22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年08月

試合全体を通じては劣勢、でした。

チョン・ソンリョン、チャナティップ・ソングラシン、レアンドロ・ダミアンと外国籍選手3人が不在の今節、鹿島には長い時間ゲームの主導権を握られ、サイドからはしきりにクロスが上がり、川崎は自陣で粘り強い対応を強いられました。それでも勝利を収めたのは川崎でした。

キックオフからデザインされたような攻撃を仕掛けてきた鹿島でしたが、川崎はそれを難なく凌いだ後で幸先よく先制します。山根視来、脇坂泰斗、家長昭博のコンビネーションで右サイドを突破。家長がボックスまで進入したところでディエゴ・ピトゥカに倒されてPKを獲得します。

ペナルティスポットでの鈴木優磨のプレッシャーに怯むことなく、家長は左上に決めてみせました。

それから5分と経たないうちにマルシーニョがピトゥカに倒され、今度はフリーキックを得ます。キッカーの脇坂は冷静に低い弾道のボールを蹴ると、そのままファーサイドのポストを叩いてゴールネットまで到達しました。立ち上がり15分で早くも2点リードに成功します。

さらに鹿島陣内でのプレスで追い込んで誘ったバックパスがマルシーニョに渡り、クォン・スンテと1対1になるも防がれ、脇坂のコーナーキックにフリーで合わせたジョアン・シミッチのヘッドも止められます。川崎は決定的な3点目を奪うことなくハーフタイムを迎えました。

後半立ち上がりは逆に鹿島に攻め立てられ、仲間隼斗にジェジエウの前で巧みに頭を合わせられて1点差に詰め寄られます。その後も鹿島ペースで試合は進み、川崎は決定機をつくれなくなりました。

鬼木達監督はまず鈴木にマッチアップを挑まれ、苦しみだした登里享平を車屋紳太郎に、小林悠を負傷から復帰した知念慶に代えます。さらに飲水タイムのタイミングと同時に大島僚太と遠野大弥を投入。苦境を跳ね返すべくフレッシュな選手を送り込みました。

得点が欲しい鹿島はブエノを最前線に立たせ、パワープレーを試みます。対する川崎は山村和也を最終ラインに入れ、知念を中盤の右、家長をトップに置いた5-4-1で逃げ切りを図りました。

勝ち切れるかどうかが今後に大きく影響する局面でしたが、きっちりと守って辛くも勝利しました。これで首位の横浜F・マリノスと同じ24試合消化で勝ち点2差のポジションにつけました。

まだ延期になった試合がミッドウィークに組まれた週が複数あり、油断はできませんが、今月の3連勝の流れで強い気持ちで臨めるはずです。


ベンチメンバーを含めて17人で臨んだ戦いは、マルシーニョの大爆発によって快勝に終わりました。

5-3-2でセットする福岡に対して、川崎は横浜F・マリノス戦で奏功した後方、特に谷口彰悟からのロングボールを主体に攻めました。

それでも先制の形は地上での崩しから生まれます。抜群のコンビネーションを誇る右サイド、山根視来、脇坂泰斗、家長昭博が絡んでの仕掛けでした。とりわけポケットに向かって走る山根に出した脇坂のダイレクトパスが絶妙で、最後はマルシーニョが合わせます。

川崎は得点を機につなぎを意識した、これまでの持ち味を発揮するようになりました。しかし、ジェジエウと山根の間の狭いスペースを走る山岸祐也に柳貴博のパスがピタリと合い、同点に追い付かれてしまいます。

悪い流れに引き込まれかねない失点でしたが、幸いにも飲水タイムのブレイク直前だったことがよかったのかもしれません。

前半終了間際、平塚悠知のパスミスを山根が逃しませんでした。しかもそのボールを一度トラップして止めるのではなく、ダイレクトで前方の家長に出します。一気に局面を変え、家長の右足クロスにレアンドロ・ダミアンが競ったこぼれをマルシーニョが押し込みました。勝ち越しです。

福岡は後半になるとフアンマ・デルガド、ジョン・マリを投入。ルキアンを含めた威圧感の強い3人を前線に並べてきました。それでも次の1点を取ったのは川崎でした。

谷口が大きく右サイドに展開すると、家長が完璧なトラップで足元に収めます。最終的に家長からクロスが放たれ、マルシーニョがゲット。左ウイングのポジションから中央に入る絶妙な動きでハットトリック達成です。

さらに遠野大弥がボックス内でドウグラス・グローリに倒されPKを獲得。ドウグラス・グローリは退場となります。これを家長が確実に沈めて1-4。試合を楽に進められるスコアになりました。

80分以降は家長を中心にプレーの速度を落としてゲームを締めにかかります。福岡もプレッシャーをさほどかけてこないため、比較的順調に時間を進められました。

不要な失点をすることなく5分のアディショナルタイムも乗り切り、勝ち点3を取りました。福岡の地では昨シーズンなどは残念な結果に終わりましたが、今回はそうしたことを払拭するような90分でした。次は今月のもう一つの大一番、鹿島アントラーズとの決戦です。






川崎にとっては劇的な、最高の結果となりました。台所事情の苦しさから少しばかり抜け出せて迎えた首位F・マリノスとの決戦で、最後の最後に勝利を手繰り寄せたのです。

浦和レッズ戦からルヴァンカップのセレッソ大阪戦と徐々に戦力が戻り、この日はGK陣に頼らずともベンチメンバーが揃うようになりました。もちろん病み上がりの選手も少なくないだろうとはいえ、大一番に間に合った格好です。

試合は終始、ジェジエウ、谷口彰悟にアンデルソン・ロペスらのプレッシャーがかかり、余裕を持ってのビルドアップは許されませんでした。

それもあって珍しく後方から前線のサイドへとロングボールを送り込む形を多用しました。マルシーニョや戦線復帰した山根視来、そして家長昭博が前のスペースに出ていきます。

先制点はこの形が実ります。プレスを受けながら繰り出した谷口のロングパスを山根視来がダイレクトで折り返すと、レアンドロ・ダミアンがワンバウンドしたボールに懸命に体を伸ばして合わせました。飲水タイム直前にゲームを動かすことに成功します。

これで安心できる戦いではなく、川崎は守備の意識を普段以上に高め、やや低めにポジションをとります。時には家長も自陣深くに下がってディフェンスで貢献しました。

しかし前半終了間際、先制時と似た展開で山根視来が入れたクロスが、今度は跳ね返されたところからロングカウンターを食らいます。結果、仲川輝人に同点弾を許してしまいました。仲川には左サイドバックの橘田健人がついていましたが追い付けません。

後半も前半同様の戦いを続けた川崎ですが、ロングボールの精度は落ち、これまでのような効果的な攻撃にはつながりません。

逆にF・マリノスの圧力に押され、喜田拓也にはポスト直撃のきわどいシュートを打たれました。

一瞬たりとも油断できない状況で、鬼木達監督が選手交代を進めます。遠野大弥、瀬古樹、小林悠、そして最後は山村和也をレアンドロ・ダミアンに代えて前線に入れました。

主審の負傷交代というアクシデントがあったため、8分のアディショナルタイムがとられます。優勝争いに踏み留まるべく、高さのあるジェジエウやジョアン・シミッチが前線に上がるようになりました。

ところがジェジエウは足をつり、そのまま前線に残る形となり、トップに入った山村が後方に下がらざるを得なくなりました。

勝利は厳しくなったかに思われた90+9分、家長のファーへのクロスにジェジエウが岩田智輝の後ろから豪快に合わせます。ポストを叩いたボールはゴールネットに吸い込まれていきました。

川崎としても実質1人少なくなったかに思われた、予定外の展開だったはずです。それでもチーム全体で勝ち点3にこだわり、何よりホームであきらめない姿勢が、首位撃破という申し分ない結果となりました。



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