22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2023年05月

簡単にボールを下げてしまえば、前半終了のホイッスルが鳴ってもおかしくない時間でした。

しかし、大島僚太の広げたパスを受けた登里享平は前進することを選択。脇坂泰斗の落としを受けて、最後は右足で巻くシュートを叩き込みます。押し込んでいた中での貴重な追加点でした。

決めた直後に小林悠に抱き付かれた際、左肩を痛める不運に見舞われますが、腕章を巻いた背番号2はフル出場を果たします。

この日の川崎は強い気持ちがプレーに現れていました。攻撃ではサイドにつけるよりも、可能であれば中央を選んでおり、得意のショートパスにも強さがありました。

守備に関しては前線から激しさを持って行い、家長昭博が二度ハードなタックルでボール奪取に成功したり、終盤に脇坂がプレスバックでマイボールにしたりするなど、チームとしての意識の高さを感じさせます。

開始30秒ほどで最初の決定機をつくり、出足は上々でした。前半は4-4-2で構える柏を圧倒し、アンカーのジョアン・シミッチも果敢にゴール前に出てきます。

先制点は一瞬の隙を逃さない姿勢が実りました。21分、川口尚紀のスローインを受けた立田悠悟に小林がプレスをかけてボールを奪い、確実にゴールに決めました。

その後も優位に進める中で、逆にビルドアップのミスから細谷真大にシュートを打たれますが、ボールは枠を外れていきました。ここで失点していれば、川崎の勢いは削がれたかもしれません。

実際には前半終了間際に2点目を取れたため、安心はできないとはいえ多少は楽になりました。

柏は後半開始とともにジェイ=ロイ・フロートと武藤雄樹が入り、ブロックをつくってカウンターを仕掛けるよりも自分達から出ていく形に変えてきました。

その分、ライン間が空いてピッチにはスペースができますが、柏は1対1のディフェンスを個々が責任を持ってタイトにやり切るようになりました。

ゆえに川崎は前半ほどには主導権を握れなくなっても、見事な連携から大島がポストを叩く際どいシュートを放ったようにゴールに向かう姿勢だけは忘れません。試合を決める3点目こそ取れなかったものの、90分で17本のシュートを数えました。

交代は3人にとどまりましたが、最後まで集中を切らさずにクリーンシートを達成。公式戦の連敗を3で止めました。

悪い流れを勝利で断ち切り、次節は首位を走るヴィッセル神戸とのアウェイゲームに臨みます。


※ヴィッセル神戸戦は中止になりました。


どういう状況であれ、連敗は避けたい一戦でした。しかし、川崎はハーフタイム前後に食らった二発のカウンターに沈んでしまい、シーズン6敗目を喫します。

この日は出場できない大南拓磨、ジョアン・シミッチ、脇坂泰斗に加えてマルシーニョも不在という中、ピッチに立った選手の奮起が求められる90分でした。

瀬古樹のミドルを皮切りに川崎が攻勢に出る流れをつくりますが、真ん中を厚くした5-2-3で待ち構える横浜FCの陣形を思うように崩せません。

継続して相手陣内のサイドでショートパスをつないで穴を探すも、ホームチームは簡単には乱れないため、肝心のボックスへの侵入ができずに時間が過ぎていきます。

横浜FCは遠目からのセットプレーしか攻め手がなかったところ、やがて放たれた長谷川竜也のミドルが両者にとって最初の決定機になります。ここは山村和也の頭をかすめてクロスバーを叩きました。

シュートの形ができて風向きが横浜FCに変わると、長谷川も絡んだカウンターで、伊藤翔のパスを受けた井上潮音が落ち着き払ったボールコントロールを見せて先制します。44分のことでした。

後半開始直後にも山下諒也のスピードに車屋紳太郎が振り切られて失点。今節も2点のビハインドを背負います。

鬼木達監督はすぐさま動いて久々の登場となる佐々木旭と瀬川祐輔を投入。家長昭博のベースポジションをトップ下に変えます。

家長に中央で自由を与えた格好ですが、交代時に大島僚太が下がった影響か、家長頼みのプレーが増え始めました。全体の運動量と連動性が回復するには、小林悠が送り込まれて2トップに変わった76分まで待たなければなりませんでした。

その間に瀬古がコースを狙ったフリーキックで1点を返しますが、次の1点が遠いままでした。

小塚和季の鋭いフリーキックに小林が合わせた場面はスベンド・ブローダーセンの好セーブに阻まれ、以降の迫力ある怒涛の攻撃も得点には結び付きません。山村を前線に上げてのパワープレーも実らずタイムアップとなりました。

出番を与えられた選手たちは結果を出そうとはしていました。それだけに報われない敗戦となったことが残念でなりません。






半年ぶりとなる多摩川クラシコは、東京のアグレッシブでタイトな守備に手を焼く間に2失点し、逃げ切りを許す格好となりました。

高井幸大がU-20ワールドカップに向けてチームを離れたものの、幸いにも登里享平が1試合の離脱で済んだため、センターバックは大南拓磨と車屋紳太郎で組みます。

ホームの東京は、強度高くゲームに入ってきました。それゆえ川崎はパスミスが目立ち、アタッキングサードにボールを運ぶのに苦労します。

ようやく11分に瀬古樹の判断のいいパスをきっかけに、家長昭博からのリターンを受けた瀬古が川崎最初のシュートを放ちました。ところが、ここからリズムに乗るかと思われた矢先に先制を許します。徳元悠平にポケットの手前から決められたのです。

勢い付いたホームチームは25分にも徳元のラストパスに安部柊斗が飛び込んで加点。最初は川崎のスローインでしたが、ボールを受けたジョアン・シミッチがロストしての失点です。連勝中にはなかった相手の先制点の後、30分経たないうちに2点ビハインドとなります。

それでも次第に東京に立ち上がりほどの強度が失われつつあり、川崎の相手を外す動きも出てきます。39分には瀬古が巧みな動きでボールを運んで、最後は宮代大聖が木本恭生に前を塞がれながらもわずかなシュートコースをつくりフィニッシュ。反撃の狼煙を上げます。

前半のうちに1点返せたのは大きく、後半さらにギアを上げたいところでしたが、49分の脇坂泰斗のプレーがVARの介入により、最終的に退場処分となりました。前回対戦同様に数的不利の戦いを強いられます。

川崎はそのまま4-4-1で数分プレーした後、大島僚太と遠野大弥が入った際に、家長を宮代の横に立たせた4-3-2に変更。あくまでも得点を取りに行く姿勢を見せます。

ここで上福元直人の存在が生きます。ボックスの外でのボール回しでセンターバックの間に立つため、最後方で3人が並ぶことができます。人数の確保ができることで、両サイドバックが攻撃に重心を置けました。

一方の東京は1人多いことを活かして積極的に出る場面は少なく、しっかり構えて隙をつくらない形をとりました。攻める川崎、守る東京の構図が明確にできます。

鬼木達監督が交代を進め、前線のタレントを変えながら攻撃に出ますが、ヤクブ・スウォビィクを中心とした守備は固く、遠野による決定機が2回ありながら得点が奪えません。

終盤は大南が前線に上がるも、森重真人へのファウルとなった際、脳震盪の疑いが出て交代を余儀なくされました。

退場者や累積警告、さらにはアクシデントまであって次節への不安が募る上、連勝も止まってしまいました。同点に追い付くこともできず、多摩川クラシコでは5年ぶりの敗戦です。






ウノゼロではありましたが、最後まで球際の激しさを見せて3連勝、そしてリーグ戦でのホーム初勝利を飾りました。

登里享平がベンチにも不在の最終ラインは、車屋紳太郎がそのポジションに入り、大南拓磨、高井幸大が中央を守ります。

開始早々にマルシーニョのファーストタッチから連携でシュートまで持ち込み、一気にホームチームに流れが来るかに思われましたが、鳥栖にもボールを保持する時間があり、しばらくは一進一退で推移しました。

それでも前半の終盤になると、左は中央の脇坂泰斗、ジョアン・シミッチからマルシーニョへの展開で、右は山根視来と家長昭博の絡みで攻撃を仕掛けていきます。

不調時にはチーム全体としてボックスへの踏み込みの甘さが見られたものの、今はすっかりそんなこともなくなりました。今節はマルシーニョがスタメン復帰してさらに迫力を増しています。ただ、朴一圭の好判断もあり、得点には至りません。

スコアレスとはいえ、ここまでのいい流れを止めない意味でも、後半頭から大島僚太がピッチに入って前への圧力を強めます。

早速、アタッキングサードでのつなぎから車屋とシミッチの強烈なシュートが続けて枠を叩き、ゴールの可能性が高まりました。

52分、スローインを起点に家長が冷静に浮き球を中央に送ると、相手守備陣の隙をついて走ってきた脇坂がトラップの後、軽いタッチで蹴り込んで先制します。

先制後、鳥栖のカウンター局面がありましたが、ここはドリブルで持ち込んだ本田風智のシュートをシミッチが体を張ってブロックしました。

以降はマルシーニョに代えて遠野大弥を入れるなど、システムを変えずに人を変えてプレー強度を保とうとします。ピッチでは上福元直人を中心に時間を使いながらプレーを続けました。

最後は鳥栖陣内の深い位置でボールをキープ。フリーキックも取りながら、しっかり逃げ切って勝ち点3を獲得しました。

唯一のスコアラーである脇坂は、78分に橘田健人と交代するまでディフェンスでも大いに貢献。果敢なプレスバックで鳥栖の攻撃を阻止しました。

これで暫定6位まで順位を上げた川崎。次は5日後の金曜日に国立競技場でFC東京との多摩川クラシコです。


前節、80分近く引っ張った同じメンバーで中3日での連戦。この条件で結果を出すのは難しいかと思われましたが、交代策が当たり、最終的に劇的ゴールで勝利をつかみました。

序盤の川崎はビルドアップで苦労し、また縦方向を強く意識した京都のテンポのいいボール回しに手を焼きました。今シーズンたびたび見られた悪い流れです。

それでも車屋紳太郎や登里享平の粘り強い対応もあって失点せずに乗り切り、瀬古樹がジョアン・シミッチの脇に立つ時間が増えて守備が安定しだします。

すると34分、脇坂泰斗が宮代大聖と絡んで一度はネットを揺らしました。しかしオフサイドの判定により得点は認められません。

ここから川崎の攻撃に勢いが生まれました。ただ、コーナーキックを取る場面もなく、決定機をつくれないまま45分を終えます。

後半は京都の曺貴裁監督が先に交代カードを切り、パトリックらが入った一方で、鬼木達監督が動いたのは残り25分を切ってからでした。

まず、長らく戦線から離脱していたマルシーニョがピッチに戻ってきました。おそらくまだプレータイムは限定されるでしょうが、左サイドを疾走する川崎のストロングポイントの復活です。

その後、京都の得点がオフサイドで取り消された後、80分に5人目の交代として小林悠が送り込まれました。これで是が非でも勝ちに行く形ができあがります。

それでもしばらくスコアは動かず、猛攻を仕掛けて山根視来のクロスに小林が合わせたシュートも若原智哉に防がれました。

健闘虚しく引き分け濃厚の気配が漂う中、ボックス手前でマルシーニョのパスを苦しい態勢ながら受けた大島僚太がファーサイドにラストパスを送り、それを小林が確実に、若原に触られないような軌道のヘッドを決めてみせました。90+4分のことでした。

小林は感情の昂ぶりを抑え切れずにユニフォームを脱ぎ、背番号11をサポーターに向けて力強く掲げます。

川崎はこのまま逃げ切り、完封で今シーズン初の連勝を飾りました。暫定順位で1つ上にいた京都を直接下し、10位に浮上です。西日本でのアウェイ2連戦をものにして、サガン鳥栖戦に向けてホームへと戻ります。


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