22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年11月

歴史上、これまで勝ったことのないドイツにワールドカップの舞台で勝ちながら、これまで一度も負けたことのなかったコスタリカに敗れました。せっかく取った初戦の勝ち点3を無駄にした格好です。

前半は立ち上がりに日本のファウルが目立ち、やがてコスタリカに付き合う形でスローテンポになりました。初戦の勢いを維持することができず、勝ち点3は欲しいけれど、失点を恐れた慎重なスタンスです。

日本は途中からメンバー変更をしないで3バックにシステムを変えましたが、互いに取り立てて決定機のない、言わば退屈な45分でした。

後半、2枚替えでスタートした日本。高さ、そしてレフティである点を買われての起用と思われる伊藤洋輝、そしてスピードが持ち味の浅野拓磨が送り込まれます。

伊藤には積極性も求められたはずですが、すぐ近くの吉田麻也につけるパスが多く、攻撃のスイッチを入れるには至りません。突破が期待できる三笘薫が入った後も同様で、どこかゲームに入れていないようでした。

時間は流れ、75分以降は両者が勝ち点3を意識したオープンな戦いを始めます。そこで81分、吉田の曖昧な、時間帯と場所を無視したようなクリアが日本に混乱をもたらします。

守田英正は予想外とも言えるクリアボールを処理できず、伊藤はラインを上げるタイミングが遅れ、ケイシェル・フラーに決められました。

その後は三笘の仕掛けで深く、ボックスの中まで攻め入るものの、ラストパスを受ける味方が決定的なシュートを打ち切れず、先制して守備モードのコスタリカに死守されます。

日本は終始、前線の選手が相手最終ラインとの駆け引きにばかり執着して、中盤で下がって受ける動きが多くありませんでした。

結果、サウジアラビア同様、初戦で歴史的勝利を挙げながら、同じように2戦目を落としました。

日本が次のステージに進めるかどうかはスペイン戦次第となりました。彼らの圧倒的なポゼッションにどこまで対抗できるか。得点を奪えるか。まだグループステージ突破を決めていない相手だけに、極めて難しい試合になることは間違いありません。








必死で抵抗を試みますが、日本はあまりに無力でした。守備が決壊するのは時間の問題と思われました。

遠藤航、鎌田大地でイルカイ・ギュンドアンからボールを奪い、前田大然がゴールネットを揺らしたシーンがオフサイドと判定されて取り消された後、ドイツは猛攻を仕掛けてきました。

人数をかけてプレッシャーをかけてもいとも簡単に揺さぶられ、狭いスペースでも余裕を持ってボールを動かされました。ドイツはいつでもとどめを刺せるかのようなふるまいで、日本を自陣深くに押しとどめます。6月のブラジル戦を思い出すような展開でした。

前半半ば過ぎ、権田修一がPKを献上。これをギュンドアンに決められてからも、ドイツは完全には手を緩めません。ハーフタイムまでに追加点を取られていれば、試合展開は大きく変わっていたはずです。イランやオーストラリアと同じく、強豪国に蹂躙されてもおかしくありませんでした。

しかし、森保一監督による戦い方の変更が流れを引き寄せます。フィジカル勝負で劣勢だった久保建英を下げ、冨安健洋を投入。3-4-2-1、実質5-2-3にシステムを変更しました。

これにより、深い位置で5レーンすべてを埋め、最終ライン一人ひとりの対応する幅を狭めます。守り方が整理されたことでチームは安定しました。傷口を広げないためのベタ引きではなく、勝つための手当てが施されたのです。

後半頭の変更にとどまらず、日本は積極的に得点を取るために交代カードを切ります。長友佑都に代えて三笘薫を同じ位置に送り込み、酒井宏樹が負傷した際も伊東純也を残して右ウイングバックを任せました。この時、代わりに入ったのは南野拓実です。

また田中碧を下げた際、鎌田をシャドーから一列後ろにポジションを変えさせ、送り込んだ堂安律にシャドーの役割を託します。

その間、ハンジ・フリック監督はトーマス・ミュラーとギュンドアンを下げ、引き続き余裕を見せる交代策をとりました。点差は1点でしたが、日本相手に失点を喫することはないと見切ったかのような采配です。

しかし、75分、冷静に状況に向き合っていた三笘を起点に南野がフィニッシュ。マヌエル・ノイアーに防がれるも、堂安がこぼれ球を押し込んで同点に追い付きます。

さらに8分後、遠藤が自陣で受けたファウルによるフリーキックで板倉滉が前方に蹴り出すと、浅野拓磨が見事なコントロールでボールを収めて前進。ノイアーのニア上を射抜くシュートを放ちました。前半は涼しい顔をして手を汚さずにいた世界トップレベルの守護神から、日本が2点を挙げてみせたのです。

終盤になって慌てたドイツはロングボールを多用し、セットプレーではノイアーが上がってきましたが、日本は辛抱強く守って勝利を収めました。

この日は森保監督の的確であくまでも勝利を重視した修正力が実を結びました。まだ初戦が終わっただけであり、中3日で試合が続くタイトなスケジュールですが、ワールドカップで初めて逆転勝利を挙げた、それも優勝4回の強豪相手に挙げたことがプラスに作用するはずです。


残りはトータルで約1時間。早くも交代カードを切らざるを得ないシチュエーションになりました。そこで複数のポジションをこなせて、なおかつ運動量が豊富な橘田健人をピッチに残したのには大きな意味がありました。

鬼木達監督は登里享平を下げて、緑色のユニフォームを着た丹野研太を送り込みます。橘田は左サイドバックを任されました。

ハーフタイム明けにはこれまた苦渋の決断と思われる交代が行われます。攻撃のキーになる脇坂泰斗に代わって車屋紳太郎が入り、橘田は再び中盤にポジションを戻しました。

しかし、橘田が前に出やすい位置になったことで、61分にはゴールライン付近で森重真人からボールを奪い、マルシーニョのゴールにつなげることができました。

こうして攻め手の見つかりにくい苦しい状況で活路を見出したのです。

29分にチョン・ソンリョンがアダイウトンへのファウルで一発退場となり、この日も厳しいゲームになりました。ただ、その時点ですでに脇坂が鮮やかなミドルを叩き込んで先制していたように、90分を通して常に先手をとれていたため、数的不利にも耐えられました。

とはいえ、10人になってからハーフタイムまではいつもの戦い方を捨てざるを得なくなったために修正が難しく、東京に押し込まれてしまいます。相手には裏抜けを試みる選手も多く、マルシーニョが最終ラインに吸収されそうな位置まで下がる事態に陥りました。それでも防戦一方ながら前半はゼロに抑えられました。

後半、メンバーを代えて守備重視にシフトし、戦い方が整理されたものの、立ち上がりと勝ち越し後にアダイウトンにゴールを許してしまいます。2失点目はダイナミックに揺さぶられた末のものでした。

アウェイチームが得点を奪う作業は困難を極めましたが、再び追い付かれた直後に車屋の鋭いクロスがオウンゴールを誘発。三度リードを奪います。

その後、80分にマルシーニョを下げて山村和也を入れ、ジェジエウと谷口彰悟の間に立たせた5バックに変更します。4点目を狙うより、確実な逃げ切りを目指し、東京陣内深くに進んだ際には家長と知念慶を中心にボールキープをして時計を進めました。

川崎は全員が最後まで懸命にピッチのあらゆるところで体を張り、多摩川クラシコを制してディフェンディングチャンピオンの意地を見せました。

しかし、タイムアップ後、別会場で勝利した横浜F・マリノスの優勝が決まって、鬼木体制では初の無冠に終わりました。

ジェジエウが7月半ばまで戦列に戻れないハンデを背負いながらの今シーズン。すべての公式戦が終わって振り返ると、ここ数シーズンとは違って新戦力の突き上げ、底上げが乏しかったことが結果的にF・マリノスとの勝ち点差、得失点差につながったと言えるかもしれません。

今までの蓄積を生かして勝負強さを随所に見せたものの、連戦になると勝ち点を伸ばせませんでした。過密日程を乗り切るだけの戦力が揃っていたとは言えないでしょう。

また、新型コロナウイルスの影響は例年以上に大きく、7月下旬はフィールドプレーヤーの離脱が続出して試合開催が危ぶまれるほどでした。

こうした中、昨シーズン終盤はベンチ外も珍しくなかったジョアン・シミッチの奮闘は、チームを大いに助けてくれました。チームトップタイの12ゴールを記録したベテランの家長の働きは言うまでもないでしょう。

とにもかくにも今シーズンの結果を真摯に受け止め、来シーズンの王座奪還、タイトル獲得に向けて前進するほかありません。


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