22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2023年02月

開始早々の失点、右センターバックのDOGSOでの退場が2試合続けて起こり、知念慶の古巣相手の一撃によるスタートダッシュ失敗は避けられないかに思われました。それでもあきらめない姿勢を貫き、逆転で今シーズン初勝利を収めます。

鹿島の守備には手を焼きました。川崎のビルドアップの際、ハイプレスをかけることは少なく、ジョアン・シミッチを鈴木優磨が執拗に監視し、ウイングの藤井智也と知念はサイドに張るより内側に立って中央のパスコースを塞いできました。

これではサイドバックがシミッチの脇に立って中央でボールを動かすのは難しく、序盤は中盤を省略した後方からのロングボールが目立ちました。

中央を固めた守備は鹿島の最終ラインも同様で、川崎がサイドからゴール付近に進入できてもボックスの中での効果的なフィニッシュには結び付きません。

鬼木達監督は56分にシミッチに代えて佐々木旭を入れ、この日は左サイドバックだった橘田健人をアンカーに移します。シミッチよりフレキシブルに動けるキャプテンが中盤センターに立つことで、ボールの循環が改善されました。

さらに72分に遠野大弥を送り込んで、前線に飛び出せる選手を増やし、79分には三枚代えをした上、キープ力があり、ゲームをコントロールできる家長昭博を右ウイングからトップ下に変えた4-2-3-1にシステムを変更します。

その矢先、山村和也が決定的な得点機会の阻止でレッドカードをもらってしまいます。すでに交代枠は使い切っている中、川崎は最終ラインの人数を変えず、3人に減った状態で戦います。

追い込まれて吹っ切れた川崎は、数的不利を解消できるコーナーキックのチャンスを得ると、瀬古樹のキックは一度阻まれたものの、クリアが小さかったため大南拓磨が再びゴール前に頭で送ります。家長がそれをバイシクルで打ち、山田新が懸命に触ってネットを揺らしました。

流れは完全に川崎のものとなり、一気に目覚めたかのように怒涛の攻撃でPKを獲得。荒木遼太郎はハンドの判定で退場となります。家長のグラウンダーのPKは早川友基に完璧に止められましたが、VARの介入があってやり直しとなり、二度目は浮かせたボールで決めてみせました。

その後は鹿島がパワープレーを仕掛けるも、ボールが川崎ゴール前に到達する回数が少なく、ようやく届いて植田直通が合わせたシュートも枠を外れて事なきを得ます。

アウェイでの非常に難しい状況を打開した川崎の選手は、試合後に優勝したかのように喜びを爆発させました。新機軸が機能したとは言えないゲームではありますが、レギュラープレーヤーを複数欠いた、台所事情の苦しい中での劇的勝利はチームに活力を与えるはずです。



負けはしました。ただ、今シーズンの川崎が大きな可能性を秘めていることをピッチ上で表現した一戦でした。

確かにホームでの開幕戦で相手はライバルの王者F・マリノス。負けたくない要素が多いゲームではあります。その中で決して揺るがず、屈しない姿勢を見せたことが賞賛に値するのです。

失点はいずれも自陣でのビルドアップのミスが絡んでいました。早々に先制を喫した際にはチョン・ソンリョンの浮き球のパスがエウベルに引っかかり、落ち着き払った西村拓真に決められましたし、2失点目もコーナーキックからのゴールでしたが、コーナーを与えたきっかけは山根視来のつなぎのパスミスでした。

それでも今まで以上に中央とハーフスペースの3つのレーンを恐れず重点的に使ったビルドアップへの取り組みは意欲的であり、魅力的です。山根を橘田健人のそばに立たせてGKやセンターバックの前方のパスコースを増やし、そのすぐ前まで宮代大聖が落ちて受ける形も頻繁に見られました。

特にハイラインでハイプレスの厳しいF・マリノス相手に自陣でつないで掻い潜ることができれば一気にチャンスが生まれます。複数人が絡んで佐々木旭から遠野大弥へのスルーパスへと結び付く流れは見事でした。

後半は次第に失速したため、まだまだ改善の余地はあるものの、どちらかと言えば現実的な戦いをして勝ち点を重ねた昨シーズンとは目指すものが明らかに違います。

残り時間が少ない中で、数的不利にもなりながら橘田がコースを狙ったシュートで1点を返せたのも今後につながるはずです。

追撃の1点をアシストした2年目の佐々木は目覚ましい成長を見せており、新たに背番号5を背負った自覚もあってか、パスコースを見つける冷静さとオーバーラップを仕掛ける大胆さを兼ね備えた頼もしいDFになっています。

当面の不安材料としては車屋紳太郎が負傷交代したこと、また次節に関しては退場処分を受けたジェジエウも出場停止で出られないことが挙げられます。車屋に代わって左センターバックで入った大南拓磨は硬さがあったのか積極性を欠いて、パスのほとんどを近くの佐々木につけてしまい、F・マリノスのプレスの標的にされていました。

スタートに間に合ったものの家長昭博はハーフタイムまでの45分しか出られず、負傷でレアンドロ・ダミアン、小林悠が不在の戦いながら、今後に非常に期待の持てる幕開けとなりました。


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