22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年10月

小林悠がボールを受けてシュートに持ち込もうとした際、ペナルティボックスの中に踏み入れた左足。そこに小林友希の足がかかり、直接狙うには難しい距離のフリーキックの判定がPKに変わりました。

VARのおかげで大きく広がった得点のチャンスを家長昭博が決め切り、84分に勝ち越しに成功します。蹴ったボールは坪井湧也に触られましたが、押し切りました。

1点取っただけではわからないという、最近の川崎を象徴するような非常に危ういゲームでした。後半立ち上がり、神戸ペースで進む中で与えてしまったフリーキック。これを叩き込んだ小林祐希の一撃は見事でした。復帰した守護神、チョン・ソンリョンも止めようがありません。

前半、家長のクロスを生かしたマルシーニョのゴールで先制した後、小林悠がボール奪取から迎えた決定機を逃したことが悔やまれる流れです。試合間隔があったためか、川崎の攻撃は迫力を欠いていました。

同点に追い付かれ、最終節を待たずして無冠という結果が現実味を帯びてきました。山根視来が橘田健人と絡んで狙ったシュートはポストを叩きます。

鬼木達監督は大島僚太、ジェジエウ、知念慶と戦列復帰したプレーヤーを続々とベンチからピッチに送り込みました。勝たなければわずかな可能性が途絶えてしまうのです。

川崎が外回りでボールを動かし、神戸はボックス近辺に人数をかけて守ります。それでもやはり中央を攻略しなければ得点には結び付かない状況で、空いていたスペースに進んだマルシーニョが小林悠につけたパスが奏功したのです。

再びリードした後、既に残留が決まっている神戸はあきらめずに攻めてきました。パワープレー気味に長いボールを多用し、襲い掛かります。

また、74分からピッチに入ったアンドレス・イニエスタが攻撃にアクセントを加えようとしますが、大島が要所でパスを止め、決定的な仕事をさせません。

結局、試合を通じて体を張ったプレーを続けた川崎が逃げ切りました。

横浜F・マリノスが大勝したため、勝ち点差は2のまま最終節に突入することとなりました。得失点差に11の開きがあり、川崎が勝ってF・マリノスが敗れた時のみ三連覇達成という難しい状況には違いありません。


現実的な目標として、アウェイの北海道コンサドーレ札幌戦で消えかけた「三連覇」が再浮上してきました。一戦必勝の戦いの中に光が差し込みます。

中3日の連戦とはいえ今週末に試合はなく、次のヴィッセル神戸戦まで2週間以上あります。それだけに全員が余力を残さずに出し切るほど高い強度でプレーしました。山村和也、谷口彰悟も機を見て前に出て行きます。

攻撃面で際立っていたのは脇坂泰斗でした。サポーターの煽り方にまだ思い切りが足りない背番号14ですが、ボールを持ってのプレーには気迫がみなぎっていました。

目下、川崎の大きな得点源になっているコーナーキックで、この日も脇坂は正確なキックを繰り出します。9分には谷口の、22分には橘田健人のゴールの起点となりました。先制点のアシストは戦列復帰したチャナティップ・ソングラシンでした。

開始当初は京都のハイプレスをかいくぐるべく、縦への速さを意識した攻撃を主体にしながら、得点を重ねるごとに余裕も生まれ、徐々に慣れたピッチを存分に使った攻撃にシフトします。

後半、相手のシステム変更にも動じることなく、61分に3点目を奪いました。

右サイドでいつものように山根視来、脇坂、家長昭博が絡んで、一旦はロストしますが、最後は脇坂のクロスにマルシーニョが体を投げ出すようにして押し込みます。

この日はジョアン・シミッチが出場停止でマルシーニョとのホットラインはありませんでしたが、代わりに脇坂とマルシーニョの間に良好な関係が形成されました。得点シーン以外にも脇坂から効果的なパスが背番号23に届けられます。

その後、パウリーニョにゴールを許すも、丹野研太が荻原拓也のシュートを止める場面もあり、交代カードを切りながら危なげなく勝ち切りました。

朗報はまたも試合終了後に訪れます。首位の横浜F・マリノスが最下位のジュビロ磐田に敗れ、川崎との勝ち点差は2に縮まったのです。

得失点差を考慮すると、依然としてF・マリノスが残り2試合で勝ち点4を取れば、川崎が連勝しても優勝はできません。それでも強烈なプレッシャーをかけられる位置につけることができました。


一時は清水の勢いに飲まれかけました。三連覇のためには引き分けさえ許されない状況下で、後半頭からギアを上げたアウェイチームに逆転を許したのです。

それでも声援の響く等々力で最後まで戦った結果、試合をひっくり返して勝ち点3を獲得しました。

守備陣を中心に台所事情が苦しい中、前半は主導権を握れました。何度も高い位置でボールを奪えており、4-4-2で構える清水の守備網を怖がることなく、谷口彰悟や脇坂泰斗が前方へのパスを繰り出します。

また全体のバランスの維持に努めた動きもありました。遠野大弥、脇坂がしばしばセンターバックの横にまで下がり、代わりに山根視来、登里享平がポジションを上げて攻め手を増やします。特に山根はハーフスペースに立つ場面が多く見られました。

川崎は統制の取れた攻撃を続けて、28分に先制します。脇坂のコーナーキックは鈴木義宜にクリアされますが、それを拾った遠野が左足で豪快な一撃を食らわしました。

以降の川崎は圧倒的優位に立ちます。いつ追加点が取れてもおかしくないほどで、前半終了間際には権田修一のキックミスを逃さずに攻め込み、脇坂がシュートを放つ決定機がありました。権田はその前に谷口と接触した際に負傷し、前半だけで退きます。

ホームチームのリードはわずかに1点。最近の悪い流れを考えるとセーフティーリードではありません。案の定、右サイドを使われて失点を重ねます。主に前半から手を焼いていたカルリーニョス・ジュニオにやられました。

1-2になり、鬼木達監督は知念慶を投入。小林悠は残したまま、4-4-2へとシステムを変えます。しかし、傷口を広げる追加点こそ許しませんが、同点にも追い付けないまま時間は刻一刻と流れていきました。

残り15分を切ったところでのコーナーキックで、ようやくスコアをイーブンに戻します。脇坂のボールに合わせた山村和也のヘッドが、柔らかい軌道を描いてゴールに吸い込まれたのです。

同点弾からわずか2分後のゴールも、山村が相手ペナルティボックス近くまで出てきたことで生まれます。山村のクロスをマルシーニョがバランスを崩しながら当て、それに反応した小林が体をひねりながら右足に当てました。執念の塊のようなプレーの連続で逆転です。

再びリードした後は、知念の左肩負傷がありましたが、交代カードを使いながら逃げ切りました。アディショナルタイムには権田に代わって入っていた大久保択生も上がった清水のコーナーを防ぎ、マルシーニョが抜け出してビッグチャンスが到来するも、シュートは無人のゴールに届きませんでした。

同時刻キックオフのゲームで、横浜F・マリノスがガンバ大阪に敗れたため、勝ち点差は5に縮まります。史上2チーム目の快挙達成に向けては、依然として厳しい状況に変わりありませんが、今節3つのゴールで勝てたことで可能性は残りました。


数的不利にもかかわらず、是が非でも必要な勝ち点3のために得点を奪うべく谷口彰悟が持ち場を離れた中での失点でした。

瀬古樹と山根視来で守っていた中央に攻め込まれ、最後はキム・ゴンヒのパスを受けた小柏剛に決められてしまいます。右膝を痛めていたチョン・ソンリョンも止められません。

この試合は後半にアクシデントが続出します。センターバックを務めたジェジエウ、車屋紳太郎が相次いで負傷。しかし、ベンチに山村和也はいませんでした。

加えて途中から左サイドバックを担当した橘田健人が退場処分を受けるとともに、前述のチョン・ソンリョンの負傷がありました。この時点で交代枠は残っていません。丹野研太を起用しようにもできなかったのです。

日本代表の遠征でドイツから帰国したばかりの谷口、山根のベンチスタートは致し方ないとはいえ、結果的に両者を投入せざるを得なくなります。

まず1-1の状況でPK献上のファウルを犯した佐々木旭に代えて、後半頭から山根を投入。谷口はジェジエウの負傷を受けての交代でした。これで5枚の交代カードのうち2枚を切ることとなります。

谷口投入時に小林悠をジョアン・シミッチに代えて送り込んで2トップに変え、縦への速さを重視した攻めではなく、札幌のマンツーマンに苦しみながらも通常のリズムでプレーし始めたことは奏功しました。

流れは大きく変わります。脇坂泰斗のクロスを小林が頭で合わせたシュートは菅野孝憲に阻まれるも、こぼれ球に登里享平と知念慶が詰めました。ゴールラインを割ったか微妙な状況にVARが介入した末、知念のゴールが認められて2-2に追い付きます。

さらに69分、マルシーニョのパスを受けた小林が一時は勝ち越しとなる得点を挙げました。

鮮やかな逆転劇でこのまま勢いに乗りたかったのですが、耐え切れずに崩れていきます。知念を遠野大弥に代えて、中盤を厚くしつつ運動量を確保したはずが、先に触れた守備陣のアクシデントが続いたのです。

結果、今シーズン4度目の4失点に終わります。3点取っても勝てませんでした。

横浜F・マリノスとの勝ち点差は8に開くも、リーグ優勝の可能性はまだゼロではありません。しかし、AFCチャンピオンズリーグ本大会へのストレートインのため、2位を死守することが現実的な目標になりました。

残り4試合は満身創痍の状態でも戦い抜かなければなりません。


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