した模様ですが、大事なこの一戦には間に合った背番号41。ボールをキープし、保持する時間を増やしてチームを安定させました。

落ち着いてきたところで橘田健人のミドルが炸裂。奈良竜樹に当たって入ったとはいえ、先日の蔚山現代戦に続く豪快な一撃でした。再びリードできたことで空気も変わります。

70分、福岡のコーナーキックからの攻撃を守り切るとチョン・ソンリョンがロングキック。中央に正確に蹴り出されたボールにマルシーニョが追い付き、飛び出しが中途半端になった村上の前でループシュートを放ちます。ボールは転々としながらゴールに入りました。

試合を決定づける3点目が入り、ベンチメンバーを中心に得点したマルシーニョに駆け寄る一方、貴重なアシストをしたチョン・ソンリョンを讃えに行くメンバーもいました。

とどめは脇坂のコーナーキックに合わせたレアンドロ・ダミアンの叩き付けるヘディングでした。苦しいシーズンを送っていて、PK失敗もあっただけに喜びを爆発させ、思わずユニフォームを脱いでしまいました。

高井幸大を入れて3-5-2に変え、逃げ切りをするはずが終了間際に失点したのは今後への反省点ですが、ともあれ勝ち上がりこそが最も大事な試合を90分で勝ち切りました。

決勝は2ヵ月後の12月9日。先に進出を決めた柏レイソルとの対戦です。










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